前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第197回国会 衆議院安全保障委員会2018/11/13

○岸委員長 次に、前原誠司君。

 

○前原委員 前原でございます。まずは、この質問の機会をいただきました渡辺理事に感謝を申し上げたいと思います。それから、岩屋大臣、御就任おめでとうございます。悲願の防衛大臣になられて、ますますの御活躍をお祈りしたいというふうに思っております。まず、敬意を表して、一問目、岩屋大臣に質問したいと思いますけれども、日本の外交安全保障の最大の課題、いろいろな課題があると思うんですけれども、最大の課題は何と考えるか、まずこれについてお答えください。

 

○岩屋国務大臣 御質問ありがとうございます。最初から、簡単そうで実は非常に難しい御質問をいただいたというふうに思っております。もう細々としたことは申し上げませんが、北朝鮮も、まだプロセスが始まったばかりで、今後については予断を許さない、やはり能力はしっかり保持している。したがって、楽観論や期待感で防衛政策をつくるわけにいかないと思っていますし、中国については、非常に、東シナ海、南シナ海、アグレッシブな活動を継続をしておりますし、ロシアとはさまざまな交渉をやっていますが、北方領土、極東における軍備増強が図られている。さらには、最近は軍事技術の進展はもう目まぐるしくて、陸海空という領域だけじゃなくて、宇宙、サイバー、電磁波といった新しい領域でキャッチアップしないともう一気におくれをとってしまう。

そういう国際環境あるいは軍事技術の進展といったものにしっかりと対応できる防衛力をつくり上げていくというのが我々の使命だというふうに思っております。

 

○前原委員 外務大臣にも同じ質問をします。

 

○河野国務大臣 外務大臣としてお答えをすれば、恐らく、力を背景とした一方的な現状変更、あるいはテロや暴力的過激主義といったものの拡大、そして国家資本主義と言っていいんでしょうか、こうしたものによって、戦後の日本あるいは世界が平和と繁栄を築いてきた自由民主主義、法の支配、基本的人権といった共通の価値観に基づく国際的秩序が今挑戦を受けているということに尽きるのではないかというふうに考えております。

 

○前原委員 ありがとうございました。お二人の御答弁をいただいたわけでありますけれども、私も、まず防衛大臣がお答えになられたことで申し上げると、北朝鮮はなかなか安心ができない。米朝首脳会談というのは歴史的なものでありましたけれども、ショーに終わる可能性もあるということで、これについてしっかりとやはり、もちろんこの議論が進むようなサポートをしていくとともに、備えをしっかりやっていくということ。そして、外務大臣がおっしゃったことと防衛大臣がおっしゃったこと、実は包括しているところがありまして、中国とどうつき合うのかというところが私はかなり大きな外交課題だろうというふうに思っております。外務大臣は中国という言葉を名指しをされませんでしたけれども、一方的な現状変更、力による現状変更、そしてまた国家資本主義的な取組をしている、今までの価値観の挑戦を受けているということについては私も全く認識は一緒でございまして、きょうはこの強大化する中国とどうつき合っていくのか。隣国ですから、我々引っ越しできませんので。しかも、敵対するとか対峙をするという意味では全くありません。これは、どううまくウイン・ウインの関係をつくり出していくのか。

しかし、彼らのしっかりとした意図を我々が認識をした上で外交や防衛体制というものをしっかりとるということが大事だということの中で質問を順次していきたいというふうに思います。まず、外務大臣に対して質問をしたいと思います。中国というのは、ことしで改革・開放四十年なんです。一九七八年の十二月に中国共産党の三中全会というのが行われまして、私は鄧小平という政治家というのはすばらしい人だと。やはり中国、この四十年間でGDPと貿易量は二百倍になっているんですよ。

きょうお配りをしている一枚目の資料を見ていただきますとおわかりですけれども、(資料1)貿易量とGDPは二百倍、そして軍事費は公表ベースで六十倍ということですので、すさまじい発展をこの四十年で遂げた。その基礎をつくった、改革・開放という基礎をつくったこの鄧小平という人は私はすばらしい指導者だというふうに思っているわけでありますけれども、それをベースにしているのが、今、習近平国家主席でありますが、彼は中国の夢というのを言っています。この中国の夢って一体何なんだろうということなんですが、私は、これは中華民族の復興をなし遂げるということだと思うんです。

一八二〇年、まだ清国の時代ですけれども、一八二〇年のころの世界のGDPに占める経済のナンバーワンの国は中国だったわけですけれども、どのぐらいだったかといいますと三六%なんです。今、アメリカがナンバーワンの国ですけれども、二四%。ですから、今のアメリカの存在感の一・五倍ぐらい中国があった。それが、アヘン戦争だ、あるいは第二次世界大戦だということの中で、言ってみれば本当に屈辱の歴史を繰り返してきて、これを何とかもう一遍立ち直らせる、中華民族の偉大な復興をなし遂げるんだ、こういう考え方が私はベースにあると思っています。至るところにその文言が出てくるわけでありますが、一つの山に二匹の虎はいないと。つまりは、アジアという山には日本という虎もインドという虎も要らないし、世界という山にはアメリカという虎も要らないんだ、中国という虎さえいればいいんだというのが彼らの基本的な考え方であります。そしてまた、自分たちに従う者は栄えて、自分たちに逆らう者は滅びるんだ、こういう考え方を唱える向きもあるということの中で、中国の夢というのは、偉大な中華民族の復興をなし遂げようとしていると思うんです。それが、言ってみれば、この改革・開放に乗った経済については、さらに、中国製造二〇二五、あるいは一帯一路、一帯一路は、これはまさに今のマーシャルプランだと。

つまりは、中国の経済影響圏を拡大する、確保するための言ってみればツールであるということを言う人もいますし、あとは、先ほど岩屋大臣おっしゃったように、南シナ海、東シナ海にどんどんどんどん内海化をしていって、そして太平洋、インド洋に出ていくということの中で、グローバルな、そして宇宙やサイバーにおける軍事力というものも非常にたけていて、ナンバーワンをとにかく目指すんだというふうに言っていますけれども。外務大臣、名前はどうでもいいんですけれども、彼らは否定するんだ、覇権ということを否定するんですけれども、覇権という言葉は別にして、今私が申し上げたような、中華民族の偉大な復興をなし遂げようとしている、そして、さまざまな国家戦略を極めて総括的に、ある意味見事にやり遂げて、みずからがナンバーワンの国になろうとしている。中国製造二〇二五なんてそうですよね。二〇四九年、建国百年には自分たちがナンバーワンの製造強国になるんだと。

そして、これを軍事にも結びつけていくという、いろいろなことをやっているわけです。この、ナンバーワンになろうとしている、覇権という言葉は彼らは使わないけれども、そういう目的で中国が世界戦略を持ってさまざまな手を打ってきているという認識についてはいかがですか。

 

○河野国務大臣 今、前原さんがおっしゃったような、この改革・開放の四十年、日本もそれなりのODAでこれを支援し、また多くの日本の民間企業がこれを助けてきた、そういうこともあって今おっしゃったような発展を遂げたんだろうと思います。私も、松下幸之助さんが決断されて中国につくられたブラウン管の工場なんというのを拝見したことがありますけれども、かなり早い段階に中国に対して進出をし、支援をして、一緒に栄えよう、そういう決断をされたわけでございます。冷戦時代のソ連と比べると、今の中国というのは、国際経済あるいは国際貿易の中で占める位置というのがはるかに大きくなっている。冷戦時代のソ連というのは貿易も少なかったわけですから、これをいわば封じ込めるということは戦略として可能だったんだろうと思いますが、今アジアの多くの国はアメリカより中国との貿易の方が大きいという状況になりましたから、これを封じ込めるなんということは到底できない。いかに中国と関与し、中国をこの世界秩序の中で発展をしてもらうかというところにいわばフォーカスをしていかなければいけないんだろうというふうに思います。中国の人口は、インドがどれぐらいになっているかというのは微妙ではありますけれども、インドと並び、あるいは世界で一番の人口を持っている国ですから、GDPが発展をすれば、一人当たりのGDPが大きくなれば、それは、GDPがやがて人口が五分の一のアメリカをしのぐということは十分にあり得るんだろうというふうに思っております。ただ問題は、そこへ至る過程で、戦後みんなで築き上げてきた共通の価値観に基づいた世界秩序、国際秩序というものを中国も一緒になって支えていって発展をしてくれるかどうかというところで、それが実際にできるんであるならば、中国の発展というのは世界に大いなる機会を提供するということになろうと思いますし、この世界秩序とは別な秩序をつくるんだということになると、これは我々としても、しっかりと中国に関与をし、みんなでつくり上げてきた国際秩序というものを中国にもやはり担っていってもらわなければいけないんだろうというふうに思っております。

 

○前原委員 私は、今おっしゃったことは同意します。私の質問は、覇権、若しくはナンバーワンを目指しているという認識を持っているかということを聞いたんです。それについて、イエスかノーか、お答えください。

 

○河野国務大臣 いろいろな分野でのナンバーワンというのがあるんだろうと思います。これだけの人口を抱えていますから、当然に、経済が発展すればGDPは世界一になる、あるいはなろうとするというのは、これは当然のことだろうというふうに思いますし、平和裏にそれが行われるんであるならば、それは世界経済に対しても大いなる機会を提供する。一方で、軍事力を背景にする一方的な現状変更というのがさまざまなところで行われておりますので、これに対しては、やはり我々として、その分野でも、何だか、さっきおっしゃったように、虎は一匹しか要らないんだということであるんでは、これは困るわけですから、もし仮に中国にそういう意図があるとするならば、いやいや、それは世の中には虎もいればライオンもいればキリンもいればシマウマもいる、それはみんな平和裏に一つの山に住んでいて何にもおかしくないんだよということはきちっと申し上げる必要があろうかと思います。

 

○前原委員 それを踏まえて次の質問に行きたいと思います。十月四日に、アメリカのペンス副大統領がハドソン研究所で講演をしています。これについて質問をするということを申し上げていますので、両大臣は読んでいただいているというふうに思いますけれども、きょうこの委員会室におられる方々、読んでいない方もおられるかもしませんので、サマリーをつくらせていただきました。二枚目の資料、(資料2)配付している二枚目をごらんいただきたいと思うわけでありますけれども、これはかなり衝撃的な内容であります。ちょっと長いですけれども、ポイント、ポイントをお話しをしますと、「米国の歴代政権は、中国での自由が経済的だけでなく政治的にも拡大することを期待し、政策を行ってきたが、その希望は達成されなかった。鄧小平氏の掲げた「改革開放」政策も、いまや空しい。」「中国は技術の強制移転や知的財産の盗用、国有企業への補助金など自由貿易に反する政策を駆使し、世界第二位の経済大国に成長した。これらの行為は、三千七百五十億ドルにも及ぶ米国の貿易赤字の一因にもなっている。」「中国は、「中国製造二〇二五」計画を通じてロボットやAI等、世界の最先端産業を支配することを目指している。目的を達成するため、米国の知的財産をあらゆる手段を使って取得しようとしている。」「中国は膨大な軍事費を投じ、西太平洋から米国を追い出し、アジアの同盟国への支援を阻止しようとしている。」「ここ数年、中国は国民に対する統制と抑圧を強化して他に類を見ない監視国家を築き、インターネット検閲システムは自由な情報へのアクセスを妨げている。また、新たな宗教的迫害も生じている。」「中国は「借金漬け外交」で抑圧を自国の外に広げようとしている。」これは一帯一路ですよね、このことを言っている。そして、締めくくりとして、「過去の歴代政権は中国の行動を看過してきたが、そのような日々はもう終わった。」こういうことを言っているわけです。河野大臣、これについて、いや、これはおかしいと思うことはありますか。

 

○河野国務大臣 戦後、日本もアメリカも、ある国で経済が発展すれば、その次の段階としてその国は民主化を目指すということを我々は理論として信じて、だからこそいろいろなODAをいろいろなところへやってきた、そういう過去がございます。私は今でも、真の資本主義、市場経済というのは、それがつくり出す新たな中間層が、次の段階でいわば民主化を求めていくということになるだろうというふうに思っております。ただ、一つの経済が発展をするそのルートというのは、さまざまなルートがあるわけですから、どの国も同じような経済体制あるいは政治体制で発展をすることができるかといえばそうでもないし、そうでなければならないかといえばそうではないんだろうと思います。十数億人という人口を抱える中国が今日の発展を遂げるためには、この改革・開放路線というのが必要であったのかもしれませんし、この改革・開放路線が、少なくとも経済の発展はしっかりとなし遂げているというところについては、そういう道もあったんだというふうに考えます。問題は、それでは、これからどういうふうになるかということで……(前原委員「質問に答えてください」と呼ぶ)いや、今お答えをしようとしているわけでございます。そこで、これから先どういうふうになるかといえば、それは、日本もアメリカも、中国がこれまでの戦後の国際秩序を一緒になって支えてほしいというふうに考えているわけで、それはさまざまな場面でそういうことを申し上げているわけでございます。

今回のこのペンス副大統領の演説というのは、アメリカが中国に関して持っている問題意識というものを踏まえながら、中国との間でいわば結果志向の関係をつくっていくんだということの重要性を訴えている、そういうふうに考えております。

 

○前原委員 いや、質問に答えていないでしょう。私が大臣のとき、河野委員にいろいろ質問を受けましたけれども、極めてダイレクトで、アグレッシブで、僕はその河野太郎さんの方が好きでした。大臣になると、もちろん守らなきゃいけないことがある、そして本音のことは言えないところもある。しかし、先ほど、一番初めに価値観の話をしたんですが、この価値観の話はずれてはいけないですよ。今の質問にダイレクトに答えてください。ペンス副大統領の質問について、これは違うというところがあるかということを聞いているんです。

 

○河野国務大臣 申し上げましたように、一つの国がどのような政治体制、どのような経済体制で発展するか、それはさまざまなルートがある。だから、このルートで行かなければならないということはないというふうに申し上げております。

 

○前原委員 意味がわからない。日米同盟、そして、先ほど、一番初めにみずからがおっしゃった言葉ですよ、戦後築いた価値観を守らなきゃいけない。その価値に対する挑戦だということをペンス副大統領が言っているわけです。そのことについて、いや、それは違うと、ペンス副大統領の言っていることは違うという、異なる自分の意見、日本の外務大臣として異なる意見はありますかという質問をしているんだ。逃げないで答えてください。

 

○河野国務大臣 アメリカがペンス大統領のような問題意識を持っているということでこの演説が行われたんだろうと思います。日本も、戦後の繁栄を築いてきた、自由ですとか民主主義、法の支配、基本的人権、そうした共通の価値観から成る国際秩序を維持していくことは大切だというふうに考えている、そういうふうに申し上げているわけでございます。

 

○前原委員 私の質問は、今説明しましたよね、ペンス副大統領の演説のサマリーを。その中でこれは違うというところはありますかと聞いているんだ。これ、言わないということになると、全部同意するということになりますよ。それでいいんですね。

 

○河野国務大臣 このペンス副大統領の演説は、アメリカの問題意識についておっしゃっているわけで、事細かくいろいろなことをおっしゃっております。日本としては、一つ一つのことは別として、戦後の繁栄を築いてきた共通の価値観に基づく国際秩序を中国も大事にしてほしい、そういうことを中国に対して申し上げております。

 

○前原委員 個別の話に移っていきますけれども、価値観、価値観ということを大上段におっしゃるんであれば、中国が今、まさに自分でゲームチェンジャーと言ったんですよ。国家資本主義という言葉を使ったのは河野大臣なんですよ。まさに民主主義の挑戦をしようとしている。民主主義よりも効率のいい仕組みがあるんじゃないかという挑戦が始まっているんです。新冷戦と言われているのはその背景があるわけでしょう。人の物を盗み取ってもいいんだ、技術移転を強要していいんだ、国際的なルールに反して国が補助金を出して企業を育てて、その企業が大きくなればいいんだと。こういう競争というものは、世界の中のルールとしては今までではなかったことについて中国はやって、そして一番になろうとしているんじゃないか、これはずるいんじゃないかということを言っているわけですよ。それに対してずるいと言わないと、一番初めに大上段に構えられたことはうそになりますよ。

別にアメリカと全て一緒である必要はない、同盟国だからといって。しかし、価値観とか国家資本主義とかゲームチェンジャーということをおっしゃったのであれば、こういったことについてどこが中国にエンゲージして、これも大臣の言葉ですよ、エンゲージして直させなきゃいけないかということを説くのが日本の役割でしょう。封じ込めじゃなくて、エンゲージとおっしゃるのであれば。違いますか。では、個別の話で少し行きます。

アメリカは、こういった技術の窃盗、これは今度は三番を見てもらえますか、資料。(資料3)これはトランプ大統領が言っているわけですけれども、中国は基幹技術の国産化比率を上げるため、アメリカなどの企業に技術供与を強要し、さらに、政府の投資ファンドによる補助金も投入して、公正な競争をゆがめているんだと。

そして、この下の全米商工会議所の報告。中国のICや暗号化システムなどの情報通信のインフラについて、外国技術から自国技術へと置きかえる政策として、多くの国際的なテクノロジー企業から、世界的に例を見ない技術窃盗の青写真と考えられている、全米の商工会議所がこれを言っているわけです。

そして、AIやバイオテクノロジーのような最先端技術で中国がアメリカに先んずることに成功すれば、経済的な面で優位に立つだけではなくて、米軍を破壊的な危機にさらすことが可能になると。つまりは、AIとか、中国製造二〇二五で十の分野で決めたものについて、これが世界強国になれば、軍事分野と結びつけて、まさにヘゲモニーを握る、途中のルールなんかお構いなしだと。先ほどの河野大臣で言うと、経済が発展したら、いずれは民主主義国家になるんじゃないかと。逆ですよ。経済はどんどんどんどん、言ってみれば、ずるい方法も含めて発展をさせていき、そして、軍事も含めて、中国共産党一党独裁ということの中で中国は覇権を握ろうとしているということをアメリカは警鐘しているのがトランプ大統領の発言であり、ペンス副大統領のハドソン研究所での演説ではありませんか。こういう問題意識を日中首脳会談や日中外相会談で触れられましたか。

 

○河野国務大臣 最初から申し上げているように、正しい、正しいと言うのがいいのかどうかわかりませんが、真の意味での市場経済、資本主義というもので国家が発展すれば、恐らく、その次は民主化という段階になるんだろうと思います。私が申し上げているのは、今さまざまなところで、この国家といわば結託、結託という言葉がいいかどうかはわかりませんが、つながって発展をしていれば、自由な選挙でその政府をひっくり返そうとする民主化の動きを受け入れないということが起こり得る。それが今さまざまなところで起きているというのが問題意識でございます。今御指摘の、この中国の、例えば、国際的なルールや慣行に違反をして技術移転を強要する、あるいは市場をゆがめるような補助金を使う、あるいは、データに関しても、さまざまなことを国際ルールに反するようなことを強要する、こういうことは、我々が築き上げてきた国際秩序に反しているわけですから、それについては、今、日本、アメリカ、ヨーロッパを始めとして、WTOを始めとするさまざまな場面で、しっかりとしたルールをつくり、それを明確にし、それに違反する行為があれば、それに対する是正を求める、そういうことを行っている、行おうとしているわけでございまして、国際ルールに逸脱をして経済を発展させる、ある面、まだ発展途上の小さな経済の場合であるならば、それはいろいろなやり方が確かにあろうかと思いますが、ある程度まで大きくなった段階では、それなりの責任ある振る舞いを身につけていただかなければなりません。私は、今の中国の王毅外務大臣との最初の会談で、中国に対して、大国になった中国はそれなりの振る舞いをしてもらわなければならないということを一番最初に申し上げました。

こういうことは、言うべきことはやはり中国に対してしっかり申し上げ、中国が世界に対していわば機会を提供するような、平和裏での発展をなし遂げてくれる、そういうように期待をしていきたいと思っております。

 

○前原委員 今の答えを総合すると、今回の日中首脳会談や日中外相会談では言っていないということですよ。

つまりは、米中の今の衝突の中で、そして、日本とは何とかうまくつき合っておこうということの中での今の流れがあるわけであって、恐らくそれは皆さん感じておられると思いますよ。本気で中国が日本としっかりとつき合おうということになっているかどうかというのは、まだまだ見きわめなきゃいけない。まだそれは緒についたばかり。今の流れはそうじゃないということです。やはりこういうときにこそ、ちゃんと物事を言うということは私は大事だと思いますよ。言っていないということが明らかになったというふうに私は思います。政務官、國重政務官、お越しをいただいておりますが、5G、これは日本では二〇二〇年ぐらいに、東京オリパラに合わせてということだったのが、どうやら前倒しになりそうだという報道もございます。これについて、今年度中に5G用の周波数をどの事業者に割り当てるかを決める予定だという報道もありますが、それが事実なのかということと、それから、海外の事業者に自由に参入を認めるのはどうなのか。この点についてお答えください。

 

○岸委員長 國重総務大臣政務官。(前原委員「ちょっととめていただけますか。とめてください」と呼ぶ)答えられませんか。ちょっと、済みません、とめてください。〔速記中止〕

 

○岸委員長 速記を起こしてください。國重総務大臣政務官。

 

○國重大臣政務官 質問にお答えいたします。周波数の割当ての前倒しについては、これは事実でございます。また、外資の参入については、これは今のところ禁止はされておりません。

 

○前原委員 そうなんですよ、禁止はされていないんです。それは調べられるようなことではないというふうに思うわけでありますが、確実を期して聞かれたんだろうというふうに思いますけれども。アメリカ政府、それからアメリカ政府の取引企業、これは、ファーウェイとZTEというところについては5Gの参入を認めないということを決めています。それから、オーストラリアは、ことしの八月に、4Gはファーウェイは半分以上なんですよ、オーストラリアでは。にもかかわらず、5GではファーウェイとZTEは入れない、除外するということを決めたわけです。この背景にあるのは、政務官、何だと思われますか。

 

○國重大臣政務官 セキュリティーに対するリスクの軽減ということで考えております。

 

○前原委員 そのとおりなんですよ。つまりは、ZTE、ファーウェイというのは中国企業ですけれども、4Gのときはよかったと。まあ、私は余り詳しいことはよくわからないんですけれども、4G、5Gの違いはということで調べて、三つの特徴があるそうです。最大通信速度が現行の4Gの数十倍という超高速、それから通信タイムラグが千分の一秒と、ほぼゼロに近い超低遅延、そして三つ目が、一平方キロメートル当たり百万台の端末を接続できる多数同時接続、この三つが5Gの特徴だということで、これでも何かよくわからないんですけれども、まあ、すごいものなんだろうなというところはわかるわけであります。そこで、これは河野外務大臣にお伺いしますけれども、アメリカ政府との、それから取引企業、オーストラリアは、繰り返しになりますけれども、4Gは半分以上が現在ファーウェイであるにもかかわらず、5Gからは中国企業を締め出す、こういうことをやったわけです。その背景には、今政務官のお答えがあったように、セキュリティーの問題だ、つまり、筒抜けになるんじゃないか、こういう危機感がある、こういうことでありますが。

これは、国務大臣、お二人の国務大臣もいらっしゃいますのでお答えをいただきたいわけでありますが、私も外務大臣経験者で、これは、やりとり、公電含めて、非常に機微なものですよね。こういったものに対してのセキュリティーリスクがある。つまりは、国家に抜き取られる可能性があるということで、アメリカやオーストラリア、あるいはほかの国もあるんですよ、それに追随しているところが。日本はどうあるべきだと思われますか。

 

○河野国務大臣 先ほど私が最初の会談で王毅外務大臣に申し上げたということを申し上げましたが、別に先般言わなかったわけではなくて、最初からずっと言っていますという意味で申し上げているわけでございますので、そこは誤解なきようにしていただきたいと思います。日本政府がこれまで正当な理由なく特定の企業を名指しして市場から排除したことはございません。ただ、委員御指摘をいただきましたように、さまざまなセキュリティーの問題というのは、この通信あるいはデジタルの中であるわけでございますから、政府としても、必要だというふうに判断をすれば、それは必要な措置をとるということはやぶさかではないというふうに思っております。

 

○前原委員 先ほどの、日中外相会談を全部読ませてもらいましたけれども、明確に何も言っていないですよ。言っていない、言っていない。ちゃんと私はヒアリングを受けましたけれども、そんなに明確に、私が申し上げたことを言っている形跡はないですから。それは言っておきますよ。日本の、これは政府からも伺ったんですけれども、内閣から伺ったんですが、要は、今外務大臣がおっしゃったように、特定の企業を除外するといったことはないと。要は、情報システム等を調達する際には、調達の相手方から管理体制、品質保証に関する資料を提出させるということなんです。つまり、企業側から、そんなことをしませんよ、そんなことはありませんよというようなことについて提出させるということなんですが、そんなことができるのかなということがまず一つ。

ちょっと時間もだんだんだんだん限られてきていますので、ちょっとまとめての質問になりますが、中国に国家情報法というのができたんです。これも通告していますからおわかりだというふうに思いますが、この国家情報法というのは、第七条、ちょっと読みます。「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、」と書いてあるんですよ。いいですか。「いかなる組織及び国民も、法に基づき」、この国家情報法に基づき、「国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、」と。なおかつ、知り得た国家情報活動については秘密を守らなければならない。つまりは、提供したということも言っちゃだめですよ、こういうことなんです。どうやらオーストラリアなんかは、こういうことを、この国家情報法というものを背景にして、運用によっては、中国の民間企業は当局が情報収集への協力を強制した場合には従わなきゃいけない。仮に、ZTEやファーウェイが、そういうことはやりません、民間企業としてそんなことはしませんということを言っても、中国の企業ですから、この法律に基づいて中国が出せと言ったら出さなきゃいけない。ここで4Gについては五割以上のシェアを持つファーウェイも5Gには参入をさせないということになった。岩屋大臣、防衛省・自衛隊にこういう法律のもとのいわゆる中国のZTEとかファーウェイ、使わせるということを想定できますか、防衛省・自衛隊で。

 

○岩屋国務大臣 現在の装備の中にどういうものが含まれているかということは明らかにすると、まさに攻撃の対象になりかねないので、それは控えさせていただきたいと思いますが、前原委員の御指摘はしっかりと念頭に置いておかなければいけないというふうに考えております。

 

○前原委員 河野大臣、国務大臣としても伺いますけれども、やはりこの外交、安全保障というのは情報が命ですよね。これが、こういった法律を盾に、今までもそういう危惧がなされているわけです。

例えば、ちょっとこれは次の質問の導入のことなので、次の質問にもかかわりますけれども、この十月十日に、アメリカの司法省は、航空宇宙関連の米企業から機密情報を盗もうとしたとして中国国家安全省の高官の男を訴追した。かねてより指摘されていた中国による国家ぐるみのスパイ活動を認定したんです、訴追した。そして、同じく十日の日に、米議会の公聴会で、FBI、あのアメリカの連邦捜査局のFBIのレイさんという長官がこういう証言をしているんです、中国のスパイ活動は広範で長期にわたっており、米国の脅威だ、こう言っているわけです。

つまりは、国家情報法という法律ができる前から、先ほどペンス副大統領の演説であったように、いわゆる技術の窃盗とか、こういうものが行われている。そして、アメリカの国家としても、国家ぐるみで訴追をし、そしてまた広範に長期間にわたって行われているという、FBIの長官が議会証言をしている、こういうことです。

それを踏まえて、やはり日本のこのいわゆる保秘、これは政府だけではありません、外交や防衛平成3011月だけではありません、国民全体の保秘から考えると、このオーストラリアが行った決定というのは重く受けとめなくてはいけないというふうに思いますが、河野大臣、どうお考えになりますか。

 

○河野国務大臣 今の中国の政治体制は日本の政治体制と大きく違うわけでございますから、企業と国家の関係というのもそこに規定をされるところが当然あり得るんだろうと思います。

そういう意味で、国民あるいは国家の安全を守るために、必要なところはしっかりと対応していかなければならないというふうに思っておりますので、この問題だけでなく、さまざまなことに関して、そこはしっかりと重く受けとめ、必要な対応はしっかりできるように対応してまいりたいと思います。

 

○前原委員 國重政務官にお尋ねしますけれども、これは二〇一九年に一部前倒しをするということですね、5Gの割当てというものを。今の問題意識を前提に、しっかりと対応してもらいたいと思うんです。これは安保委員会ですので、防衛大臣、外務大臣はお越しいただいておりますけれども、総務大臣はお越しいただいていません。これはやはり総務省として、しっかりこういった国民のプライバシーを守るという観点から、あるいは国家機密を守るという観点から、他国の例も参考にされながら、しっかりとした判断を下すということが総務省としては私は大変大事なことで、二〇一九年に前倒しをするといってもそれほど時間ないですよね。しっかりとそういうものを踏まえて決断をいただくということでよろしいですか。

 

○國重大臣政務官 お答えいたします。総務省においては、5Gの早期実現に向けて取り組みを進めているところでありますけれども、今委員御指摘のとおり、我が国の情報通信ネットワークの安全、信頼性、これを確保することが重要であることは言うまでもありません。

今後とも、諸外国の動向も注視をして、多層的なサイバーセキュリティー対策を進めつつ、二〇二〇年の、一部前倒しということもありますけれども、この5Gの実現に向けて対応をしてまいりたいと思います。

 

○前原委員 しっかりと対応をお願いしたいと思います。岩屋大臣にお聞きしますけれども、先般の中国共産党の大会で、いろいろなことが決まったわけです。注目されたのは、国家主席の任期がなくなったということがありましたけれども、もう一つ我々としては看過できないことがあったわけでありますが、それは、中国国家海洋局の海洋隊伍を、軍直属の武警部隊に編入するという機構改革をやっているわけです。

つまりは、日本は、例えば尖閣の警備というものについては海上保安庁が一義的に行うということです。そして、向こうは、今までは海警というものは、軍ではなかったけれども軍の一部になりましたということなんですが、このいわゆる非対称性が生まれたということと、そして、武器使用の警察比例の原則等々を含めて、このいわゆる機構変更によってどのような、全ておっしゃらなくていいですよ、全てをおっしゃらなくていい、言えないものもあると思いますから、どのようにこれを受けとめて、どういう万全な体制をとろうとされているのか、何か変更点があると思っておられるのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

 

○岩屋国務大臣 中国が、前原委員がおっしゃるような措置をとった、つまり海警というものを軍の傘下に加えたということは承知をしておりますが、現段階では、その海警の活動自体がいわゆる我が方の海上保安庁と大きく変わってきているかというと、それはまだそういうことではないんだろうと思います。

もちろん、船舶自体を大型化したり、さまざまなことに取り組んでいるようでございますけれども、現段階で、海警があたかも軍のように装備を整えて、また、そういう権能を新たに持つということにはなっていないんだと思いますが、いずれにしても、今後の動向はよくよく注視をしていかなければいけないというふうに思っております。

 

○前原委員 終わりますが、きょう私質問したのは中国についてでありますが、一番初めに申し上げたように、敵対をしたり対峙をすべきだということを申し上げているわけではないです。隣国ですから引っ越しもできませんし、仲良くしなきゃいけない。だけれども、これは河野大臣もおっしゃったように、やはり戦後七十三年間培ってきた世界のルールというものがあるわけです。そういうものを守ってもらわなきゃ困る。そして、守ってもらうために、しっかりとそれに対してまさにエンゲージしてもらう、言うべきことは言ってもらうということが私は大事だという意味で質問をさせていただきましたので、そういう観点から、中国とうまくコミュニケーションはとられながら、しかし、やはり正すべきところはしっかり正していくということで努力していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 

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