○越智委員長 次に、前原誠司君。
○前原委員 国民民主党の前原でございます。
まず麻生大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、今回の新型コロナウイルスに対する対策、第一次補正、第二次補正とも、事業規模でいいますと約百十七兆円ということでございますし、また、その二つに関して申し上げると、追加の財政支出が約六十兆円ということであります。また、第三次補正予算というものも今編成をされて、与党の中で議論されておられると思いますけれども、与党の政調会長からは、勇ましい、何十兆、何十兆という議論がなされているということであります。
確かに今は、金に糸目はつけずに、とにかく目の前のコロナをどう退治するか、そして国民の生活を守るかということの中で、借金をして国債を発行してでもしっかりと対応するということについては私も完全に同意をするわけでございますけれども、幾つかの懸念がございますので、麻生大臣に確認をさせていただきたいと思います。
まず一つの懸念は、このコロナ対策費と巨額な予算に、第一次、第二次、第三次、そしてまた本予算もなるんでしょうけれども、こういったものにコロナ以外のものが紛れ込まないのかということです。つまりは、コロナに乗じて、本来であれば認められないような予算まで盛り込まれるということがあってはいけないのではないかという心配を私はしております。
そこで、一つの例を挙げて申し上げたいと思いますけれども、私は野田政権のときの政調会長をさせていただいておりまして、そのときに、東日本大震災の復興予算の取決め、取りまとめというものをやらせていただきました。初め十九兆円というものでございまして、あのときは、我々、参議院が少数の与党でございましたので、自公と三党で復興予算などの協議を行ったわけでございますけれども、そのときに自民党さんから要望されたのは、特別会計にすべきである、つまりは、復興予算と言いながらほかのものが紛れ込まないようにしっかりと間仕切りをつくって、そしてこの復興と一般の予算というものは峻別すべきだ、こういったお話がございまして、この復興予算というのは特別会計にした、こういう経緯があります。
このコロナ対策についても、しっかりとやるべきだということは大前提だということは改めて申し上げながらも、他の予算とはしっかりと峻別をするということの中で、特別会計あるいは何らかの間仕切りが必要だと私は思いますが、いかがでございますか。
○麻生国務大臣 御存じのように、特別会計につきましては、これは財政法で、特定の歳入をもって特定の歳出に充てるということに決めておりますので、一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合などに限って設定すべきものだとされております。
したがいまして、政府としては、特会の新設というものは、財政全体の効率化とか透明化とかいろいろはかる観点というものがあろうかと思いますけれども、抑制的に対応してきたんだと思いますが、その上で、前原先生御指摘のように、復興関連予算のときは、これは復興特別税という特定の歳入があのときは確保されておりましたし、これを復興の特定の歳出と充てるという枠組みがあるということも踏まえて、復興特会というのを設置されたんだろうと思っております。
したがいまして、今回の新型コロナに対する予算というのは、こうした特定の歳入というのが確保されているものではないので、政府としては特会を今設置するということは考えておりませんが、一般論として申し上げても、やはり、今言われたように、事業というものの予算の、振り向けているというのは、必要性の乏しい事業に予算を振り向けているつもりは全くないんですけれども、いずれにいたしましても、いろいろ、効率化とか、真に必要な予算となるとかいうようなコロナ対策との関連性も含めまして、予算の編成過程においてこれをきちんとやっていくというのが必要だというのは、全く私どももそう思っております。
○前原委員 特定の歳入がなければ特別会計は組めないということは、これは事務方から伺っておりますので、私もわかった上で質問しています。その上で、今の御答弁でありますと、特定の歳入がない、そして、東日本大震災のときは、後でまたお話をしますけれども、特定の歳入があった、だから特別会計にしたんだということを答弁されましたけれども、では、伺いますが、このコロナ対策については、将来的にも、歳入、つまりはこの赤字国債というものに対して、今は仕方がない、当面、火事が起きている、火事の火を消さなきゃいけない、財源の話なんかしている場合ではない、それはそのとおりだと思いますけれども、将来にわたっても、これに対して歳入面での担保をするつもりはないのかどうか、その点お答えください。
○麻生国務大臣 東日本大震災のときの復興事業というものにつきましては、これはいわゆる時限的な処置として特別復興税というものを導入して、いわゆるつなぎとして復興債というものを発行されて、事業を行ってきておられるというように記憶をしております。
これに対しまして、今回の新型コロナ感染症への対応につきましては、一次とか二次とか、いわゆる補正予算で必要な歳入をほぼ全額国債で賄ったということであります。これは、新型コロナの影響が、いわゆる日本全体にはびこったというのは正確ですかね、日本じゅうに関係しましたので、その影響が長期間にわたって、しかも、今、もう既に全ての国民がその対応を余儀なくされているという状況を踏まえて対応を考えないかぬということだと思いますので。
他方、今回のような状況が財政に、ひいては将来世代に負担をかけているということは、これまた事実でありますから、経済再生と財政健全化というものをしっかり両立を進めた上で、新型コロナの危機を乗り越えて次の世代につなげていくということが我々の責任でもあろうと思いますので、今言われたように、この際、きっちりそこらのところは、やみくもに乗じてうまいこと何かその中に紛れ込ませるというようなことがないようにきっちり見ておかねばいかぬという、歳出の面はもちろんのことですけれども、そういった改革の取組というものは、対応というものは、引き続ききちんと対応していかないかぬと思っております。
○前原委員 復興のときの話を少しさせていただきたいんですけれども、十九兆円というのは大変だったんです。どういうことをやったかというと、まず一つは、政府の持っている資産、この売却をやろうということで、東京メトロとかJTの株式の売却とか、エネルギー特会の見直しとか、こういうことで売却を行うということをやりました。そして、公務員の給与も七・八%削減するということをやりました。
また、既存の予算の組み替え、例えば、高速道路の無料化の社会実験、二千九百億円、二年分、五千八百億円を充てるということもやりましたし、今お話がありましたように、復興特別法人税、復興特別所得税、こういったことの中で十九兆円という貸借対照、バランスシートをしっかりとやったということなんですね。
私の質問の意図は二つです。つまりは、まあ言ってみれば、コロナに乗じて紛れ込ませないために何かの間仕切りが必要じゃないか、そういう意味では特別会計ということを持ち出したのが一つ。
もう一つは、もう一度伺いますけれども、例えば、先ほど申し上げた公務員の給与を七・八%下げた、二年間。それから、政府の資産の切り売りもやった。そして、新たな時限的な復興法人税あるいは所得税もやった。こういうことをやらないんですかと。
つまりは、赤字国債を発行して、今の火を消すことは大事だということは繰り返し申し上げますけれども、先ほど申されたように、将来的な財政の健全化ということを考えた場合は、今はいいけれども、将来的に何かこの、赤字補填のための、まあ言ってみれば措置というものを全くやるつもりがないのか、そのことを聞いているんです。
○麻生国務大臣 前原先生御指摘のとおりに、あの東日本大震災のときは、あれはたしか郵政の株だったかな、郵政株を売却されたというようなこともされたというので、税外収入から得られた収入というものを財源に復興事業に充てておられますし、今言われたように、給与の話も出ました。
これはもう一次も二次も必要なものは全額国債で補っているのは事実ですけれども、私どもとしては、この税外収入の確保については、私ども検討しておかねばならぬ大事な点の一つだと思っておりますし、今回も議員歳費を、あれは二十億だったかな、二十億、議員歳費を頂戴したりしておるというようなことも、二次補正で既定経費の中からやらせていただいております。
いずれにしても、私どもとしては、こういったようなことで、子ども手当の見直しとか公務員の人件費の削減とか、あのときやられたものだと思いますけれども、私ども、今回、繰り返しになりますけれども、必要な歳入のほぼ全額を国債で賄っておるんですけれども、やはり、あのときは一定の地域だったんですよ、今回は日本全体にわたっておりますので。しかも、あのときは短期間で一瞬で起きた話がずっと続くんですけれども、今回はずっとまだまだ更に発生していくというような状況でもありますので、私どもとしては、そういう状態が続いていくというのをある程度覚悟した上でやっていかないかぬところだと思っております。
私どもとして、対策の効果等々をよく見ながら、効果的な施策を重点的に行うというのと同時に、構造変化に対応していかないかぬのだと思っておりますので、その施策の見直しというものを徹底していかないと生産性が上がらないし、今までのやつで、もうだめになった企業をたらたら支援しているだけでは生産性とかGDPとかそういった形になっていきませんので、予算の中身を転換していくということも重要なのではないかと思っております。
○前原委員 まあ、全然答えてもらっていないんですね。全て答えてもらっていない。時間の無駄だと思いますけれども。では、ピンポイントで伺いますけれども、コロナ対策の増税は考えないということですか。
○麻生国務大臣 コロナ対策による増税を考えているかというお話ですけれども、この十年余りというものを振り返ると、これは、リーマン・ショックとか東日本大震災の危機的な事態が起きております。そのたびに政府は、国民というもの、生活を守るためにいろいろな形で財政措置を講ずるということと同時に、将来世代へのツケ回しということで、今の世代が負担を分かち合うための取組をあわせて行ってきたと思っております。
私どもとして、今こういった一次補正、二次補正等々によって事業とか雇用とか生活とかいうものを支えていく施策というのを講じてきているところでもありますので、私どもとしては、こういったようなのを、引き続き局面に応じて対応していくということを考えておりまして、直ちにこれをもって増税を考えているというわけではありません。
○前原委員 今、需要が失われて、GDPが大きく落ち込んでいる中で、現時点においては財政支出が必要であって、増税というものを行うべきではない、私も明確にそこは申し上げておきたいと思いますけれども、しかし、将来の中で、お配りをした図一をごらんください。ワニの口ということを言われていましたけれども、上顎がもう完全に外れちゃっているわけですね。そして、世界で最も財政状況が悪くなってきているということはもう自明のことであります。将来的なことも含めて、増税がないと言い切られるのであれば、春に予算委員会で麻生総理は私に対して、野党を見て政治をしているんじゃない、マーケットを見て政治をしているんだとおっしゃ
いましたけれども、マーケットに対して、私は、悪い、つまりは、将来的には、経済がよくなったときにはしっかりと、あれだけの財政措置をとったことについては、しっかりと担保をするということが必要じゃないかということを私は質問をさせていただきましたし、また同時に、財政の言ってみれば中身というものをしっかりと担保するために、何らかの間仕切りが必要じゃないかということの中で特別会計をということを申し上げましたけれども、残念ながら、明確な回答が得られないということであります。
これについては議事録にとどめて、さらなる質疑のときに追及の材料とさせていただきたいと思います。
きょうは黒田総裁もお越しになっておられますので、黒田総裁にもお伺いをしたいというふうに思いますけれども、まず、お配りをしている図をちょっとぺらぺら、スライドを見ていただきたいなと思うわけであります。
同僚議員が質問されたことについては繰り返しはいたしませんけれども、二ページ、確かに金利は下がったけれども、二%の物価目標は全く達成できていないということであります。先ほどの答弁も、ずっと七年余り聞いてきた答弁を同じようにやられていて、多分、御本人もおつらいだろうなと思って私は聞いておりました。
それから、三ページ目、これは民主党政権の三年三カ月と安倍政権の七年。これはコロナを外しています。コロナを入れると少し図表が、比較ができなくなりますので、コロナを外しているわけでありますけれども、実質GDP成長率は、民主党政権のときは一・六、安倍政権のときは〇・九でありまして、むしろ成長率は下がっているということであります。そして、下を見ていただきますと、いわゆる世界の中での成長率の順位というものを見ていただくと、この安倍政権で下がっているということであります。
それは、国内で見ると、株価が上がりました、雇用はよくなりました、経済は成長しました、それはうそではありません。うそではないけれども、日本というコップの中の話であって、世界の中で見ると、日本はどんどんどんどん、じりじりと落ちている。
そして、最大の原因というのが、この三ページの実質GDPの下にある最終消費。ほぼ成長していません。つまりは、消費が全く伸びていないというのが第二次安倍政権の特徴であります。四ページをごらんいただくと、企業の利益は六四%ふえて、そして人件費は五%しかふえていない、名目の人件費は五%しかふえていない、そし
て物価上昇率を割り引いた実質賃金というのはむしろ下がっているということでございます。したがって、内部留保はふえて、利益はふえたけれども、人件費には回らず、むしろ実質賃金は下がり続けている。これでは消費が伸びていかないということは明らかなことではないかと私は思っております。
そこで、総裁にお伺いしたいんですが、私は金融緩和だけで全てが解決するとは全く思っておりません。しかし、黒田総裁とて、金融緩和をして、さまざまな後押しをしました、そして経済がよくなるための一種のカンフル剤ですね、金融緩和というのは、カンフル剤を打ちました。にもかかわらず、実際物価が上がらない大きな原因というのは、むしろこれは賃金が上がっていないことも大きな原因ではないでしょうか。
つまりは、自分たちは頑張って金融緩和をしたのに、そして、株価が上がり、利益がふえたのに、そして、それが賃金に回らず、物価上昇につながっていない、こういうメカニズムがあると思われませんか。
○黒田参考人 全体像としてそういった要素があったということは認めざるを得ないと思います。
ただ、賃金動向を見ますと、ことしの春までは少なくともパート雇用者の時給は高目の伸びが続いていましたし、それから正規雇用者についても少なくとも七年連続でベースアップが行われたということで、賃金の上昇圧力は高まっていたと思うんですけれども、やはり経済の改善、特に企業収益の向上に比して、賃金の上がり方が少なかったということはそのとおりです。
他方で、先ほど来申し上げたように、雇用については、女性あるいは高齢者を含めて、就業率がかなりふえたということもありますので。
ただ、その中で、よく言われることですけれども、家計の雇用者所得がふえても、パートナーがパートで働くということになると、パートの賃金は正規雇用者に対して相当低いですので、それを平均すると、賃金の伸びが物すごい低くなっちゃうということもありますので、消費との関連で見る限りは、雇用者所得で、あるいは家計の所得の伸びで見た方がいいとは思います。
ただ、大きく言って、経済が回復し、雇用も回復し、特に企業収益が大幅に伸びた、その割には賃金が上がらなかった、そして、消費の伸びが鈍かったという、全体のその構図というのは委員御指摘のとおりであります。
○前原委員 今、黒田総裁がお答えになったとおりの面があると思いますけれども、五ページを見ていただきますと、これは世界の比較なんですね。これを見ると、圧倒的に日本は賃金が上がらない国であるということが一目瞭然です。これはもう三十年間上がらない。左は、これはいわゆる一九九一年を一〇〇としたものでありますが、日本だけ横ばいであります。右側が絶対値を購買力平価ドル換算にしたものでありまして、ほかの先進国にほぼ抜かれてしまっている。絶対値でも日本の賃金はこれだけ低い状況になっているということであります。
最後、六ページをごらんいただきたいわけでありますけれども、その最大の要因というのは、やはり潜在成長率の低さ、低下だと思うんですね。
これを見ていただくと、赤が潜在成長率で、潜在成長率というのは三つから成っている。資本とそれから労働とそして全要素生産性、イノベーションですよね、この三つから成っているということの中で、何が寄与しているかということがこの六ページに書かれているわけでありますが、注目していただきたいのはこの青です。つまり、全要素生産性、イノベーションがどんどんどんどん落ちてきている。そのことによって潜在成長率が落ちて、結果的に、資産価値でもうけるけれども、結局、企業のもうける力というものが落ち、だんだんだんだんと低下してきている。賃金が上がらない一つの要因になっている。
賃金はかなり複雑な要因があると思いますので、労働力の流動性とかさまざまな問題があると思いますけれども、あるいは解雇できないとか、日本のそういう仕組みとかあると思いますけれども、しかし、潜在成長率が落ちている大きな要因は、イノベーションが起きなくなってきているということであります。最後に、残りの時間、黒田総裁に伺います。低金利政策のおかげで、本来ならば市場から退出をしなければいけない企業が残ってしまっている。つまりは、金利が高ければ高いほどそれだけ資金調達をしなきゃいけないし、利益も出さなきゃいけない。でも、低金利政策によって金利がほぼゼロでお金が調達できる。これが、本来であれば、新陳代謝を生み、市場から退出をしなければいけない、そういった企業を、言ってみればゾンビのように生き残らせ、それが潜在成長率を落ちさせている一つの要因になっているという認識はありませんか。
○黒田参考人 この点はなかなか難しい問題でして、御案内のとおり、BISのエコノミストは昔からこの点を主張しておりまして、金融緩和が続くと、どうしても、本来退出すべき企業がずっと生き残って、結果的に生産性が落ちていく、ですから、それを考えて金融緩和というものの期間とかやり方を考えなくちゃいけないということは言われている。
それはそのとおりなんですけれども、他方で、IMFを含めて、その他の国際機関は、そういう面はあるかもしれないけれども、しかし、景気後退のときに財政金融政策をとるというときに、やはり金融政策が非常に重要な役割を果たすということは事実でありますので、その点は頭に入れておく必要はあるとは思うんですけれども、それを理由にしてプリマチュアに金融緩和をやめてしまうということになると、経済が回復しなくて元も子もなくなってしまうということも事実でありまして、非常に難しい問題であることはそのとおりなんですけれども。
特に、コロナの関係でも、今も政府、中央銀行全体として莫大な資金繰り支援をやっているわけですけれども、コロナ後を見据えたときに、アクロス・ザ・ボードというか、全部についてそういうことをやっているということが、コロナ後には退出すべき企業というものがそのまま残ってしまうんじゃないか、それをどこかで選別しないといけないんじゃないかというような議論は、実はBISなどでも最近非常に行われている議論でありまして、その点は十分念頭に置いて、頭には入れておきますが、ただ、そのことと、金融緩和を、経済が完全に持続的な軌道に乗り、物価安定目標が実現されようというときでないときにプリマチュアにやめるということは、やはり適切でないというふうに考えております。
○前原委員 これで終わりますけれども、コロナで全て逃げてはいけないと思うんです。私が申し上げたのはコロナ前までで、先ほど景気後退とおっしゃったけれども、景気後退じゃなくて、景気は上がっているときですよね、この七年間というのは。それでもずっと低金利政策、異次元の金融緩和を続けて、結局、退出する企業もさせなかった。
今はそれはしっかりと資金繰りも支えなきゃいけないときだと思いますよ、コロナですから。だけれども、それを、やはり前のときもちゃんと検証して、副作用が極めて大きかったんだということを認めない限り、この七年八カ月の統計というのは極めて厳しいものになっているということはもう御理解されていると思いますので、ぜひ、そこを念頭に、私は、政策転換をやるべきときに来ているというふうに申し上げて、質問を終わります。