前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第201回国会 衆議院予算委員会2020/02/04

○棚橋委員長 この際、前原誠司君から関連質疑の申出があります。岡本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。

 

○前原委員 前原でございます。会派の最後でございますので、よろしくお願いいたします。

まず、総理大臣、前回も質問させていただいたのは施政方針演説を引用してでございましたけれども、今回も、まずは施政方針演説を引用させていただいて、質疑をしていきたいというふうに思います。

総理の施政方針演説の中に、このようなくだりがございました。東京から鉄道で七時間。島根県江津市は、東京から一番遠い町と呼ばれています。二十年以上、転出超過が続き、人口の一割に当たる二千八百人が減少した町です。しかし、若者の起業を積極的に促した結果、ついに、一昨年、転入が転出を上回り、人口の社会増が実現しました。

原田真宜さんは、パクチー栽培を行うため、東京から移住してきました。農地を借りる交渉を行ったのは、市役所です。地方創生交付金を活用し、起業資金の支援を受けました。農業のやり方は地元の農家、販路開拓は地元の企業が手助けをしてくれたそうです。

地域みんなで、手伝ってくれました。地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、原田さんの移住の決め手になりました。こうおっしゃっていますね。一つ、事実関係だけまずお伺いしますが、この総理が取り上げられた原田さんという方は、もう既に江津を離れておられるという認識でよろしいですか。

 

○安倍内閣総理大臣 御指摘の方は、江津市の支援を受けて、二〇一六年七月に移住し、起業するとともに、三年以上にわたって居住していることから、江津市の起業支援の成功例として演説で紹介したところでございます。新しい場所に移り住むことは、それだけでも大

きな決断であると思いますが、さらに、三年以上にわたって居住したということは、当然、中途半端な気持ちではできない、このように思いますし、そのきっかけをつくったのは江津市の町ぐるみの支援、起業支援の取組であり、地方創生を進める他の自治体にとっても十分に参考になる、こう考えていたところでございますが、演説内容については御本人に確認した上で記載をしておりますが、演説に記載した内容以外の事柄については、御指摘の事実関係も含めて、個人的な御事情などプライバシーにかかわるものであり、お答えを差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、決意しての移住であっても、長い人生の中で、家族のことなど、さまざまな事情が起こり得るということだと思います。そうだとしても、大きな志を持って移住した過去が否定されるべきではない、このように考えております。

 

○前原委員 もう既に江津を離れておられる方、なぜこのような例を、今いろいろと言いわけがましくおっしゃいましたけれども、なぜこれを一つの例に取り上げたかというのは疑問に思います。これは指摘をするだけにしておきたいと思います。一月三十一日に総務省が二〇一九年の人口移動報告を発表しました。一昨年は転入が転出を上回ったと総理が施政方針演説に引用した江津市、昨年は転入超過だったのか、転出超過だったのか、どちらだと思われますか。これは質問通告をしていませんので。どうぞ。

 

○北村国務大臣 お答えします。地方から東京圏への……(前原委員「簡単に。答弁だけしてください」と呼ぶ)短く。(前原委員「転入超過だったか、転出超過だったか、どちらかを答えてください」と呼ぶ)

 

○棚橋委員長 恐縮です。私の方で議事進行します。簡単に。どうぞ。

 

○北村国務大臣 はい。転入超過は、引き続き、残念ながら存在しております。

 

○前原委員 北村大臣、残念ながらって、残念じゃないでしょう。いや、いいです、いいですよ。もうどうぞお座りください。いや、残念じゃない。いわゆる施政方針演説で転入超過だという例で江津市を挙げられて、去年も転入超過だったんです。よかったですねということを僕は言いたかったんです。それを残念ですねと言うのはちょっと、どちらの方向に向いておられるのかよくわかりませんが。総理、転入超過が続いているということなんですが、では、もう一つ伺います。では、江津市を含む島根県は、転出超過か、転入超過か、どちらですか。

 

○北村国務大臣 大変失礼いたしました。取り違えまして。江津の話であれば、入ってくることを喜ぶべきであるというふうに思いますし、東京が転入超過であったということを申し上げたわけであります。

 

○棚橋委員長 いや、大臣、大臣、北村大臣、再度御答弁ください。(前原委員「とめて。とめてください」と呼ぶ)速記をとめてください。

〔速記中止〕

○棚橋委員長 速記を起こしてください。

 

○北村国務大臣 重ね重ね申しわけありません。島根県は転出超過であります。失礼しました。

 

○前原委員 北村大臣、そこで残念ながらとおっしゃらなきゃいけないんです。島根県は、残念ながら転出超過なんですね。そして、この一月三十一日に発表されたものでいいますと、転出超過、千九百七十一名の転出超過で、一昨年が千三百五名ですから、悪化しているんです、島根県は。江津は二年連続よかったけれども、島根県全体としては悪化しているんですね。そして、四十七都道府県の中で、転入超過は八都府県だけです。三十九道府県は、転出超過なんですね。

三大都市圏、総理に御答弁いただきたいので、総理、聞いておいてください。三大都市圏を見ますと、東京圏、これは埼玉、千葉、東京、神奈川でありますが、十四万八千七百八十三人の転入増であるのに対して、大阪圏というのは京都、大阪、兵庫、奈良、これは四千九十七名、名古屋圏、岐阜、愛知、三重は一万五千十七人の転出増なんですね。つまりは、三大都市圏であっても、東京圏しか転入増でなくて、大阪圏も名古屋圏もいわゆる転出増になっている。

そして、この東京圏への転入超過は一九九六年から二十四年間連続であり、そして、転入増数の増加というのは三年連続で起きている、こういうことであります。むしろ、東京一極集中というのは加速しているんですね。

安倍さんは、第二次安倍政権、これ、八年目ですよね。七年やっておられて、歴史の中で一番総理大臣を長くやられているということであります。

そして、二〇一四年に、総理は、まち・ひと・しごと創生総合戦略というのをつくられて、どういう目標を立てられたかというと、二〇二〇年の時点で、地方から東京圏に転入した人と転出した人を均衡させると言っているんですね、目標を。この実現は難しいという認識でよろしいですか。

 

○安倍内閣総理大臣 残念ながら、先ほど北村大臣から答弁した状況でございますし、また、今、前原委員が確かに御指摘になったとおりでございます。

少し説明させていただきますと、基本的に、景気がよくなる局面においては東京圏への人口の流入が進むわけでございまして、他方、非常に景気の悪いときには、それはぐっと落ちてくるのは事実でございます。

その中において、今回、景気回復期がずっと続いております。景気回復期が続いている中においては、一時的に、確かにそれは……(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。

 

○安倍内閣総理大臣 転入増ではございますが、転入増が、ある程度横ばいに一時なっていたのは事実でございますし、第一次安倍政権のときは、残念ながら、二〇〇七年でございますが、このとき、ずっとふえておりまして、このときは十五万五千人であったわけでありますが、そのときがピークでありました。それは、非常に景気もよかったということもあるんですが、そのときよりは抑えられてはおります。しかし、残念ながら、この一四年、一五年、一六年という形で、一七年までは大体横ばいで推移して、景気回復局面の中においては横ばいで推移、大体十一万人台だったわけでございますが、一八年、一九年とふえてきたということについて、我々、基本的に若い方々が仕事を求めてくるということと、やはり、大学に入った後そのまま東京に残るということがあります。

しかし、一つだけ言わせていただくと、ちょっと最後、ちょっとだけですね、一つだけ言わさせていただきますと、これはやはり、地方において、四十七全ての都道府県で有効求人倍率が一倍になったということもあり、ある程度、一時は横ばいであり、ピーク期よりは少ない、こういうことでございまして、今後とも、第二期のまち・ひと・しごと総合戦略ではさらなる取組が必要である、このように考えております。

 

○前原委員 総理、ちょっと見苦しいですよ。言いわけをずっと言っているんですよ……(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。

 

○前原委員 要は、総理たる者は、目標を定めたらそれに邁進するのが総理の責任ですよ。そして、景気がよくなったら東京に集中するんです。それを是正するのがあなたの仕事じゃないんですか。それができていないで、東京で、景気がよくなったから東京転入がふえたんで仕方ないですと、言いわけでしかないです、そんなのは。本当に、私は、聞いていて、しかも、総理、言いわけするとき、早口になるんですよ。ゆっくりしゃべってください。その前から、ぺらぺらぺらぺら、聞いていないことをしゃべっているんです。

私が聞いているのは、二〇二〇年の目標は達成できるのかどうか聞いているんです。できるかできないか、それだけ答弁してください。短く、ゆっくり。

 

○安倍内閣総理大臣 いや、こういうふうに委員がやられたので、つい、私は、人がいいものですから、早口になったのでございますが、ゆっくりしゃべれということでございますので、ゆっくりしゃべらさせていただきますと、十代後半や二十代の若者が東京圏への転入超過の大半を占めていることを考えれば、就学、就職が東京圏への移動の大きなきっかけとなっているのは事実であります。

地方に、若者に魅力あふれる働く場、学びの場をつくることが重要でありまして、きらりと光る地方大学づくりを進めるとともに……(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。

 

○安倍内閣総理大臣 東京から地方へ移住し起業、就業する場合に、最大三百万円支給する制度を更に使いやすくする。あるいは更に、都市に住む皆さんの地方での兼業、副業を促すために、人材のマッチングや移動費の支援を行う新たな制度を創設する。関係人口を拡大し、将来的な移住につなげることで、地方にこそ大きなチャンスがあると考える若者たちの背中を力強く後押しをし、東京一極集中の是正に全力を尽くしていきたい。確かに、なかなか難しい目標ではありますが、しかし、さまざまな政策を総動員をしていきたい。先ほど、言いわけがましいという御指摘があったんですが、事実として、景気がいいときには東京に集中する。しかし、今までの、かつての、過去のトレンドから比べれば、私が挙げた年度にお

いては、ずっと景気回復局面の中においてしばらくは横並びであったということと、ピーク時よりはまだ少ないということは申し上げておきたいと思います。

 

○前原委員  た言いわけしていますね。私の質問にだけ答えてください。二〇二〇年に達成できますかと聞いています。それだけ答えてください。

 

○安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、二〇二〇年度に、いわば東京に入ってくる方々と東京から地方に出ていく方々を逆転させるというのは、これは難しいというのが率直なところでございますが、であるからこそ、それは政策を、今までの政策がだめだったかということではなくて、これを更にパワーアップして力を入れていきたい。これはもう御承知のように……(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 御静粛にお願いいたします。

 

○安倍内閣総理大臣 御承知のように、これはそう簡単なことではないわけでございまして、東京にさまざまな大学が集中している中において、やはり地方にしっかりと、きらりと光る地方大学をつくっていくこと等の、今まで、先ほど申し上げましたような努力を積み重ねることによって、この流れを何とか逆転していきたい、こう考えているところでございます。

 

○前原委員 自分が立てた目標でしょう。それはそんなに簡単にできないですねだったら、総理をやめなさいよ。総理をやめて、できないことは言うな、それだけですよ。できない目標を掲げておいて、できなくなったら言いわけをして、これをやるのは難しいんですよと。それだったら、誰だって総理をできますよ。総理って、そういう仕事ですか、そんなに軽い仕事ですか。あきれた答弁ですよ。

目標を定めたらそれに邁進して、どんなことがあろうとそれを実現するというのが総理大臣の仕事でしょう。それを、難しいからできませんでした、でもこれから頑張ります。いつまで総理をやるつもりですか。もういいですよ。それを申し上げておきたいと思います。

私、この後、何もやっていないということを言うつもりはなかったんですよ。例えば、出先機関の移転、京都は文化庁が来ます。だから、これは中央省庁をどこかに移転するということもやられているわけですよ。あるいは、例えば、企業の本社機能の移転のためにいろいろな仕組みをつくられていますよね。だから、私は、何もやっていないということじゃなくて、言っているわけじゃない。

私、総理の話を聞いていますと、ちょっと髪の毛が薄くなってきて、そして育毛剤を試してみた、そうしたら、なかなか薄毛がとまらない、そして、その育毛剤の会社に文句を言ったら、いやいや、育毛剤をしなかったら、あなたはもっとはげていますよと言われているようなものなんですよ。それで、そうですかと言う消費者は私はいないと思うんですね。総理たるものは、ちゃんとその製品に、自分の言葉に責任を持って、そして、それをやるということが私は総理の責任だというふうに思いますよ。

さて、ちょっと提案をしたいと思いますが、批判だけをするのではなくて、私から提案をさせてもらいたいと思います。(発言する者あり)

 

○棚橋委員長 まずは御静粛にお願いいたします。

 

○前原委員 まず、表一をごらんいただきたいというように思いますが、これは何が必要なのかということなんですけれども、この表一を見ていただきますと、普通交付税の算定方式というのが出ています。

基準財政需要額というものが決まるわけですね。基準財政需要額というのは、ちょっと専門的になりますけれども、警察とか厚生労働とか経済産業とか、あるいは公共事業とか、さまざまな単位費用というのを決めて、そして、測定単位というもの、これは人口が主なんですけれども、それに補正係数を掛けて基準財政需要額というのを決める。

例えば、ある地域における基準財政需要額が百億円とした場合、それで、計算をすると、大体、標準的な地方税収の見込み額が八十億円になる。

しかし、四分の一については留保財源として、残りの六十億というのが基準財政収入額として計上されて、そして、この基準財政需要額からこの基準財政収入額というものを引いたもの、つまりは足らざるものを交付税として渡すわけですよね。

私、この仕組みそのものをやはり見直す必要があると思うんですね。総理、例えば、地方が努力をして、企業を、本社を誘致した、そして税収がふえたということになった場合に、その税収というものについて、四分の一は留保財源になりますよ、だけれども、四分の三は、結局、普通交付税から外されるんです

よ、つまり、努力をしても、結局、その分は持っていかれる、交付税が減らされる。こういう仕組みになって、なかなか地方が努力できない仕組みになっていますが、これそのものを見直すというお考えはありませんか。

総理。総理がお答えください。仕組みを変える議論ですから。

 

○高市国務大臣 交付税の算定上、この地方税収につきましては、各地方団体における標準的な税収の一定割合を基準財政収入額に算入して交付税額を算出しております。この基準財政収入額に算定されない残りの二五%の部分の割合は、一般的に留保財源率とされています。これは、さまざまな規模、自然、経済条件などを有する個別の地方団体の標準的な行政経費を全額算定することは技術的に困難であるということから、地方税収入の一定割合を交付税算定の計算外に置くことが妥当であるということ、それから、仮に地方税収を一〇〇%算入するということになりますと、個々の地方団体の努力によって地域経済を活性化し税収を増加させても、その増収分がそのまま、交付税が減額されることになり、地方団体が税収を増加させようと努力するインセンティブが働かなくなること、こういったことも勘案してのことでございます。

 

○前原委員 それは、私が言ったことを今総務大臣がおっしゃったんです。それはわかっているんです。それを、私は、地方が努力をしたら税収がもっとふえるような仕組みにしないといけないんじゃないですかということを総理に尋ねています。総理、総理。そこは、総理、答えてください。どうぞどうぞ。

 

○安倍内閣総理大臣 これまでも、地方の努力がいわば報われる姿にするという努力を続けてきたところでございますが、その中において、そうしたことも勘案しながら、ただいま総務大臣が答弁しているわけでございますが、今の姿になっているということでございますが、今後も、前原委員が言われたように、いかに地方の努力を生かしていくかということについては常に考えていかなければいけない、このように考えております。

 

○前原委員 地方創生ということは、私、いろいろなメニューを教えてもらって、レクを受けて、結局、上意下達なんですね。国が地方に、こういうメニューがありますよ、いかがですかという話になっているわけです。だけれども、私は、これは、むしろ、権限、財源を移譲して、そして、地方が努力をすれば、その分地方が自由なことをやれるという仕組みをつ

くることの方が、先ほどおっしゃった、いろいろな努力をしているんですよ、頑張りますよということよりは、私、手っ取り早いような気がしますよ。

ですから、財源、権限をもう少し地方に移譲して、そして、地方がまさに地方の努力の中で、この東京一極集中を是正するための創意工夫ができるような仕組みにした方がいいんじゃないですか。総理、総理。

 

○棚橋委員長 総務大臣高市早苗君。

 

○前原委員 これは総理との議論ですから。

 

○棚橋委員長 まずは大臣に。その後、総理に答えていただきます。

 

○高市国務大臣 済みません。今御指名いただきましたので。令和二年度におきましては、委員がおっしゃるような問題意識、特に人口が少ないところというのはどうしても地方交付税の額が少なくなる、特に、高齢者の人口が減りますと高齢者福祉に係る費用が少なく見積もられますし、子供の数が少なくなっていくと教育費の算定が少なくなっていってしまいますので、そういった問題もありますことから、平成二年度では、地域社会再生事業費、四千二百億円程度を創設しまして、これは地方交付税法の、交付税の算定上、人口が減少し地域社会の持続可能性への懸念が生じている地方に重点配分させていただくこととしております。

 

○安倍内閣総理大臣 前原委員が言われたことは

大変大切だと思っております。ですから、安倍政権において地方創生をスタートさせたときに、これはまさに、例えば、地方ならではの特色である農林水産品や観光資源、地場企業の技術力などを生かした地方独自の創意工夫を、一千億円の規模の地方創生交付金などを活用して今全力で後押しをしているところでございまして、先ほどの江津市の例も地方創生交付金等も活用しているわけでございまして、これはまさに地方独自の創意工夫で行っている。その際、それも大変大切でありますし、地方が活力を取り戻すということではございますが、根本原因、先ほど申し上げた、いわば、まだ転入になっているのではないか、もうやめろよという厳しいお叱りをいただきました。もちろん、そういう達成できていないということについては、これは深刻に受けとめなければいけないと思いますが、しかし、今養毛剤のお話をされましたが、この景気回復局面の中において、しばらくの間は横ばいであったというのも事実でありました。それは、まさに地方に仕事があるという状況をつくったことも大きかったのではないか。

ただ同時に、大体多くの理由は、地方に残っていても仕事がないということが大きかったのでございますが、今、正社員の有効求人倍率は地方でも一倍を超えているところもかなり多くありますので、そうした今の状況を生かしながら、かつ、大学に来てそのまま残るということも多いわけでございますから、若年の人たちが地方に残るような努力を更に進めていきたい、このように思っております。

 

○前原委員 総理、エピソードとエビデンスという違いがあるんですね。総理が言っているのはエピソードなんですよ。つまり、うまくいった事例を一つ二つ挙げたって、結局、東京一極集中というのはとまっていないわけですし、そして、景気がよくなれば東京に集まる傾向にあるんですよということは、繰り返しになりますが、それを是正することこそが地方創生であり、その土台をつくっていなかったからそういう状況が生まれてきているということで、全ての責任は、やはり、総理が目標を定めて達成できなかったら、実現しなきゃいけないんですよ。

ですから、エビデンスということをしっかりとベースにやらないと、エピソードだけ、これもうまくいきました、あれもうまくいきましたというのでは、私は、いつまでたったって目標は達成できないと思いますよ。それだけ指摘をしておきたいと思います。

さて、次のテーマに移りたいと思いますが、令和二年度から、高等教育の修学支援として、授業料減免、それから給付型奨学金の拡充、そして無利子奨学金の貸与基準の緩和などの予算が計上されることになりました。

個人的な話で恐縮なんですが、私も中二のときに父を亡くしまして、母が育ててくれました。授業料免除、そして奨学金にお世話になって、もちろん母が頑張ってくれたからでありますけれども、しかし、こういうやはり社会が支える仕組みというのがなかったら、私は大学に行けなかったかもしれないし、今の自分もなかったのではないかと、こういう仕組みについて私は非常に感謝をしているわけであります。したがって、こういう仕組みを拡充していかれる、導入して拡充していかれることについては、私は大賛成なんですね。この間議論させていただいたように、私は、もう一歩踏み込んで、教育の無償化というものをしっかりやるべきだというふうに思いますが、一定評価した上で、二つの提案をさせていただきたいと思います。時間も限られていますので、総理、できればというか、御自身がお答えください、そんなに難しい話はしませんので。

一つは、提案は、授業料の減免と給付型奨学金を過去にさかのぼってもらいたいということなんです。

つまり、どういうことかというと、これからもらえる学生ではなくて、今学生であってもう奨学金を過去にもらった、あるいはもう社会人になって巨額の奨学金を返済するのに四苦八苦している若者というのはいっぱいいるんですね。こういう人たちに対して、しっかり遡及できるようなことを今後考えてもらえないかという提案です。

この昭和十八年に始まった制度というのは、今までに約千二百八十八万人が利用して、貸与金額の累計は約十九兆円です。平成二十九年度には、約百二十九万人の学生に一兆百五十六億円の奨学金を貸与したんですね。この額は、我が国全体の奨学金事業の約八八%なんです。

そして、我が国の高等教育機関の学生約三百四十八万人の三七%、つまりは、二・七人に一人が、昔の日本育英会、今の日本学生支援機構、こういったものを利用しているわけですね。

平成二十九年度末で、総貸与残高というのは九兆三千七百四十三億円、うち返還を要する債権額というのは七兆四百九十八億円あるんですね。これを、若い二十代、三十代の人たちが今から一生懸命、七兆四百九十八億円、そして、返済義務が生じてきたら、先ほどの差額というものも払っていかなくてはいけない。私、この仕組みについて申し上げると、ですから、一定の評価はしているんですよ、こういうものを導入するというのは。しかし、今の二十代、三十代で、いわゆる授業料免除とか、給付型奨学金をもらえなくて返さなきゃいけない人たちと、これからもらえる子たちをやはり平等に扱うということは大事だと思いますが、過去に遡及させるということをやられませんか。総理、総理。

 

○棚橋委員長 文部科学大臣萩生田光一君、簡潔にお願いします。

 

○萩生田国務大臣 先生の問題意識は、私、理解できます。しかしながら、日本の奨学金というのは、貸与した学生が返還して、またそれを次の世代に貸すことによって、この制度がつながってきていることがあります。

御指摘があったように、返済が困難な人にまで直ちに返せ、すぐ返せというような制度ではなくなっていることは御理解いただけると思います。最低は月二千円の返済から可能になってきましたし、金利についても元金だけ、こういう仕組みにもなってまいりましたので、その辺はぜひ御理解いただきたいと思います。

 

○安倍内閣総理大臣 基本的な考え方については、今、萩生田大臣から答弁したとおりでございますが、いわば所得の低い状況でも、毎月最低二千円からの無理のない返還が可能でございます。また、返還期限猶予制度あるいは減額返還制度等が、この返還期限猶予制度については、平成二十六年度より、猶予の適用期間を五年から十年に延長しております。また、減額返還制度については、二十九年度より、従来からの返還月額二分の一への減額に加えて、三分の一への減額も選択可能としたところでございます。

こうした形で、既に借りておられる、新しい制度が始まったので、確かにそれは、かつて借りられた方々は、もっと早くできていればよかった、それは当然、そういう気持ちになられると思いますが、こういう制度を活用して支援していきたい、このように思います。

 

○前原委員 いや、私自身が返済猶予を受けた人間ですので、いろんな仕組みがあるというのはわかっていますよ。

私が申し上げているのは、これから制度が始まりますということと、今までの制度の中で、要は返さなきゃいけない人との不公平が出てくるのではないかということを申し上げているわけです。

したがって、それはいろんな基準があっていいと思いますよ。これからの給付型奨学金にしても、所得制限とかありますよね。さまざまなことの中でもちろん違いはあるわけですが、少なくとも、今まで、計算すると、大体平均三百十万円ぐらい借りているんですよ。二十二歳、浪人せずに、留年せずに、四年で出た人たちが平均して三百十万円も借金を持って社会に出るという話なんですよ。

ですから、これは大変なことで、これがまた、例えば婚期が、結婚年齢が遅くなるとか、あるいは少子化の問題とか、さまざまな日本の根本問題につながっていっているんですよ。

私は、したがって、この制度をまず導入されるということは一定評価した上で、今までの子供たちに対する遡及も何らかの仕組みを考えるべきだということを申し上げているわけです。

いかがですか、もう一度。これは、やはり政治的な決断がないと進まない話なんですよ。

 

○安倍内閣総理大臣 今までも、無利子型の奨学金、そして給付型の奨学金等、これを安倍政権において拡大をしてまいりました。しかし、新しい制度をスタートすることによって、それまでの制度の中で奨学金また利子を払いながら対応してきた方々に対しましては、先ほど申し上げましたようなそれぞれの仕組みの中で、前原委員が活用しておられたときよりも、それを更に拡充した形で対応しているところでございます。

これは予算を確保しなければならないということがございますが、今後とも、いわばそうした学業のためにローンを組まれたり、つまり奨学金を返還をしている方々にどのような対応が可能かということについてはよく考えていきたい、このように考えます。

 

○前原委員 私が申し上げていることについては総理も御理解いただけていると思うんですね。したがって、特にこの制度がスタートしたということになると、その後、私は遡及させるべきだということを、これから政治家の責任として言い続けますよ。

そうなると、特に、やはりこれから、自分たちのときにはそういった仕組みが受けられなかった方々との公平感というのは私は顕在化してくると思うんですよ。やはりしっかりとそういったところについては御検討いただきたいというふうに思います。

財源の話をされましたね。私は、財源について全く何も言わずに申し上げるつもりというのはないんです。

ちょっと表の三を出していただきたいんですが、これはよくある議論なんですね。所得税というのは累進課税でありますけれども、いわゆる金融所得等は分離課税になっているわけですね。

この表三をごらんいただきますと、ちょうどこの折れ線グラフの山になっている、頂点のあたりのいわゆる収入というか所得が幾らかというと、一億円なんです。一億円を超えてくるとどんどんどんどん、言ってみれば金融所得が多い方々との合算になりますので、むしろ累進課税じゃなくて減っていくんですね、どんどんどんどん減っていくということになるわけであります。やはりここを見直していくべきではないか。確かに、金融所得課税というのは、一〇%から二〇%に上がりました。国税が一五、そして地方税が五だったと思いますけれども、足して二〇%、上がりました。

そのときにも、これをやると株価が下がるんじゃないかとか景気が悪くなるんじゃないかと言われましたけれども、それほど大きな変化はなかった。これは麻生財務大臣も今まで、財務金融委員会、私も所属をしておりましたので、何度か御答弁をいただいたところでありますけれども、やはりこの総合課税化、少なくとも金融所得課税の税率を見直すということの中で、今申し上げたようなことも含めて財源にしていくということは、私は、日本のこれからの子供たちの未来、日本の宝を考える場合には大事だと思うんですが、これは、総理、いかがお考えですか。

 

○麻生国務大臣 これは前原先生、御質問をもう何回となく、財務金融委員会等々で答弁をさせていただいておりますし、今の新しい提案としては、これを教育にというところが新しい提案なんだと思いますけれども、平成二十六年からですから約四年間、この一〇から二〇と上げさせていただいたのは確かなんですけれども、これを更に見直すべきではないかということに関しては、これは与党の税調でもちょっと考えないかぬという話になりつつあるというところまでが今のところ御報告申し上げるところでありまして、経済への影響等々は、やはり貯蓄から投資へ回すべきじゃないかという意見も、事実、貯蓄は物すごい額たまっておるわけですから、そういった意味ではいろいろな話がありますので、これは引き続き丁寧な検討をさせていただいた上で、その金を学費に、学費というか奨学金等々にという話は、これはまた別の範囲の話なんですけれども、そういった意味では、これがいろいろな意味で長期的な検討課題であるということははっきりしておると思います。

 

○安倍内閣総理大臣 ただいま財務大臣から答弁したとおりでございまして、そういう観点から検討しているということでございます。

 

○前原委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。残りの時間で、黒田日銀総裁にお越しをいただいておりますので、黒田総裁に伺いたいと思います。新型コロナウイルスで、インバウンドのお客様が減っている、中国人が三月までに四十万人のキャンセルになるのではないかと言われておりますし、また、中国国内での工場の操業停止が長引くのではないかということの中で、かなり世界経済への影響というものが懸念されるわけであります。つまりは、日本の経済の下振れリスクというものが予想されるわけであります。

先行きはまだまだ不透明でありますが、現状をどう認識され、日銀総裁として今後どのような対応をされるお心づもりかを問いたいと思います。

 

○黒田参考人 御指摘の新型コロナウイルスによる感染症の拡大が内外経済に与える影響については、現時点で評価することは確かに難しいわけですが、既に幾つかの面で影響が生じ得るというふうに考えております。現に生じている面もあるわけです。

まず、中国国内の経済活動が抑制されることに加えまして、日本や米国の経済にとっても、製造業のサプライチェーン、あるいは中国人観光客の流入の減少その他を通じて、日本経済だけではなく、世界経済全体に影響することが懸念されております。特に、SARSのときと違いまして、中国経済のプレゼンスが非常に大きくなっております。また、サプライチェーンも世界的に拡大をしております。その結果、影響が大きくなる可能性も意識する必要があるというふうに思っております。実は、国際金融市場でも、こうした懸念を背景に、投資家のリスクセンチメントがやや慎重化しているというようなこともございます。

日本銀行としては、この問題が我が国の経済、物価に与える影響、さらには今後の金融市場の動向に最大限の注意を払ってまいりたいと思っておりまして、従来からでもありますし、現時点でもさまざまな情報収集をしておりますし、今後予想されるG20その他の国際会議等でも意見の交換をして、必要なときに必要な措置がとれるように万全の対応をしてまいりたいと思っております。

 

○前原委員 今の御答弁ということは、必要であれば追加緩和も辞さず、そのときには、今までおっしゃっていた短期政策金利の引下げ、長期金利操作目標の引下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベース拡大ペースの加速という四つ、あるいはそれらの組合せということをやるということでよろしいんですか。

 

○黒田参考人 現時点で追加緩和の具体的な内容について云々するということは差し控えたいと思いますが、必要があればちゅうちょなく金融緩和を追加するということは以前から申し上げていますし、その場合のオプションとしてさまざまなものがある、あるいはその組合せその他工夫の余地もあるということを申し上げておりますが、今の時点で、追加緩和をするとか、その内容について何か言うというのは、やや時期尚早ではないかと思います。

 

○前原委員 日銀総裁、二〇一六年の九月に長短金利操作、イールドカーブコントロールが導入されまして、それ以来、どういう政策目標になっているかといいますと、長期金利については、十年物の国債金利がゼロ%程度で推移するように長期国債の買入れを行う、その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動し得るものとし、買入れ額については、保有残高の増加額年間約八十兆円をめどにしつつ、弾力的な買入れを実施する。こういう政策をとってこられたわけでありますが、他方で、長期国債の増加額というのは、二〇一五年の八十兆二千五百七十八億円をピークにどんどんどんどん低下して、去年は十五兆八千三百八円まで低下していますね。伺います。ネット購入額がマイナスになることはあるのかどうか。これはイエスかノーかでお答えいただけますか。

 

○黒田参考人 現時点でそういうことになるというふうには考えておりません。なお、御指摘のようなイールドカーブコントロールというものにつきましては、最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すように長期国債の買入れを行うわけですけれども、これは弾力的に行うということにしておりまして、こうしたもとで、世界的に金利が低下した昨年後半は国債買入れオペを減額いたしましたが、その後は減額しておりません。

 

○前原委員 この新型コロナウイルスについての不確定な要素というのがたくさんあるので、なかなか確定的なことは言えないと思うんですが、私が伺いたいのは、八十兆から十五兆までこのネット増というのは減っている。つまりは、今、黒田総裁が答弁されたように、世界全体で、金利の低下の中で、要は、資産買入れをそれほどしなくても、金利のいわゆる下がっている状況、安定している状況というのは生まれてきているわけですね。

となると、更にいわゆる買入れをしなくても、低金利、つまりはイールドカーブコントロール目標が達成できるかもしれない。その場合に、ネットでマイナスになった場合に、要は、マイナスにしないために資産買入れをやるということになると、更に金利が下がる。つまり、長期金利をプラスマイナス〇・一の倍程度におさめるということをおっしゃっていますよね、今まで。ということは、今の私の指摘は、下がっていて、これから金利も下がる、買入れしなくても下がる、そういう状況の中で、マイナスにならないために買入れをしたら、更に金利が下がって、むしろこのイールドカーブコントロールの〇・一%のプラスマイナス倍以内におさまるということを更に下回る可能性というのはないのかどうかを聞いています。

 

○黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、確かに世界的に金利が低下した昨年後半は国債買入れオペを減額したわけでございますが、そのもとでも、依然としてネットの国債買入れ額は引き続き増加しておりまして、結果として長期国債の保有残高も拡大しております。

マネタリーベースについてお尋ねでありますが、御案内のとおり、マネタリーベースにつきましては、国債の買入れだけでなく、ほかのさまざまなオペレーションの結果で出てくるものでもありますので、現時点で、国債買入れがマイナスになるとか、あるいは、御懸念の、いわゆるオーバーシュート型コミットメントとイールドカーブコントロールが矛盾するというようなことになるとは見ておりません。

 

○前原委員  間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますが、最後、総理に一点だけ申し上げておきたいと思います。この新型コロナウイルス、影響がどうなるかわかりません。危機管理についてはしっかりやっていただくと同時に、今後、経済にどういう影響が及んでくるのかわかりません。今、日銀総裁にお答えをいただきましたけれども、金融政策のみならず、やはり財政も含めて、先ほど我が党の後藤議員が申し上げたように、本来であれば、この予算を見直して、そしてしっかり対応策というのはとるということは、私は本筋だと思いますけれども、いずれにしても、経済そのものも踏まえた対応をとるということを一言、最後、言ってもらえませんか。

 

○安倍内閣総理大臣 経済にどのような影響が出ていくか、注意深く見ております。例えば、今回、武漢を中心に、中国の方の、外国人の入国について制限を設けたところでございますが、それによってどのような影響が出るか、製造現場、農業の現場等々についても、今リサーチ等々もしております。

今後、中国の経済にどのような影響を及ぼすか。SARSのときにも影響が出たわけでございます。そうした影響等もしっかりと見ながら、注意深く対応していきたい。そして、必要があればちゅうちょなく対応していくということでございます。

 

○前原委員 危機管理は政府の仕事ですので、しっかりやっていただくことをお願い申し上げて、質問を終わります。

 

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