○野田委員長 次に、前原誠司さん。
○前原委員 国民民主党の前原です。まずは、第二次安倍政権六年間の経済運営について質問をさせていただきたいと思います。
麻生大臣になるのか茂木大臣になるのかわかりませんが、簡潔にお答えください。
アメリカのムニューシン財務長官が、昨年十月十三日、インドネシアのバリだったと思いますけれども、日本と始める物品貿易協定交渉では、通貨安誘導を阻止するための為替条項を協定に盛り込む、これを求める考え方を明らかにしましたが、為替条項は交渉の対象になるんですか。
○茂木国務大臣 日米通商交渉については、昨年九月二十六日に公表されました日米共同声明に沿って交渉を進めるということで日米間一致をしております。
その上で、為替の問題でありますが、昨年九月の日米首脳会談、麻生副総理も私も同席をしておりますが、そこで話は全く出ておりませんし、今申し上げた共同声明にも為替の話は入っておりません。
○前原委員 その後でしょう、ムニューシンの話は。ですから、これからの協議で、日本の意思としてこの為替の協議はしないということを明確に言ってもらえませんか。
○茂木国務大臣 日米通商交渉、カウンターパートになりますのはライトハイザー通商代表であります。
そして、我が国として、いかなる国とも国益に反するような合意をする、行うつもりはございません。
○前原委員 答えていないんですよ。
総理、トランプ大統領との話の中で、自動車、それから農産物、恐らく為替、こういったものをツイッターで言っていますよね、お得意のツイッターで。中国、EU、その他の国々、この通貨安誘導を認めない、こういう発言をしていますね。
この為替の問題を、もちろん自動車の数量規制とかいろいろあると思います。きょうはそれは触れませんが、この日米の物品貿易協定において為替を入れない、これが日本の国益になる、私はそう思いますが、総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 為替については、日米の二〇一七年二月の初めての首脳会談ですが、その前の年はまだ正式になっていませんから、初めての首脳会談においてトランプ大統領と合意をしたとおり、専門家たる日米財務大臣間で緊密な協議、議論を行うことになっております。
いずれにせよ、我が国としては、いかなる国とも国益に反する合意を行うつもりはないわけでございまして、私とトランプ大統領との関係におきましては、為替については財務大臣同士に話をしようということで合意をしております。
○前原委員 話を聞いていると、国益に反するということの中に為替のその協定を入れるのか入れないのかということを明言されていないんですよ、二人とも。それをはっきり言ってもらえませんか。ムニューシンは明確に言っているわけですよ。
為替条項を協定に盛り込むように言うということについて、日本国政府としては、国益に反するかどうかということを聞いているんです。総理、総理。
○茂木国務大臣 事実関係から。
総理からもありましたように、為替の問題については、この通商交渉ではなく、財務の専門家、財務大臣を中心に、そこの間で話をする。そして、通商交渉につきましては、私と、そしてライトハイザー通商代表が窓口となって交渉を行うということであります。
○前原委員 同じ答弁を繰り返しているだけじゃないですか。国益になることについてしっかり議論するということについて、為替のことについては入れないということをなぜ言えないんですか、総理。
総理、総理、全体を。だってこの人は担当じゃないんでしょう。担当じゃない。今、担当じゃないって自分で言っていたじゃないですか。
担当じゃないことについては、ちゃんと総理、答えてください。
○安倍内閣総理大臣 済みません。私と大統領との間においては、私と大統領がこの問題について議論したり、あるいは、外に向けてドルがどうのこうの、あるいは円がどうのこうのと言うのはやめましょうと。大きなこれは影響を与える、これはやはり専門家同士に任せましょうということで合意をしているわけでございます。
そこで、いわばムニューシンがそういう発言をされておられるということでございますが、基本的には、ムニューシン財務長官と対応するのは麻生財務大臣が対応されるということでございまして、いずれにせよ、茂木さんは先ほど答弁したとおりの姿勢で臨んでいく、こういうことが今決まっているところでございます。
○前原委員 これは役所のたらい回しと一緒ですよ。要は、二回答えた茂木大臣は、自分の範疇ではないということを二回答えられた。
それで、総理が全て、森羅万象まで全部把握されるんでしょう、森羅万象。だったら、日米の物品協定の議論について、為替の項目は入れない、これは日本の国益に反するということを明確におっしゃったらどうですか。そのことを今聞いているんですよ。
○安倍内閣総理大臣 そこで、私と大統領との間ではそういうことになっています。今申し上げましたように……(前原委員「違う違う。自分の意思を聞いているんですよ」と呼ぶ)いやいや、待って。
順を追うと、為替のことについては財務大臣同士がやろうと。そして、茂木大臣も話しました。
これが果たして、では、茂木・ライトハイザーのところにこれがかかわってきたらどう対応していくかということについては、茂木大臣から答弁させたいと思います。
○前原委員 もうこれはいいですよ。だって、答えないんでしょう。
国益になるかどうか、入れるか入れないか答えますか、本当に。じゃ、答えてください。ちゃんと答えてください。
○茂木国務大臣 日米の通商交渉、具体的な協議はこれから始まります。そして、その協議、これは昨年の九月二十六日の日米共同声明に沿って行うわけであります。
交渉であります。基本的には、いかに自分側の情報を抑えて相手側の情報をたくさんとるか、これが、競争優位に立つ、この上で極めて重要であります。
今、日本が、この段階で、どんな交渉をするか、手のうちをさらすことによって国益を害することは避けたい、このように思っております。
○前原委員 それは詭弁ですよ。だって、為替というのは、これはまさに、後で質問しますけれども、向こうが、中国、そしてその他のEUの国々、日本、こういう国々を名指しをする中で、通貨安政策をしている、これについて是正をさせるんだということを明確に言っていますよね。
では、これを、今の茂木大臣の話だったら、バーターするんですか、ほかのことと。おかしいじゃないですか。ほかのこととバーターをするような話じゃない。根幹の話ですよ、為替というのは。
したがって、手のうちを示す、示さないということじゃなくて、為替については根幹のことであって、これについてはしっかりと我々としては、協議はするけれども、ムニューシンは為替条項ということで文書に入れようとしているんです。議論はするけれどもこういう条項については入れないと、何で明確に言えないんですか。
○麻生国務大臣 スティーブン・ムニューシンという人と二年近くやっていますけれども、ムニューシンから為替の話を直接言われたことはただの一度もありません。これが事実であります。直接言われたことはない。外でしゃべるのは、今の方は皆全部外に向かってしゃべられますけれども、それを直接私に面と向かって、これでどうだと言われたことはありません。
基本的に、この人も、いわゆる銀行、金融関係から来られた方ですからね、背景が。したがって、いわゆる為替というものはマーケットに任せてしかるべきで、不当に政府が介入するというのはいかがなものかということに関しては双方で十分理解しています。
その上で、議会がありますから、こちらの場合はね。いろいろ言われるのに対してどう対応するかというのは、それは大変なことです。
○前原委員 甘いですね。全くもって甘い。自分は直接言われていない。そして、為替というのは、当たり前のことで、そういうものはマーケットで決まるものだと。それだったら、明確に為替条項をこの協定の中に入れるなんて言いませんよ。
まあ、後でロシアの話も時間があったらしますけれども、腰砕けというか、腰抜けというか、こういうことについて、日本の立場はまずこうなんだということを明確に言ってからやるのが私は大事なことだと思いますけれどもね。交渉の駆け引きの材料にする、取引材料にするという茂木大臣の話には、ある意味であきれました。
次に行きますよ。次というか、同じこと。
一枚目の資料でありますが、(資料①)私は、トランプ大統領のやっていることについて、評価をすることもあれば、評価をしないこともいっぱいあります。
例えば、しないことについて言えば、パリ協定からの離脱、あるいはイランの核合意、それからエルサレムに大使館を移すこと、さまざまなことについて、私は、この人のやることについては反対であります。
ただ、私は、日本が円安誘導をしているというこのツイッター、あるいはムニューシンの問題意識については同感なんですよ。つまりは、異次元の金融緩和というのは、結果としては円安誘導なんですよ。
この表を見ていただきたいんですが、まず緑、これはドル・円の購買力平価です。購買力平価という言葉は何か難しいですが、簡単に言うと、一物一価ですから、一つの物は同じ値段ですから、何の障害もない状況においてはどこで買ってもその物は同じ値段で買える。そのドルと円のいわゆる均衡する点が購買力平価でありますけれども、それは今、大体百円なんですね、百円。そして、この赤の折れ線グラフというのは、これはドル・円相場、為替です。そして、青がいわゆる実質実効為替レートといいまして、ドル・円だけではなくて全ての通貨、貿易をする相手国との量、これを加重平均をして出しているということで、これは通貨の実力ということを言われているわけでありますが、これが実質実効為替レートであります。
昨年四月にアメリカの財務省が出した為替報告書では、円の実質実効為替レートは過去二十年平均よりも二五%近く円安水準にある、つまり円安にあるということを明確に米財務省は、ムニューシンのいるところは言っているわけですね。
さて、黒田総裁、来ていただいていますか。二%の物価目標達成のために金融緩和を行っている、為替が目的じゃないということはわかっております。しかし、結果として、この異次元の金融緩和というものが円安を招いているということは認められますか。
○黒田参考人 委員御案内のとおり、為替レートの決定に関してはさまざまな理論がございますが、非常に長い、二十年とか、超長期については購買力平価説というのが有力であり、景気循環の中では、金利格差とか成長率格差とか株価の格差とか、そういうものが影響するという議論が有力なわけですが、ごく短期、当面のいろいろな為替の動きというのはその他さまざまなことで決まってまいりますので、何か一つの要素で決めるということはできないと思います。
金融緩和、米国も金融緩和を続けてきたわけですが、我が国は我が国の経済、物価に合わせて大胆な金融緩和を続けているわけでして、そのもとで、金利格差はさまざまに動いていることは事実であります。ただ、金利格差と景気循環を通じた中期的な為替レートがぴったり並行して動いているかと言われると、そうでもないんですね。
ですから、金融政策の違いあるいは金利の格差というものが為替に影響し得るということはそのとおりだと思いますけれども、今の為替レートについて、我が国の金融政策、金融緩和が為替の下落を引き起こしているとは、私は一概には言えないと思っております。
したがいまして、委員の問題意識はよくわかるんですけれども、現在の日本銀行の金融緩和というのはあくまでも物価安定目標を達成するために行っているわけでして、その観点からさまざまな要因を見る際に、当然為替レートというものは影響しますので、それを見ていますけれども、為替レートをターゲットにして金融政策は運営しておりませんし、その点は、米国を含めて各国からの理解は得られているというふうに思います。
○前原委員 今の答弁の中で、いろいろおっしゃいましたけれども、いわゆる金融緩和というものが為替の変化の要因であるということは認められたんですよ。いろいろありますよ、ほかにもありますよとおっしゃったけれども、主要な要因であるということは認められたわけです。
ちょっと二枚目の資料をごらんいただきたいんですが、(資料②)これは、青がアメリカの金利、長期金利です。そして、赤が日本の金利、長期金利であります。
いわゆる黒田総裁になってからしばらくはアメリカの金利も上がっていなかったわけでありますが、テーパリングという資産購入の減少、そして利上げを始めてということで、どんどんどんどん開いていった。それが、言ってみれば、この金利差が開くことによって円安、お金を持っている人は金利の高いところで運用しようとしますから、その高いところで運用しようと思ったら、自国の通貨を売って高いところの通貨を買う、これは当たり前ですよね。ですから、今認められたわけですよ。
さて、問題は、この円安になっているということが、企業にとってはプラスなんですよ、為替効果、そして株、こういうことにとってはプラスなんですが、では日本の経済にとってプラスになっているのかということを三番目のグラフで見ていただきたいと思います。安倍総理は民主党政権と比べられることが大好きだということで、あえてその民主党政権と比べる表を出させていただきます。
いろいろな御意見はあると思いますが、実質GDPで申し上げると、上を見ていただくと、民主党政権の年率平均というのは成長が一・六%、それに対して安倍政権は一・二%なんですね。実質の伸び率、年率です。ここの大きなポイントは何かというと、民間最終消費というのが民主党政権のときは一・二で、そして安倍政権では〇・五なんです。GDPの六割が消費ですから、つまりは、消費が上がってこないということが大きなポイントになっているわけですね。これを上が示しているわけです。
これは何度か示したことがありますから、下をごらんください。
安倍政権は民主党政権と比べてこうなりましたよということをおっしゃいますけれども、安倍政権の六年間というのは、世界経済が非常によかったんですね。世界経済が非常にいい中でいい数字を得てこられたわけでありますが、下の図の上は、(資料③)民主党政権の三年間の、いわゆるOECD加盟国三十六カ国の、この三年間の加重平均で名目成長率、実質成長率がどうだったかということをあらわしたものなんです。
三十六カ国の中で、日本の実質の順位、これは加重平均ですからあくまでも目安でありますけれども、二十位だったんですね。名目は三十二位。
では、安倍さんは、口を開けばアベノミクスはよくなったよくなったとおっしゃいますけれども、世界全体で見ると、実質は三十三位に転落しているんですよ。落ちていっているんですね。名目は一歩後退、三十三ぐらいであります。
これは、安倍総理、私は、先ほどの円安というようなもの、これは輸出企業にとってはいい、インバウンドにとってはいい、しかし、逆に、名目賃金はほとんど上がらなくて、そして円安で輸入物価が上がって、そして実質賃金が下がる、こういう、国民にとってはマイナスだという議論をさんざんさせていただきました。それもあるでしょうし、このグラフを見られて、他の政権と批判をするんじゃなくて、なぜ世界の中で日本はこれだけ成長率が低いのか、あるいは安倍政権の中で落ちていったのか、これはどのように判断されますか。
○安倍内閣総理大臣 私が答弁した後、また更に茂木大臣から答弁、私は簡単にさせていただきたいと思います。
安倍政権としては、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくりました。そこで、名実が逆転している中で、これはかなり早い段階でもとに戻した、正常な状況に戻したのはお認めいただけると思います。
であるからこそ、名目GDPは一一%以上成長したわけでございまして、その前は、第一次安倍政権を含め……(発言する者あり)済みません、ちょっと、後ろで……
○野田委員長 御静粛に。傍聴席からの発言は慎んでください。
○安倍内閣総理大臣 長妻さんと同じで、私もしゃべりにくいものですから。ここで、いわば、前回の景気回復が最長の期間では、デフレが続いていく間だったものですから、名目GDPは二・五%しか伸びなかったんですが、
四倍になった。しかし、確かに、委員が御指摘になったように、OECD加盟国の年平均は二%成長であったのに対し、日本の平均成長率は一%程度と低くとどまっているのも、これは確かに事実であります。
だからこそ、我が国においては、成長戦略を更に加速させ、潜在成長率を高めていく必要があるんだろうな、こう思っているわけでございまして、企業の、まさに第四次産業革命においてこれを生かして、生産性を向上させていくということが求められていると思います。
○前原委員 二つ申し上げたくて、名実が逆転したというのは事実でありますが、これは、隣に座っている麻生総理のときにリーマン・ショックが起きて、あのとき世界経済がどおんと落ち込んだわけです。そして、その中からどんどんどんどん上がっていく中で、GDPギャップというものは民主党政権の中でも縮まっていって、そして逆転が起きたのがこの第二次安倍政権だったということは申し上げておきたいと思います。
先ほど江田委員がおっしゃっていたように、もうこれは、吉田茂さんを抜いて、歴代第二位の長い長い期間でやっておられて、そして、成長戦略を加速させというのは、いつからやっているんですか。三本の矢というのは六年前からやっているんじゃないですか。六年前からやっていて、そしてこの世界の中でどんどんどんどん順位が落ちていっているということについては、それは、単に成長戦略を加速されということじゃなくて、もう
少し本質的に、今の政策が本当に正しいのかどうなのかということも突っ込んで見られた方がいいんじゃないですか。
私は、経済は成長しないのに無理やり財政出動だ金融緩和だということでアクセルを吹かして、そして、その結果として、言ってみれば、実質所得が下がっていることの中で、また、大事な老後やあるいは若い方々への投資というものができない中でこういう状況に至ったのが今の六年間ということをお認めになったらどうですか。
○茂木国務大臣 確かに、民主党政権発足前にリーマン・ショックが起こりまして、日本の実質GDP、六%以上、当時でいいますと三十二兆円落ち込んで、それで、そこから戻る期間ですけれども、世界の各国、主要国が二〇一一年で戻っているんですね。それに対して日本の場合は二〇一三年までかかっている、これは事実であります。
それから、名目と実質の話はしませんが、少なくとも、名目成長が上になっているという健全な姿はできつつある。
ただ、消費についてはまだ弱い動きがある。これについては、特に若い世代、二十代、三十代の可処分所得、そこの中での消費性向が伸びていない。ですから、我々としては、人づくり革命をしっかり進めることによって、そういった世代に投資をしていきたいと思っております。
○前原委員 驚いたのは、こういう話は私は総理がみずから直接答弁をされると思いましたけれども、こういう、何か自信がなくなるとほかの人に振るというのも……(安倍内閣総理大臣「そうじゃない」と呼ぶ)いやいや、そうでしょう。だって、今までこれだけ自分自身の、経済がアベノミクスでこんなによくなりましたよと言って、それは実は、井の中のカワズとは言わないけれども、日本の中での話であって、世界全体で見ると成長
率が落ちていたということについて、答弁、何が問題ですかと聞いたら、自分が答えずに経済財政担当大臣に振る。私はこんな総理は逆に見たくなかったですね。
やはり、正面切って、どこが問題なのかということをもう一遍検討されたらいいと思いますよ。
残りの時間で外交問題をやらせていただきたいと思います。
ロシアの問題でありますが、私は、総理とは当選が同じで、そして、保守政治家だというふうに認識をしております。私も自分自身は保守の政治家だという認識を持っております。
その中にあって、ラブロフ外相や、あるいはガルージン大使がインタファクス通信のインタビューで、日本側との協議では南クリル諸島の主権をめぐる問題や島の引渡しに関する問題は議題になっていない、議題になっていませんよということを言っているわけですね。そして、多々言われることでありますけれども、要は、負けたんだから、負けたことを認めろ、ロシアの主権である、ロシアの領土であることを認めろ、それから議論だということですね。そこまで、まさかと思いますけれども、そういう議論の土壌に乗って、それでも二島を返還してもらうということになると、全く土台が変わってきますよ。
日ソ中立条約というものをソ連がこれは一方的に破棄して、五年間で四一年に結んで、五年間有効、そして自動延長というものを一方的に何の前ぶれもなく破棄して、そして、日本の北方領土を不法占拠した。そして、この北方領土については、固有の領土ということで、固有の領土というのは、今までほかの国の人が住んだことがないというのが固有の領土でしょう、ということをずっと言ってきた。それが日本の立場であったわけでありますが、まさか、この点を百八十度ひっくり返して、いや、ロシアのものでした、だけれども日ソ共同宣言に基づいて二島を返してください、こんなぶざまなことはないでしょうね。
○安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。
これは、私どもの認識あるいは法的立場というのは全く一貫して変わりがないということは申し上げておきたい、こう思っております。北方領土は我が国が主権を有する島々でありますし、この立場には変わりはありません。表現は異なりますが、北方領土が置かれた状況についての法的評価は同じであります。
委員も、北方対策担当大臣のときと外務大臣のときにおいては表現を変えておられるというふうに承知をしておりますが、それはやはり、静かな状況の中で交渉ができるかどうかに、まさに、うまく交渉を進めていくことができるかどうかがかかっているんだろう、こう思うわけでございまして、それは、今、前原委員がおっしゃった発言あるいはその思いというのは多くの国民の皆さんが共有しておられるということは、私はもう率直に認めるところでございますが、今の政府の立場としては、とにかく交渉を前に進めていくことを最優先で考えなければならない、こう考えております。
○前原委員 交渉を進めるということと、日本の立場というものをしっかり守った上でそして果実を得るというのは、私は違うと思いますよ。
そして、まず私が国土交通大臣兼北方担当大臣だったときと外務大臣のときに使わなかった言葉は、たった一つです。不法占拠という言葉だけ使わなかった。しかし、日本の固有の領土であるということについては、何度も何度も言っていましたよ。そして、四島の帰属を確定しということも言っていましたよ。もう時間が来て、次の同僚議員にバトンタッチしたいと思いますけれども、総理、このことだけはぜひ、僣越ですが申し上げておきたいというふうに思います。
私は、気持ちはよくわかるんです。領土問題、最後の領土問題を解決したいという気持ちはわかるし、そして、ロシアが実効支配をしているんですから、こちらがしっかりと働きかけてやらなければ動かない話だということはよくわかっています。しかしながら、歴史に責任を持つということを総理は考えていただきたいんです。
歴史に責任を持つということは、そこで二島返ってきました、今まで七十何年間も動かなかったことが動きました、ではなくて、日本の国柄、そして日本が今まで七十数年間しっかりと歴史的な立場として物を言ってきたことを百八十度変えて二島が返ってきて、これはほかの国から笑われますよ。
それは、多くの国民が望むものでもない。日本の誇り、日本の国柄、そして今までの歴史。元島民の方々も、それで戻ってきて喜ぶ方はおられないと思いますよ。そこはしっかりと日本の立場というものを守った上で、そして交渉を進めるということ、その一線は崩さないということをもう一度答弁いただけませんか。
○野田委員長 質問時間が終わっておりますので、
総理、簡潔に答弁をお願いします。
○安倍内閣総理大臣 先日、北方領土の日に際しまして、北方領土返還要求全国大会に出席をして挨拶を行ったところでございますが、このときに数名の元島民の皆様とお目にかかる機会がありました。私も、何回もそういう方々とお目にかかっております。
その皆さんは、例えば、二年前の長門会談で私とプーチン大統領が確認した新しいアプローチに基づき、航空機によるお墓参りで現地に行かれた元島民の方は、そのおかげで択捉島の墓地で倒れていた先祖のお墓をきれいに修復することができた。これは、まさに航空機で行くことによって、今まで船で行くのは、あそこは荒れますし、なかなか行けないので大変なんですが、それが可能になったということでございまして、何とか早く、一日も早くこの問題を、自分たちも高齢化している中において解決をしてもらいたい、自分はこのふるさとに帰って朝を迎えたいということであったわけでございます。
その中で、もちろん、歴史がどう評価するかというのは常に我々政治家が直面することでございまして、まだ、もちろん結果は残念ながら出すことができていませんが、当然それは歴史から厳しく評価される、このように考えております。
○前原委員 厳しく評価をされるのではなくて、歴史で正しい評価をされるように交渉することを望みます。終わります。