○前原委員 民進党の前原です。
まず、総理、そして財務大臣、外務大臣、訪米お疲れさまでございました。
短い期間の中での往復の中で、国民全般からすると評価の方が私は多いのではないかと思います。よかったという安堵感、こういったものが私は基本的にあるのではないかと思います。あれだけ大統領選挙の間に言いたい放題、人種差別、女性蔑視、そして日本に対しても自動車、為替、さまざまなことを言ってきて、それについて日米首脳会談で安倍総理にぶつけるんじゃないかと戦々恐々としていたところで非常に厚遇を受けられて、そういった問題については今回は出てこなかった。そういう意味では、国民も安心をし、ほっとしている面もあるのではないかと思います。
しかし、全ては私はこれからだと思います。総理が人間関係を構築されて、そしていろいろ話をされる環境をつくられるという努力には、私は御努力を多としたいと思います。
その上で、まず質問させていただきたいと思います。
トランプ大統領という方は、社会の分断、さまざまな分断をつくる人ですね。つまりは、人種差別をし、それについて賛成という人と反対という人が分かれる。あるいは、入国禁止についても明確に、いわば言ったことを実行して、そしてそれに対する反対者も出てくる。後でさまざまなことをお伺いしていきますけれども、つまりは、プロ・トランプとアンチ・トランプというのが極めてはっきりしている珍しいタイプの大統領だというふうに私は思います。
特に、安全保障面で日米関係の重要性ということは論をまちませんが、さはさりながら、こういうアンチも多い大統領と親密な関係になるということは、あわせて安倍総理にも厳しい目が向けられる、あるいは安倍総理は日本の総理大臣ですから日本国民にも厳しい目が向けられる、そういったリスクもお感じになりながら、このような言ってみれば親密な関係を構築するということの選択をされたのかどうなのか、その点についてまずお答えをいただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 日本の選択肢は幾つあるのかということだと思います。
日本は、安全保障環境が厳しくなっている中にあるアジア太平洋地域に位置しています。そして、北朝鮮は先般、弾道ミサイルを発射した。この弾道ミサイルを発射された際、それを共同で守るのは、ミサイルディフェンスにおいてもそうですが、米国だけであります。そして、残念ながら撃ち漏らしてしまった、それに対して報復する。この能力を持っている、あるいは報復するのも米国だけであります。しかし、安全保障条約五条にもありますが、必ず報復するのかどうか、これは常に大きな課題です。そこには信頼関係がなければそれは無理ですね。そしてそれは、首脳同士が信頼関係があると思われなければならない、少なくとも。トランプ大統領が必ずこれは報復するねという認識を持ってもらわないと、報復しないかもしれないと思うと、冒険主義に走る危険性が出てくると思います。
もちろん、そう簡単には起こらないことではありますが、万が一のことについて我々はそういう危険性を排除させていかなければならないという日本の立場としては、日本の主張としては、トランプ大統領と親密な関係をしっかりとつくり、そしてそれを世界に示していく、それしか私は選択肢はないと思っています。それがとるべき選択肢だと思っています。
同時に、これは意外と多くの人たちが理解をしているわけでありまして、行った日の朝七時四十五分から実は朝食会をやったんですが、ナンシー・ペロシ、民主党の下院のマイノリティーリーダーですね、彼女は非常にリベラルな方でありますが、わざわざ出張を取りやめてもらってこの会合に出てきていただいて、私はトランプ大統領ともハグをすることになりましたが、がっちりペロシさんからハグされて、安倍さん頑張ってね、こう言われたわけでございますから、日本の立場は多くの人たちに理解されている、このように思っております。
○前原委員 私が質問させていただいたのは、リスクというもの、そういうものを認識しながら、しかし、その上で、優先順位として今おっしゃったようなことの方がより重要だと考えておられるかどうか、その点を聞きたかったわけです。
もう一度お答えください。
○安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、我が国が置かれている環境を考えれば、私は、日本の国の責任者として、それがとるべき道だと考えています。
確かに、今、マスコミ等々で、トランプ大統領と近くなると、あなたは近いんだからと非難されるんじゃないのと、不買運動をされているものもありますね。しかし、私はそんなことは起こらないと思います。
今申し上げましたように、アメリカで最も有力なリベラルの女性リーダーも、まさに私にハグをしながら、頑張ってね安倍さんと。私は特別ハンサムというわけではありませんから。むしろ、日本のリーダーとしてこれをしっかりとアメリカとやっていくということ、日米の同盟を強化していくということは大切だということを彼女もよく理解している。
我々の予想以上に、民主党の議員も含めて多くの議員たちが出席をしてくれました。そしてまた、トランプ大統領との会話についてぜひ教えてもらいたい、電話会談でいいからという多くの要望が殺到しているところであります。また、メルケル首相は御承知のように懸念を表明されたわけでありますが、私もメルケル首相から三月に招待を受けておりまして、その際にはこの会談等についても話を聞きたいということにもなっているわけでございまして、むしろ日本が、分断されないように役割を担っていくという今大きな責任を担っているのではないか、このように思います。
○前原委員 選択肢ということをおっしゃいました。一つの、過去の日本の難しかった選択のお話をさせていただきたいと思います。イラク戦争のときです。
ブッシュ政権、日本の総理大臣は小泉さんでした。あのときは、イラクに大量破壊兵器があるんだ、大量破壊兵器があるからイラクに攻撃するんだ、それについて日本も協力をすべきなんだ、こういうロジックの中で、最後はどういう観点で小泉さんが協力をされたのか。全く今と同じロジックだったんです。
私は、当時民主党の防衛担当で、ワシントンに行きました。そのときの国務副長官がアーミテージさん。よく御存じだと思います、アーミテージさん。その方に、大量破壊兵器が見つかっていない、国連決議においてまずはそれを見つけることが義務とされている、イラクに対する攻撃については控えるべきだ、そういうお話をしたときにアーミテージ副長官がどうおっしゃったか。イラクの話をしているときですよ、北朝鮮の話をし出したんです。北朝鮮からミサイルを撃たれたら、あなたは政権与党になれば防衛庁長官だね、どうするんだ、こういう話がありました。
つまり、今のロジックと全く同じなんです。日本はやられたらやり返すことができない、だからアメリカの言うことは聞け、それがまさにイラク戦争から今までも変わっていないロジックじゃないですか。
日本というのは、今の状況で、安倍総理のおっしゃることについては一定の理解はしますよ、一定の理解はする。しかし、何十年、長い間ほとんどが自民党政権の中でそういう穴をあけてきたんですから、そういう穴を埋めるような努力をしていれば、まさに安倍総理がおっしゃった選択肢というのはもっと広がったんじゃないですか。そういうような選択肢をつくってこなくて、結局、アメリカにおんぶにだっこの状況というものをさらに強化してしまっている。これがまさに、今、我々自身が与野党を超えて考え直さなきゃいけない大きなポイントじゃないですか。
私は、この安全保障の問題というものについては、特に安全保障法制、先ほど、とうとうと与党の議員の中で、日米同盟関係をさらに強固にすることが日本の抑止力を高めることなんだとおっしゃったけれども、今の私の議論とあわせて考えたら本当にそうなんでしょうか。
むしろ、みずからのさまざまな能力、それは防衛力だけではない、ソフトパワーも情報収集能力も含めてみずからの国はしっかりと、まずはみずから自分の足で立って、自分の国を守れるという体制をとることがさまざまな選択肢をむしろつくることであって、今の状況の中でこれしか選択肢がないんだ、リスクは覚悟でうまくやることしかないじゃないかということにおいていえば、現実はそうかもしれないけれども、総理を四年やっておられるんですよ、四年。であれば、そういうことも含めて日本の脆弱性の穴というものをできるだけ小さくして、なくしていくことについても努力をされるということが本来の姿勢ではありませんか。
○安倍内閣総理大臣 基本的な考え方として、私は今の前原議員のお話は傾聴に値すると思っているんです。ただ、小泉総理がイラク戦争のときにおける武力行使を支持したのと、私がトランプ大統領と親しくなるというのは大分距離がございますから、これはちょっと同じではないと思いますが、しかし、いわば選択肢ということの議論の中では同じじゃないかということだと思います。
ちなみに、申し添えれば、サンクトペテルブルクでオバマ大統領から、シリアを空爆するから支持してもらいたいと私は言われました。そのときには、化学兵器を使ったという証拠を見せてくださいということを申し上げた。米国側は非常に不愉快だったと思います。首脳会談では私は支持するということは言わなかったんです。向こう側は、それはなかなかナショナルセキュリティーにかかわることだから示さない。示さないのであればイラクでの経験がありますから国民に説明できませんよという話をしたら、最終的には、実はいわば初めてと言ってもいいと思うんですが、ハードエビデンスを我々に示したので、私は支持すると。結果として空爆はしませんでしたけれどもね。
そこで、我々は努力を示さなければいけないと思っています。ですから、この四年間、防衛費については八・五%プラスになりました。十年間ずっとマイナスであったものが、〇・八%ではありますが、それプラスアルファして積み上がっています。それと平和安全法制という形で私たちの行えることをふやしてきた。
しかし、今、打撃力については米側が行い、基本的には我々は盾の部分を行っているわけでございますが、専守防衛あるいは憲法の許す範囲内において何ができるかという努力と検討というのは常に行っていくべきではないのかな、このように思います。
○前原委員 これから個別の話をしていきますが、安倍総理、ぜひ日本の総理大臣として、自分の国は基本的に自分が守るのが当たり前で、同盟関係にあるアメリカの大統領に極めて特異な方が出てきて、リスクがあるんですよ、これから。だけれども、そのリスクがある中で、これしか選択肢がないでしょうと堂々と話をされて、拍手が起こる自民党であっては困る、私はそう思いますよ。それを変えていく努力、そして選択肢を日本としてふやしていく努力、もちろんアメリカともうまくつき合っていく。
これは何度もここで申し上げたかもしれませんが、安倍総理が酷評される民主党政権においても、例えば武器輸出三原則、共同開発、共同生産、みずからの足腰を強くしましょうということの取り組みの第一歩を進めました。そして、新たな防衛大綱というものも言ってみれば北方重視から動的防衛力整備に変えるということもやりました。それと同時に、準天頂衛星、アメリカのGPSだけに頼らない、こういうようなことも含めて、ここはまさに今申し上げたとおりのことを、現実においては総理のおっしゃる選択肢がないんだということは、それはそうかもしれないけれども、長い期間において日本をどうしていくのかという議論をしたいんですよ、あわせて。そのことをしっかりと踏まえて、ぜひ答弁をいただきたいというふうに私は思います。
では、それを踏まえて、個別の話をさせていただきたいと思います。
先ほど、シリアの話、オバマ政権のときにされましたが、中東政策においてさせていただきたいと思いますけれども、トランプ大統領は大統領選挙の最中から、大使館をテルアビブからエルサレムに移すと表明されていますね。一月二十三日にはスペンサー大統領報道官が、意思決定するための初期段階にあると。そして、一月二十六日にはトランプ氏本人も時期尚早と述べておりますが、撤回するとは言っていませんし、ネタニヤフさんと電話会談をして、二月には会うという予定になっているということであります。
アメリカ大使館をエルサレムに移すということについて、総理はどうお考えですか。
○安倍内閣総理大臣 近日、ネタニヤフ首相が米国を訪問するということについて、トランプ大統領ともイスラエルとの関係についてお話をしました。結構突っ込んだ話もいたしました。イスラエルの中東和平における今後の見通し、あるいはイランとの関係、サウジとの関係等々についてお話をしましたが、今言われた件は、まさにこれはアメリカが決めることでございますから、私が言及する立場にはもちろんございません。
しかし、いずれにいたしましても、日本の立場というのは、従来から述べているように、二国家解決ということは明確にしております。そして、今中断をしている中東和平についても、日本も安倍政権において実は積極的な役割を果たしていきたいといろいろ考えているんです。そういうことも含めてさまざまな話をさせていただいたわけでありますが、今言われた点についてはコメントは控えさせていただきたいと思います。
○前原委員 それは驚いた答弁ですね。私は猛獣遣いになってくださると期待をしておりましたけれども、そのままだったら、猛獣に従順に従うチキンのようなものだと思いますよ。つまり……(発言する者あり)いや、当然、私はそれについてはノーですよ、今どなたかがおっしゃったけれども。当たり前ですよ、江藤拓さん。当たり前じゃないですか。
これは……(発言する者あり)いつもあなたが、菅原さん、うるさいんですよ。理事は黙っておいてください。黙っておいてください。安倍さんだって、そこで一々指さして言っているじゃないですか。黙っておいてくださいよ。
○浜田委員長 静粛に願います。
○前原委員 私なら、絶対にやめておきなさいと言いますよ。だって、これは、第四次中東戦争においてこれが問題になって、一九九三年のオスロ合意の中で、イスラエルとパレスチナの間で平和的に解決する、そのときに問題を決めるということになっているわけですよ。それを一方的にアメリカが認めるということになれば、現状変更じゃないですか。
そうすると、中東和平の構図はごろっと変わりますよ。第五次中東戦争が起きるかもしれない。起きた場合においては、我々が中東に依存している石油の価格、天然ガスの価格は高騰しますよ。
我々の生活にも直結する話じゃないですか。地球の全体の安全にもかかわる話じゃないですか。それについて自分がコメントする立場にないというのは、私は猛獣遣いとして大したものだなというふうに思っていましたけれども、まさに猛獣に従順にとにかく従っていくチキンと言われても仕方がないと思いますよ。もう一度お答えください。(発言する者あり)
○浜田委員長 静粛に願います。
○安倍内閣総理大臣 ポチとかチキンとかいろいろおっしゃったんですが……(前原委員「僕はポチとは言っていない」と呼ぶ)ポチはこっちの方から。
私が申し上げたのは、私はこの問題についてはコメントを差し控えたいと言ったわけでありまして、中東問題についてどういう話をしたかということも含めてコメントは差し控えさせていただきたい。今まさに前原さんがおっしゃったことは最も微妙な問題であります、中東和平を議論する中においても。それについて、私と大統領との一々のやりとりをここで紹介させていただくということは差し控えさせていただきたい。
つまり、これからトランプ大統領がネタニヤフ首相とどういう話をするか、どういう考えで臨むかということも私は聞いています。ですから、今言ったことをここで私がコメントするというのは、そうしたものに対していわばマイナスの要素になるというか、まさにこれからトランプ大統領がネタニヤフ首相と話をするわけでありますから、この二人がまずはどういう話をするかということだと思います。また、当然、トランプ大統領もパレスチナ側とも話をしていくんだろう、こう思います。
ですから、それぞれ、例えばパレスチナ側もこっちへ持ってこなきゃいけないし、ネタニヤフ側もこっちへ持ってこなきゃいけないんですね。それまでにいろいろな球を持っておく必要があるんだろうな、こう思いますよ。こう言ったけれどもこれはやめるし、やめるからこっちへ来いよとかという、全体像の中で考えなければいけないわけでありますから、一々に我々が反応する、あるいは、私たちがやっている中東和平工作そのものであれば別でありますが、まさに米国がやろうとしていることについて今私がコメントするのは差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
○前原委員 質問の趣旨をちょっと取り違えておられるような気がします。アメリカの考え方をここで、トランプさんと話をされたことを開陳してくださいなんて言っていないんです。
日本国の総理大臣として、この中東和平について、だって、今まで日本は大使館をテルアビブに置いてきたでしょう。今、一つもないですよ、エルサレムに置いている国は。しかし、それをアメリカは、トランプ大統領がそういうことをおっしゃったということについて、別に総理とトランプ大統領がどういう話をされたからかということを聞いているんじゃないです。話の内容が今後のさまざまなことに微妙な影響を及ぼすというのは総理のおっしゃるとおりでしょう。
日本国の総理大臣として、中東和平、そしてそのスタンスについてはどう考えているのかということを聞いているんですよ。何が問題になりますか。日本国の考え方を言って何の問題がありますか、中東和平に。それを教えてください。
○安倍内閣総理大臣 日本は日本の立場として、エルサレムではなくてテルアビブに置いている。多くの国々もそうです。そして、米国は実際にそれを移し始めたわけでもないし、国として正式に決定したわけでもないんですよね。これは、そういう発言があっただけであります。それに一々我々が反応する必要というのはないんだと思っているんですね。
しかも、その発言に対して、ネタニヤフ首相がどう考えているかということもわかりませんよね、今のままでは。世の中はそう単純じゃないんですよ。エルサレムに持っていく、どうぞとなったときのこともみんな考えているわけですから、ネタニヤフ首相もそういう反応は今していない。今していないですよ。明確にしていないですよ、ネタニヤフ首相はしてないんですよ。それは、そのことによる影響を考えているわけであります。
一方、入植を続けている。トランプ大統領が就任した後、入植活動についていわばある種肯定的とも思われるコメントを発したにもかかわらず、入植活動を行ったイスラエルを実は非難しました。そこで結構みんな驚いたんですね。驚いたわけです。ということのように、世の中は、国際政治というのは単純ではありませんから。
その中で、まさにいろいろなことが動いている中において、我々が殊さらそれをコメントする必要というのは、どういう意図でということは、これからさまざまなやりとりがありますから、それは恐らく、ある程度、一般の方々よりも私は知っていると思います、内実において。
ですから、それについて今私がコメントするということの意味、何かメリットがあるか、あるいは、私がそう言ったからといって、それはまさにそうなっていくかということでもないわけでありますから、私は総理大臣として、一評論家であれば言われればいいんだろうと思いますよ、コメントしない。(発言する者あり)今こちらから、後藤さんからもやじがありました、玉木さんからもやじがありました。これはタウンミーティングじゃないんですから、こういうやりとりじゃないんですよ。ですから、やはりこういうやりとりの方が私はいいんだろう、これは前原さんも同じだろうと思いますね。
という意味で、重ねて申し上げますが、米国がどこに大使館を置くかということは基本的に米国が決めることであります。
そこで、もし我々がそれをやめろということであれば、こういう場で言うのではなくて、同盟国ですから、面と向かって、フェース・ツー・フェースで、それはやめた方がいいと当然申し上げるわけであります。
○前原委員 私は答弁を逃げておられると思いますよ。
つまり、世界の情勢が複雑なことは、申しわけありませんが、安倍総理に言われなくても、国会議員二十三年間、同じ年限やらせていただいて、いろいろな切磋琢磨もさせていただく中で、私も認識をしているつもりです。
では、ここで、日本の総理大臣が、アメリカの大使館が移ることによってどういう問題が起きるか、そして世界にどういう影響が起きるかということについて懸念をする、そしてそのことについて、まさに親しい関係をつくった、あるいはつくろうとしているトランプさんに対しては、自分はこういうふうに物を言うんだと、姿勢をあらわすことが日本国の総理大臣としてあるべき姿だと私は思いますよ。
それを言わないことが何かいいことだということ、黙っていることはいいことだということは私は全く思いませんし、それは国民に対しての説明責任にもなっていないし、我々日本国の代表として、世界に対して堂々と私は立場を言っていただきたい。非常に残念な気がいたします。
次に……(安倍内閣総理大臣「やらないから」と呼ぶ)そうですか。今、大事なことを言われました、やらないからとおっしゃって。(発言する者あり)はい、わかりました、わかりました。
時間が限られていますけれども、次に行かせていただきますが、一つは対ロ関係ですね。総理、談笑しないで聞いてもらえますか。
まず、日ロ首脳会談もお疲れさまでした。新たな領土返還に向けたアプローチをされようとしているということについては、私はこれも一定の評価をさせていただきたいというふうに思います。島が返ってこなかったから失敗だ云々かんぬんということを、そんなに軽々に私は言うつもりはありません。それは大変でしょう、プーチン大統領も来年大統領選挙ですから。そして新たな六年間が始まる、その中で四島の経済協力活動というものを行われるということの中で、しっかりと、この間、辻元さんへの答弁の中で自分の手で必ず平和条約を結ぶとおっしゃったので、ぜひ私は頑張ってもらいたい、このように思います。
その上で、幾つかお伺いしたいことがあります。
今回、尖閣が安保条約第五条の適用範囲ということを日米間でも確認されましたが、北方領土が返還された際には、これは日本の領土、施政下に置かれるわけですから、日米安保条約の適用範囲になるということでよろしいですね。
○岸田国務大臣 日米安全保障条約上、日本の施政下にある地域に対しましては安保条約五条が適用されるということは間違いございません。
○前原委員 返還をされた島々について安保条約が適用されるということでよろしいんですね。
○岸田国務大臣 条約上の解釈として、施政下にある地域に第五条が適用される、これは間違いございません。
○前原委員 あわせて、ロシアの問題で、トランプ大統領はロシアとの関係改善に並々ならぬ意欲を持っておられますね。私はそれも一ついいことだというふうに思います。ISの掃討作戦をどうしていくのかということも含めて、さまざまな取り組みをやられるということは、私は一つのいい方向性ではないかというふうに思っておりますが、他方で気になることもあります。
大統領選期間中、ロシアはウクライナに入ろうとはしない、あるいはクリミアの人々がロシアと一緒になることを望んでいると聞いたというふうに、ある意味でクリミアをロシアの領土として認める方向性で発言されているということがあります。
これについて総理はどのような認識をお持ちですか。これについてもしっかりと、答える立場にないと言わずに、お答えください。
○安倍内閣総理大臣 今のはトランプ大統領の発言ですか。トランプ大統領のクリミア等に対する発言でありますが、先ほどのイスラエルのエルサレムにおける大使館の移転等々についてですが、しっかりとまだ外交チームが完全にできていない中での発言であります、それはそう簡単なことにはならないと私は思っているということは申し上げておきたいと思いますが、もう既にG7において、一方的な現状変更は許されないということでありまして、その上において制裁を行っており、我々も制裁を行っている、こういうことであります。
○前原委員 その考えを日本国として守っていかれるという御答弁だったと思います。それについては確認させていただきたいと思います。
さて、為替についても今回の日米首脳間でまとめられた共同声明に記述があります。こういった共同声明が書かれています。日本及び米国は、世界のGDPの三〇%を占め、力強い世界経済の維持、金融の安定性の確保及び雇用機会の増大という利益を共有する、これらの利益を促進するために、総理大臣及び大統領は、国内及び世界の経済需要を強化するために相互補完的な財政、金融及び構造政策という三本のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認したと記述があります。
ということは、今まで日銀が行ってきた異次元の金融緩和については是認をされたという認識でよろしいんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 この中においては、相互補完的な財政、金融及び構造政策という三本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認したとあります。この三本の矢、いわば我々が進めている三本の矢が認められているわけでございまして、その中には金融政策、日本銀行が行っている金融緩和政策が入っているのは当然のことであろうと思います。
○前原委員 この金融政策というのは、直接的な通貨安政策ではありません。結果として通貨安になると言われるものであって、アメリカに通貨安政策だと言われる筋合いのものではない。アメリカもリーマン・ショックの後に数次にわたって、三回ですか、QEを、量的緩和を行ってきたということでありますから、そういう意味では、この共同声明では日本銀行の金融緩和は認められたというふうに認識しているということを安倍総理はおっしゃったわけであります。
日銀総裁、お越しいただいていると思いますが、大統領就任の前後からこういう発言が行われています。
例えば、ムニューチン次期財務長官は上院の公聴会で、強いドルを維持し、米国の雇用を創出する貿易政策を実行していくと表明した後に、そのときには強いドルなんだなということでドルが上がって円が下がったんですけれども、過度に強いドルは短期的にマイナスの影響を与える可能性があるということで、また円が高くなる。
また、一月三十一日に薬品業界大手トップらとホワイトハウスでトランプ氏が会談した際に、他国の通貨供給量、通貨安誘導によって米国が損害をこうむっていると述べた上で、中国が行っているし、日本も何年も行ってきたという批判をして、これについてマーケットが反応していますね。
つまりは、日銀の金融政策が変わっていないのに長期金利や為替が動くということで、いわゆる口先介入と言われるようなものについて、日銀は、長期金利が今上がっている、イールドカーブ全体も上がっていることについてどう考えておられるのか、あるいは何らかの対応をすべきだと考えておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
○黒田参考人 委員御案内のとおり、昨年の九月に、それまでの日本銀行の量的・質的金融緩和政策あるいはマイナス金利政策について総括的な検証を行いまして、新たなフレームワークとして、いわゆる長短金利操作つきの量的・質的金融緩和という形で、イールドカーブコントロールというのを入れました。その考え方は、基本的に、短期の政策金利をマイナス〇・一に、そして十年物国債の操作目標をゼロ%程度というふうに置くことによって適切なイールドカーブを実現するということでございます。
その意味は、あくまでも、日本経済のデフレからの脱却、そして二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという観点から行いますので、国際的に金利が上がったとかいうことだけで何か我が国のイールドカーブコントロールを変えるということはございません。現に、十年物国債の金利は、おおむねゼロ%程度で推移しております。
○前原委員 日銀総裁、もう一点お答えをいただきたいわけですが。
もうすぐ、日銀総裁、岩田副総裁も、就任されて四年ですね。二年で二%の物価上昇をやるということをおっしゃってスタートして、岩田副総裁に嫌なことを思い出させますが、できなかったらやめるとおっしゃっていたわけでありますが、今、CPI、物価上昇がマイナスに落ち込んでいるわけですね。
そこで、岩田副総裁に意地悪な質問をしようと思いますけれども、いたしませんので、日銀総裁にお答えをいただきたいというふうに思います。
安倍総理の指南役の一人と言われているエール大学の浜田教授が、デフレは貨幣現象であると言っていたけれどもそれは違っていた、そして、これだけではだめで、財政出動をしなきゃいけないんだということを言い始めているんですね。クリストファー・シムズさんという教授の、ノーベル経済学賞をとった人なんですけれども、違う分野でとられたので、この考え方でとられたわけではないんですが、その方のことを引用して、物価上昇ができていないのは財政出動ができていないからだと。
シムズ理論のところを、これはちょっと財務大臣にもごらんいただきたいんですけれども、つまりは、簡単に申し上げると、日本は借金がいっぱいあるけれども、借金があることは忘れてください、さらに借金をしますけれども、その借金をすぐ返さなくていいですよ、そのことについては言ってみれば頭から拭い去ってください、そうすれば、国民はそれを信用して物を買って物価が上昇する(配布資料)。
簡単に言えばこういう話なんですが、このシムズ理論というものについて、日銀総裁、どう考えられますか。
○黒田参考人 実は、私、昨年の夏のジャクソンホールのコンファレンスでシムズ教授がこの話をされた場所におりまして、その際は、ジャクソンホールのコンファレンスというのは各国の中央銀行総裁がたくさん出席されている場でございます、大変印象的なお話をされたというふうに思いました。
ただ、御承知のように、物価水準の財政理論というのが、たしか二十年ぐらい前だと思いますけれども、出まして、その基本的な考え方というものは、政府債務というのは最終的には通貨発行益を含む財政黒字でファイナンスされなければならないという、非常に長い、予算制約式をベースにしまして、政府と中央銀行と民間主体の相互作用が物価水準を決定するという過程を理論的に示したものでありまして、ある意味で非常に興味深いわけですけれども、そこから財政政策が主導的に物価水準を決定するというのは、いろいろな前提を置かないと出てこない話でございます。
したがいまして、ジャクソンホールでお話を伺ったときの各国の中央銀行総裁の認識も、理論的には興味深いけれども、それぞれの国の物価水準の決定に当たって金融政策が引き続き非常に重要なファクターであるということは変わりなかったと思います。
○前原委員 私も、これで金融がきかなかったから、物価上昇について、次はいろいろな前提を置いて、何か、期待に働きかけるというのは私はよくわからなかったんですけれども、それと同じ、あるいはそれ以上のレベルで意味がわからない理論だなというふうに思いまして、同じ認識でよかったというふうに思います。
そして、財政について、私は、財務大臣、あるいは石原担当大臣にもお越しをいただいておりますので、少し問題意識を共有させていただきたいと思うんですね。
これは何のグラフかといいますと、中長期の経済試算と債務残高対GDP比と言われるものであります(配布資料)。上のグラフがそのものでありますけれども、いわゆるベースラインケースというのは、経済が余りうまくいかなかった、その場合に、この赤い折れ線グラフで書かれているように、借金がどんどんどんどん上がっていきますね、対GDP比が上がっていきますねということ。経済再生ケースと言われるものについては、経済はうまくいきました、名目三%、実質二%、こういうものが達成されてうまくいきました、そうすると、どんどんどんどんこの青い折れ線グラフのように対GDP比は下がっていきますよ、こういうようなグラフになっているんですが、私は、内閣府の担当大臣もさせていただいて、この二〇二五年以降のグラフを、何度出してくださいと言っても出してもらえないんです。出してもらえない。結論から言うと、出してくださいという話なんですが。
ここに、黄色で、債務残高対GDP比が減少する条件というものを書かせていただきました。これについては政府にも確認をしてこれを書かせていただいておりまして、この数式が当てはまるということは前提になるわけでありますが、ちょっと上のグラフで、経済再生ケースというものを見ていただいた場合に、実は二〇二三年から名目GDP成長率と名目長期金利が逆転するんです。つまり、経済が再生してくると、成長率以上に名目長期金利が高い伸び率になってくるんですね。
そうすると、今、国だけで九百兆ぐらいの借金がありますから、この借金が、大体百兆ぐらい、毎年借りかえをしておりますね。そうなってくると、どんどんどんどん、今は金利が低いけれども、経済成長を前提とすると金利が上がってくるわけです、借りかえていくと。そうなると、これだけの長期金利を全てこの金利に当てはめることはありませんけれども、若干低目なものが出ますが、だんだんだんだんこれに追いつく形で金利が上がっていきます。その場合に、PBの黒字化をしても、この二〇二五年以降は経済再生ケースでも対GDP比は上がっていくんじゃないですか。だから、二〇二五年以降のグラフを出していないんじゃないですか。
石原大臣、お答えください。
○石原国務大臣 委員御承知のとおり、長くなればなるほど指数の変化率がどうなるかということを、前提値を置かなければ、先のものは出ないと思います。
委員が御指摘されたとおり、経済がよくなれば、間違いなく金利は上がっていくということになる。名目の金利と名目の成長率が逆転すると債務がふえていくということも、そのとおりだと思います。
しかし、逆を見ていただければわかりますように、経済を再生させる、すなわち経済再生しない限り、実はグロスの借金というものは減らすことができない。これは、十年間ということを経済再生計画の中でつくったから十年間であるわけでございまして、これが二〇二〇年になれば、またそこから十年間のものを同じ指数を使ってつくることは可能だと思います。
これはあくまでも経済財政政策の中で二〇一五年に決めまして十年間というふうに見ている、そのとおりだと思います。
○前原委員 私は、単純に、実務的に、五年ごとにですから仕方がないですというお答えを聞きたかったのではないんです。問題意識を共有してもらいたかったわけです。
つまり、繰り返し申し上げますが、二〇二三年から成長率と名目金利が逆転するんですね、経済再生ケースでは。だって、今は大体ベースラインケースと経済再生ケースの間でしょう。間でいくと、これはまた借金が拡散してきますよ。つまりは、PB黒字化もなかなか難しい、二〇二〇年の。
ですけれども、それ以上に、経済再生ケースでいったとしても、このグラフだったら減っていっているように見えて、これだったら安心だね、だったら経済再生をやらなきゃいけないねということになりますが、この先のグラフも、私は十年出せと言っていないですよ、当てはめるということは簡単ですよ。つまりは、あと二、三年先まで見通した場合に横ばいになる可能性もある、あるいは若干上がる基調になるかもしれない、その傾向ぐらい見えるでしょう。
そのことにおいて、財政政策というもの、つまりは歳出改革、歳入改革を経済成長とあわせてもっとやっていかなきゃいけないという危機感を我々国会議員は共有しなきゃいけないんじゃないですか。その材料を出してほしいということを申し上げているわけです。
いかがですか、出していただけませんか。
○浜田委員長 石原担当大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。
○石原国務大臣 基礎的な認識として、名目の金利が成長率よりも大きくなれば、委員の御指摘のとおりであるということは認めさせていただいておりますので、共通認識を持っております。
先ほども申しましたけれども、指数を同じものを置けば同じものを出すことができますので、要するに二年、三年先のことでございますね、それは検討させていただきたいと思います。でも、同じ指数じゃないと確実性が、どこまで確かであるかということは見きわめさせていただいた上で、検討させていただきたいと思っております。
○前原委員 私が申し上げたかったのは、四年たって、二年で二%の物価上昇もできない、そして今マイナスになっている、そうすると、財政政策だということも言い出している人たちがいる。日銀総裁は明確にそれは否定をされましたけれども。
つまりは、二〇二〇年でも、うまくいって八・三兆円、うまくいかなくて十一・三兆円(配布資料)、こんな経済成長は無理ですよ。財政の意味での歳入歳出改革をやらなきゃいけない。それをしっかりと、先ほど申し上げたように、再生ケースであったとしても二〇二五年以降はまたいわゆる対GDP比が上がっていく、財政が発散していくおそれがあるんだという危機感を持たないといけないということを私は申し上げて、質問にかえさせていただきます。
ありがとうございました。
(議事速記録より)