○前原委員 おはようございます。民進党の前原でございます。
まず、安倍総理に、安倍政権の外交防衛政策に対する基本的な考え方を伺いたいと思います。
まず、日ロの関係から伺いたいと思います。
私は、戦後七十一年間平和条約が結ばれていないということ、これをしっかりと解決していくという総理の決意、そしてまた、首脳間での信頼関係をつくって、そして問題解決の政治的なリーダーシップを発揮するというアプローチ、これについて私は同意をいたします。その上で、幾つか今後の日ロ交渉の中で確認をさせていただきたい点 について質問させていただきたいと思います。
まず、ウクライナの問題についてでございます。
外務大臣談話が出ていることについて少し紹介をさせていただきますけれども、平成二十六年三月十八日に外務大臣談話として、ウクライナ・クリミア自治共和国で行われた住民投票は、ウクライナ憲法に違反をし、法的拘束力はなく、我が国はその結果を承認しません、そしてまた、我が国として、ロシアが、国際法を完全に遵守し、ウクライナの統一性、主権及び領土の一体性を尊重して、クリミアの独立承認を撤回すること、クリミア併合に踏み出さないことを強く求めますといった考え方に変更はないか、領土交渉にこれを絡めることはないか、総理にお伺いします。
○浜田委員長 岸田外務大臣。
○前原委員 交渉されているのは総理ですから。いや、時間がもったいないので。外務大臣はもうおっしゃっているので。総理。
○浜田委員長 岸田外務大臣、手短にお願いします。
○岸田国務大臣 今御紹介いただきました我が国の立場、これは変更はございません。
○安倍内閣総理大臣 ただいま外務大臣が答弁したとおりでございます。変更はございません。
○前原委員 現時点で変更はないということを私は伺っているのではなくて、領土交渉に絡めることはないかということを、だから総理に伺いたかったんです。お答えください。
○安倍内閣総理大臣 領土交渉においては、まさに北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するという基本方針で交渉に臨んでいくということであります。
○前原委員 いや、私の質問は、後で四島の帰属の話は伺います、領土交渉の中にこのクリミアの問題を絡めるということはあり得るのかということを聞いているわけです。
○安倍内閣総理大臣 日ロ交渉の間においては、これはもう既にプーチン大統領に私からはっきりと申し上げていることであります。
クリミアにおいては、いわば国土と主権の一体性の観点からも、いわば武力によって現状変更を行ったわけでありますから、ことしは日本はG7の議長国でありますが、G7としては、国際社会とともにそれをリードしながら制裁をしているわけであります。日本も制裁を行っている。
しかし、制裁を行っておりますが、これについては、しっかりとミンスク合意を完全に履行するようにということを、プーチン大統領にもロシア側にも申し上げております。 それと、日ロの平和条約については、これはしっかりと交渉を行っていこうと。こちらでやっていくことを、いわば我々が制裁をしているからといって平和条約交渉が滞るということがあってはなりませんよということは申し上げているところでございますし、その考え方については共有されているというふうに考えております。
○前原委員 私の質問にまだお答えいただいていないんです。
制裁については、おっしゃることについては理解をしています。領土交渉について、領土問題、クリミアの問題を絡めることはありませんかと聞いているんです。それについてイエスかノーかでお答えをいただきたいんです。
○安倍内閣総理大臣 クリミアの問題も、プラス、今、東部地区で、いわば、残念ながらまだミンスク合意が東部地区においても履行されていないわけでございまして、これを絡めるというのはどういう意味でおっしゃっているかということを十分に私も理解できませんが、つまり、領土交渉の中でクリミア問題について話をするということはございません。これはもう明確にしておきたいと思います。
首脳会談でありますから、いろいろな多岐にわたった話をします。その多岐にわたった話の中において、私の方から、ノルマンディー・フォーマットに従ってこのミンスク合意をしっかりと行う、双方が。これはロシア側だけではなくて、ウクライナ側もしっかりとこのミンスク合意を行うようにということを言っているわけでありますが、その話はその話でいたします。
他方、北方領土の問題についてお話をし、そして平和条約の問題についてお話をしているわけでございまして、その中においてクリミアの話をしたということは、もちろんこれはないわけであります。
○前原委員 多くの国民の皆さん方が理解されていると思うんですが、今、世界の中で、我々に対する挑戦というのは、力で世界の秩序を変更しようとしているゲームチェンジャー、ルールチェンジャーが出始めている。
一つは、ISですよね。自分たちのイスラム国をつくると言っている。それから、南シナ海での中国。これはこの間、国際仲裁裁判所が中国の考え方を非としたわけですね、ノーとしたわけですけれども、しかし、この南シナ海での海洋進出はとまっていないということで、力で現状変更を加えようとしている。クリミアについても、これはロシアが力によって現状変更したということを確認されているわけですよね。
つまり、私が申し上げているのは、それは領土交渉は領土交渉でしょう。しかし、そのロシア側の立場をおもんぱかるような、つまりは、この四島の問題を解決するに当たって、ゲームチェンジャー、法の支配というものが大事である、これは所信表明演説でもおっしゃっているんですよ。こういうものを、原則を曲げるということはないですねということをお伺いしているわけです。
○安倍内閣総理大臣 それはもちろん、原則を曲げるということは全く考えてもいないわけであります。何といっても日本はことしはG7の議長国でございまして、伊勢志摩サミットにおいては、まさに私は議長としてしっかりとこの問題、ミンスク合意をロシアにもしっかりと履行させなければならないということを強く申し上げているわけであります。
そしてまた、おととしのサミット、また昨年のサミットにおきましても、私が強調したのは、ウクライナで起こっていること、あるいは南シナ海で起こっていること、これは両方とも、まさに今、前原委員がおっしゃったように、現状変更の試みであって、それは認めるわけにはいかないというのが日本の一貫した不変の立場であるということを、日本が既に、もう私自身が主張しているわけでありますから、私が率先してそれを変えていくということはないわけでありますし、また当然、他のG7の国々も、これは日本、また私に対しての信頼は揺らいでいない、このように確信をしております。
○前原委員 確認をいただいたと思っております。
次に、アメリカとの関係について、この領土問題についてお話をしたいと思います。
これは総理も恐らく肌でお感じになっていると思いますけれども、知日家あるいは親日家の中でも、ロシアの問題に対しては非常に厳しいですよね。シリアでのアサド政権に対する考え方が全く違うということと、停戦合意が破綻をしてしまっているということがありますし、また、先ほど申し上げたウクライナの問題についても極めて厳しい目つきがなされているということがあります。
アメリカとはどういう議論をされているのかということをお伺いしたいわけでありますが、その前提として、私の歴史認識を申し上げると、一九五六年、日ソ共同宣言が行われたときに、このときにアメリカは、二島でまとめようというような考え方が日本の中にもあった、あるいは旧ソ連にもそういった考え方が主流であった、しかしながら、アメリカがこれに対しては異議を申し立ててきているということを私は認識をしております。
ちょっと一枚目のパネルをごらんいただきたいと思います(配布資料)。
総理、一枚目の図表をごらんいただきたいと思いますけれども、これはサンフランシスコ講和条約と言われるものでありまして、二十六条、「日本国が、いずれかの国との間で、この条約で定めるところよりも大きな利益をその国に与える平和処理又は戦争請求権処理を行つたときは、これと同一の利益は、この条約の当事国にも及ぼさなければならない。」
これは外務省のホームページから引用させていただいたものでありますけれども、こういったサンフランシスコ講和条約を持ち出して、サンフランシスコ講和条約では、アメリカは、四島が日本のものである、つまりは、放棄した千島列島には四島は入っていないということについては、それは理解していますよ、コミットメントしていますよという立場をとってくれたわけですね。
にもかかわらず、二島でまとめるということになれば、それはこれの、条約に反することになるんではないかということの中で、その当時はまだ沖縄は返還されていませんでしたから、そういったこともちらつかせながら、この二十六条というものを持ち出したという経緯があるということであります。
まず、外務大臣、事実関係だけ伺いますが、このサンフランシスコ講和条約二十六条というのは今も生きていますか。
○岸田国務大臣 御指摘のサンフランシスコ講和条約二十六条ですが、これは同条約に署名しなかった国と我が国との間に後日締結される二国間の平和条約の締結について規定したものです。
そして、具体的な要件、幾つか書いてありますが、結論から申し上げますと、まず、対象となる国、これは昭和二十六年の政府答弁で明らかにしています。これは七カ国にまず限定されていますし、加えて、もう一つのポイントとしまして、この条約の最初の効力発生の後三年間で満了するという規定がありますので、結論としまして、今はこの条約の条項は効力を持っていない、このように考えます。
○前原委員 これは法的なことですので、後でまた細かく詰めたいと思いますけれども、それは前段の部分をおっしゃっているんでしょう。二十六条というのは前段と後段があって、後段のところを指しているわけですね。しかも、一九五一年のサンフランシスコ講和条約を結んだ後に、一九五六年ですよ。しかも、今大臣おっしゃったように、ソ連はサインしていないんですよ、サンフランシスコ講和条約に。結局、サインしなかった。参加していたけれども、サインしなかった。にもかかわらず、アメリカはこれを持ち出して、結果的には、そのときは冷戦ですよ、時代背景が違うというのはありますけれども。
私が申し上げたいことは、アメリカとしっかり話をしてこなければ、こういうようなことも過去にあった。一九五六年に二島でまとまらなかった最大の原因は、アメリカの存在だと私は思っておるわけです。
今回の四島の問題について、安倍総理、アメリカとどういう話をされていて、そして、ロシアも大事だしアメリカも大事な国ですけれども、同盟国であるアメリカというのは最も重要な国ですよね、こういう国とどういう話をしながら四島の問題を解決されようとしているのか、そのことについてお答えください。
○安倍内閣総理大臣 日ロの平和条約については、これは当然日本が主体的に判断するものでありまして、基本的に、米国がこれをやりなさい、あるいはこれはだめだということではありません。日本が交渉し、主体的に判断するわけでございます。その姿勢は安倍政権の基本的な姿勢であります。
同時に、米国は同盟国でありますから、当然、米国とは、日本の外交姿勢、外交方針については緊密に連携をしているわけでありますし、政策対話を行いつつ、日米が協力してさまざまな物事に対応していくのは当然のことであろうと思います。
日ロの交渉の一々、全てについて米国と協議するということはございませんが、基本的な考え方について米国と話をするということについては、これは当然同盟国として行わなければならない、このように考えております。
今までも日ロの交渉について、例えば十二月のプーチン大統領の来日についても、オバマ大統領とも話もしておりますし、先般、ニューヨークでバイデン副大統領と話をしたときも、私の方からも説明を、どういう考え方でプーチン大統領の訪日を実現していこうとしているのか、どういう平和条約交渉を進めていこうという私の考え方について説明をしているところでございます。
基本的に、その説明は当然了解をされているというふうに考えております。
○前原委員 首脳同士あるいは副大統領との会話の中で承認されていると今明言されたわけでありますけれども、私が感じている雰囲気では、なかなかそんな簡単な、ぜひ進めてくださいという雰囲気ではないということは、わかっておられると思いますけれども、伝えておきたいと思います。
その上で、大統領選挙が行われていて、そして、山口にプーチン大統領が来られる十二月というのは、まさに大統領選挙が終わっていまして、一月から新たな政権が始まりますね。総理には釈迦に説法ですけれども、一月から政権が始まって、そして、ごろっと政権のポリティカルアポインティーの方々がかわるわけですね。そして、任命にも議会承認ということで時間がかかるということで、大体動き出すのに半年ぐらいかかるというふうに 思います。
私は、こういう政権移行期に、十二月にまとまるかどうかわかりません、それはまさに総理がプーチン大統領とどういう話をされるかということでありますが、私が一国会議員として、また、外交、安全保障にコミットメントしてきた、強い関心を持つ議員として、こういうときに余り物事を進めるべきではないのではないかという思いを私は持っているんですね。
つまり、アメリカと連携が大事だということをおっしゃった。そして、今もオバマ政権とは連携をとられているということをおっしゃった。であれば、こういう新たな政権ができて、動き始めてからいろいろな相談をしていく。もちろん、安倍総理がおっしゃったように、一義的にはこれは日本の国が自分で決めることでありますけれども、やはり外交ですから、さまざまな派生が出てきますよね。そういうときに、やはり物事を決めていくということについては、アメリカの政権が安定期に入るというところが私は大事だと思いますけれども、総理はどう思われますか。
○安倍内閣総理大臣 国際政治というのは、一国の政治状況とは別に動いていくものであります。
日本とロシアとの関係において、七十年間動かなかったものを動かしていくということはそう簡単なことではないわけでございまして、私も、プーチン大統領と今まで十四回会談を重ねてくる中において、信頼関係を構築しつつ、この七十年間の平和条約がないという状況は異常だということについては認識を一致し、そして、この問題を解決していくことが両国の未来にとって正しい判断であり、まさに両国の可能性を顕在化していくために必要である、そういう認識をやっと双方が構築してきたところでございます。
他方、米国は米国の国内の政治状況というのがあるわけでありますが、米国の国内の状況に合わせてしか日本が交渉できないんだということになれば、これはもういわば、相手の立場になれば、では、そういう国とは話すよりも、だったら、日ロ交渉をするんだったらアメリカと話をしようかということになってしまうわけでありますから、それは恐らくもう前原委員はよくわかっておっしゃっているんだと思います。
しかし他方、そこは、新しい政権ができて、その半年の間に外交方針等をどんどん決めていくんだと思いますよ。そこでは、我々はしっかりと、新しいチーム、政権移行チームに我々が進めていること等をしっかりと説明していきたい、このように考えております。
○前原委員 主体性を保つことと同盟国との連携をしっかりとるということの中でさまざまな外交をやっていかなくてはいけないということは、総理が一番よくわかっておられると思います。
私も、二十三年間国会議員をやらせていただき、アメリカとの関係を中心にやってきましたけれども、まあ、そんなに簡単な国ではないですね。
これは、先ほど総理がおっしゃったことについては、もちろん総理の御判断でありますけれども、私の皮膚感覚として、先ほどの、政権移行期に余りばたばたと決めるということについては、私は余りいいとは思わない。もちろん、ロシアとの間合いというのもあるというのはありますけれども、そこについては、私は、アメリカとの関係というのはそれほど軽視されていないとは思いますけれども、そのことはしっかりと伝えておきたいとい うふうに思います。
その上で、この四島の帰属、ちょっと二枚目をごらんいただきたいんですが(配布資料)、外務省からいただいたペーパーなんですけれども、この北方領土の基本方針、問題解決の基本方針は、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、こういうことでありますが、帰属の問題というのは、これは外務大臣でも官房長官でも結構なんですが、日本への帰属ということでよろしいですよね。
○岸田国務大臣 四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結する、この方針は、今申し上げたのが基本方針の全てであります。四島の帰属ということであり、それ以上のことは何も触れていないと考えています。
○前原委員 ホームページにも書かれていますけれども、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これは東京宣言、一九九三年を踏襲されているわけですけれども、その後に、北方四島に対する我が国の主権が確認されることを条件としてということも書いてある。
つまりは、再度伺いますよ、この四島の帰属というのは日本への帰属ということですね。簡潔にお答えください。
○岸田国務大臣 御指摘の点については、四島の帰属の問題を明らかにする、それ以上のことは申し上げていないと考えます。
○前原委員 ちょっと私の認識と違いますし、今までの国会答弁とも違いますよ。つまりは、今までの国会答弁、累次行われていますけれども、日本への帰属じゃないですか。日本への帰属じゃないんですか。
四島の帰属というのは、ロシアへの帰属も含めて考えられるということですか。答弁をください。
○岸田国務大臣 日本への帰属を含め、四島の帰属、これを明らかにする、こういったことを申し上げていると思います。
○前原委員 もう一遍聞きますよ。簡単な質問です。
この帰属というのは、例えば、四島ありますから、ゼロ対四、四対ゼロ、一対三、三対一、そういうことも含めて帰属ということを定義するのか、あるいは四島の帰属、日本への帰属ということで四対ゼロを意味するのか、どちらですかと聞いているわけです。
○岸田国務大臣 言葉遣いの問題かと思いますが、四島の帰属、日本への帰属、これらを明らかにする、その上で平和条約を締結する、そうしたことだと思っております。
○前原委員 それは二段階にしているということはどういうことなんですか。今のは、ということは、外務大臣、日本への帰属ということでいいんですね、四島は。
先ほど来、四島の帰属、日本への帰属と二つおっしゃいましたよね、答弁で。ということは、四島は日本への帰属を明らかにするということでよろしいですね。
○岸田国務大臣 四島の帰属先、日本への帰属を明らかにする、そういったことを申し上げていると考えています。
○前原委員 余りこれで時間を使いたくないですけれども、大事なことなので。
日本への帰属ですね。
○安倍内閣総理大臣 これは外務大臣が答弁しているように、日本の立場はずっと一貫しておりまして、それはまず、北方領土は日本の固有の領土であるという日本の不変の立場があります。そして、この平和条約の締結は、どういうときに平和条約を締結するのかということについては、四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する、これが全てでありますので、これ以上、我々としては、一言一句、つけ加える考え方はございません。
○前原委員 これは平成二十一年に予算委員会で行われていることでありますけれども、中曽根外務大臣のころなんですね。我が方からすれば四島が日本の領土である、そういう基本的な考えに立っての宣言だということ、つまりは、四島が日本の領土であるという前提に立っての宣言という答弁をされているんですけれども、それでいいですか。聞き方を変えましょう。
○岸田国務大臣 そのとおりでございます。
四島は日本固有の領土である、これは日本の従来から明らかにしてきた立場であります。そして、平和条約締結交渉においては、四島の帰属を明らかにし、平和条約を締結する、この方針も従来から変わっておりません。
○前原委員 ですから、今答弁をされたように、まだ曖昧なんですよ。明確に、四島が固有の領土であるということをおっしゃいましたけれども、平和条約締結のときは、四島の日本への帰属ということについては明確におっしゃっていないわけですね。
それで時間を使ってはあれなので、総理、その上で、歯舞、色丹というのは、四島の中で、全体の面積の中で何%ぐらいか御存じですか。
○安倍内閣総理大臣 約七%だと思います。
○前原委員 そうなんですよ。四のうち二なんですけれども、面積でいうと七%なんです。択捉が六四%、国後が二九%。ですから、この歯舞、色丹というのは、領土のパーセンテージでいうとたった七%なんですね。
そこで、この二島の先行返還論、ある新聞に載りましたけれども、二島の先行返還というのはあり得るんですか。
○安倍内閣総理大臣 報道にありますような事実、御指摘のような事実はございません。
○前原委員 報道は横に置いておいて、御自身の考え方として二島先行返還論というのはあり得るんですかと聞いています。
○安倍内閣総理大臣 交渉においては、先ほど申し上げましたように、一貫した交渉姿勢、つまり、四島の帰属問題を解決して、平和条約を締結していく、この考え方に変わりがないわけでございます。
○前原委員 現段階においてはそれが精いっぱいでしょう。
私は、先ほど申し上げたように、二島であれば、ここにも書いてあるんですよ、二島で引き渡しで決着できたのであれば、五六年当時平和条約が締結されていたはずだというのが日本の立場なんです。つまりは、二島を返還して、後でもう二島ですよなんということは、これはあり得ない、永久に返ってこないということだと私は思います。
そして、先ほど申し上げたように、たった七%です。そういう意味においては、私は、これからしっかりと交渉していただけるというふうに思っておりますが、タイミング、貫くべき基本的な前提、同盟国であるアメリカとの連携、そして今までの日本の歴史的な立場、こういうものを踏まえて、そして大きな事業について、ここはエールを送りたいと思います、頑張っていただきたいと。やはり大きな前提を崩すようなものであってはいけないということを申し上げておきたいと思います。
さて、次に、稲田大臣に幾つかお伺いをしたいと思います。 稲田さんは、二〇一二年の七月二十五日、衆議院の外務委員会で、尖閣について、政府が借り上げて誰も上陸できないようにするという方針は間違っていて、きちんと誰の目にもわかるように、上陸もし、そして自衛隊を配備するなど実効支配を強めるべきと発言されていますね。
御自身、図らずもかどうかわかりませんが、できるお立場の防衛大臣になられたわけでありますが、尖閣に自衛隊を配備することは考えられますか。
○稲田国務大臣 その後、民主党政権で国有化したわけであります。 現時点で、尖閣に自衛隊を配備するということは検討しておりません。
○前原委員 考え方が変わったということでよろしいんでしょうか。変わったなら変わったということを御答弁いただきたいわけですが。
こうもおっしゃっているんですね。「正論」という月刊誌の中で、二〇一二年の十一月号ですけれども、「中国は尖閣が核心的利益であると宣言し、本気で盗ろうとしている。それに対して、刺激してはいけない、摩擦を起こしてはいけないと言うのはどうかしていますよ。」ということまでおっしゃっているわけですね。
考え方が変わられたなら考え方が変わったと。しかも、そのときと、公船の数、そして接続水域、また領海への侵入の度合いというのははるかに多くなっていますよ。そういう意味においては、稲田さんの問題視からすれば、より実効支配を強めるという考え方に立つんじゃないですか。変わったなら変わったとおっしゃってください。
○稲田国務大臣 今の尖閣をめぐる状況は、日々緊張していると思います。おっしゃったように、六月には初めて中国の戦艦が尖閣に入ってきたわけであります。
そういった状況を考えますと、いたずらにエスカレートさせるということではなくて、しっかりと日本が、東シナ海においても、力ではなくて法による支配を貫徹させていく、その姿勢をしっかりと見せていくことだというふうに思っております。
○前原委員 変わったんですね。一言だけで結構です。
○稲田国務大臣 刻々と変わっていく我が国を取り巻く安全保障上の環境です。尖閣を取り巻く状況も非常に厳しいものになっている中で、何が最善かということを考えて我が国の防衛に万全を尽くすということであって、私の考えが変わっているとか変わっていないとか、そういう問題ではないというふうに思います。
○前原委員 この中国の尖閣に対する実効支配の考え方というのは、自民党のいわゆる政策ブックにも書かれているわけです。つまりは、野党のときはそういった勇ましいことを言っていて、そして、実際に政権をとったら、相手国との関係で、今おっしゃったように、いたずらに刺激をしないという使い分けをされているわけですね。
この考え方というものについて、もしそれであれば、いや、政権がどの政権かではなくて、環境がどう変わっているかということに対応することが政治じゃないですか、それについてもし自分の言っていることが変わられたら、私は、堂々と変わったということを言われるべきだと思いますよ。
幾つもあるんですよ、こういう事例が。もう一つ申し上げましょうか。
いや、これは別に稲田さんを私はいじめるために言っているわけじゃないんです。防衛大臣という外交、安全保障をつかさどる、後で総理に任命責任についてお伺いしますけれども、こういう大事なポジションにいる方が、こういう過去の発言をしている人を何で大臣につけたかということを私は聞いているわけです。
二〇一二年一月号の「WiLL」という月刊誌ですか、ここで、対談の中で、「そこまでアメリカ様の言うことを聞かなきゃいけないんですか、と。アメリカに守ってもらっているからって、『何が何でもご機嫌を損ねちゃいけない』と過度に思い込んでいるんじゃないでしょうか。しかも、アメリカ軍が日本に駐留している一番の理由はアメリカの利益であって、日本を守るためではありません。どこまで日本はおめでたいのでしょうか。」これは御自身の対談でのお考えですね。
私は、これは同意するところがあるんです。アメリカは、アメリカの利益というのは当たり前なんです、ボランティアで同盟関係を結んでいる国なんかありません。したがって、アメリカが自分の利益のために日本に駐留している、同盟関係を結んでいるというのは、これは当たり前のことだと思います。
問題なのは、「日本を守るためではありません。」ということなんですね。これは日本を守るためじゃないんですか、日米同盟そしてアメリカが駐留しているというのは。このお考え方は、今でもこのお考え方ですか。
○稲田国務大臣 まず、今御指摘になった対談ですね。どれかということを事前に質問通告いただいておりませんので、その前後、どういったことだということかは承知をいたしておりません。そして、過去の私の個人的な見解について、この場で申し上げることは差し控えたいと思います。
その上で、先ほどの尖閣についてもそうですけれども、刻々と変わっていく日本を取り巻く安全保障状況の中で、私は、万全を尽くすということだというふうに思っております。そして、まずは我が国自身の防衛力をつけていく、そして日米同盟を強化していく、さらには関係各国との関係を、協力を構築していく、この三つの方法によって我が国の防衛を、万全を尽くすということだというふうに思っております。
○前原委員 事前には通告していますよ。今までの国会での質問、そして発表された雑誌、新聞等々の中から外交、防衛、歴史観に対する……(発言する者あり)申し上げますけれども……
○浜田委員長 静粛に願います。
○前原委員 一つ申し上げますが、我々の政権のときは、質問項目だけだったんです。それについて、我々は一つも文句を言わずに全部お答えしましたよ。あなたの質問に対してもそうだった。そのことについて私はより丁寧に、今回の質問通告については、日米同盟の重要性についてということを項目を立てて、加えて、自分の今までの発言、国会での発言、雑誌等の対談等の中から外交、防衛そして歴史観について問うと聞いているわけですから、そういうことを準備されるのは当たり前じゃないですか。
その上で、では政策について伺いましょう。
アメリカは日本を守るためではありませんということをおっしゃっていた中で、学習されたと思うんですよ、防衛大臣になられて。では、防衛大臣になられて、どの点がアメリカとの同盟関係がなければ日本の防衛の隘路になりますか。その点についてお答えください。
○稲田国務大臣 今の北朝鮮のミサイル対応、そして東シナ海における、力ではなくて法の支配を貫徹させる、こういった点は、日米同盟が強力であるということは不可欠だというふうに思っております。
○前原委員 極めて漠としていますね。
防衛政策においてと申し上げたように、今のは、いわゆる外部環境の話でしょう。防衛政策というのは、具体的に、防衛省・自衛隊を預かっておられるわけでしょう、どの点が同盟関係がなければ日本の防衛の穴があくんですか、隘路になるんですか、そのことを聞いているんです。(安倍内閣総理大臣「打撃力だよ」と呼ぶ)
○稲田国務大臣 安倍政権になってから、平和安全法制が成立をいたしました。そして、新ガイドラインも成立をしたところであります。平時においてグレーゾーン、そして有事において、その事前から作戦を練り、そして共同のいろいろな対処について計画を立てているわけであります。そういったことは、日米の同盟があって初めてできることだというふうに思っております。
さらには、九条のもとで、例えば打撃力ですね、そういった点についても、アメリカとの同盟ということは重要であるというふうに考えております。
○前原委員 金曜日の質問でも、安倍総理が稲田さんが答弁されるときに手助けをされておりますけれども、今もバックアップをされておりました。(発言する者あり)いやいや、今お答えをされていたんですよ。
防衛の隘路というのは、幾つか申し上げましょう。一つは、抑止力ですよ、つまりは、核も含めた。北朝鮮は、核も持っている、ミサイルも持っている、運搬手段も持っている。あるいはほかの国でも、近隣でも核保有国がある。そういう意味では、アメリカとの同盟関係を結んでいるということの大きな一つは抑止力でしょう、抑止力。
そして、二つ目。二つ目は、日本は、やられたらやり返す能力はありますか。ないでしょう。今、それを打撃力と総理がフォローされていた。つまり、やられたらやり返す能力はないんですよ。それについては、日米同盟に基づいて、アメリカにその打撃力、パワー・プロジェクション・ケーパビリティーというものをお願いするんですよ。それしかないんですよ。
それから、北朝鮮がミサイルを撃ってくるかどうか、こういうことについての事前察知というのはどうしますか。ヒューミントそれから衛星情報、こういったものについてはほとんどアメリカに頼っていますよね。あるいは、発射をする、発射してから約七分で飛んでくる、これに即時対応しようと思ったら、その兆候をしっかりと事前に察知すると同時に、熱感知の高高度の静止衛星というのはアメリカしか持っていないんです、アメリカがいわゆる発射の熱感知で高高度静止衛星でその対応というものを、しっかりと対応することになるわけです。
それと同時に、PAC3、スタンダードミサイル、SM3、これもどういう状況に今北朝鮮があるかということが、状況がわからないと、日本海に派遣できますか。PAC3は、来るところにしっかりと、キャッチするというように配備をするわけでしょう。事前情報がなかったら、そういうものについてしっかりとそれが配備できませんよね、前広に展開できませんよね。
ミサイル防衛、あるいは主要装備にしたってアメリカから買っている。
こういうことも含めて、一言でも、みずからが防衛大臣になられる前だからといって、「日本を守るためではありません。」ということを言い切れることの不勉強さ、あるいは防衛に対する認識の足りなさというものに私は実は唖然とするわけですよ。
そして、今、隘路は何か。純粋な防衛政策の面から私は聞いているんです。それで今のお答えでしょう。これは、私が大学の教官だったら、六十点差し上げられませんよ、単位を上げることができない。
安倍総理、もう時間が迫ってきていますので、ほかに、韓国の問題、入国拒否されましたよね。あのときは、しかしながら、我々は韓国に対して批判をしました。何で上げないのか、入国を拒否するのかということを我々は批判しました。しかし、同等のことを、あなたは、もし韓国の国会議員が竹島に上陸すれば入国拒否をすべきだというふうなこともおっしゃっていますよね。
つまりは、先ほどの中国の尖閣の、自衛隊を配備すべきだ、そしてしっかりとそれについては実効支配を強化すべきだ、アメリカは日本を守ってくれない、そして特に北朝鮮の問題が起きたときに日米韓の連携というのは極めて大事であることはずっとわかっているにもかかわらず、こういう、それは、竹島は日本の領土ですから、それをしっかりとアピールするというのは大事なことですけれども、トータルを考えながら物事を言って行動 するというのが外交・安全保障政策をやっていく上で大事なことなんじゃないですか。 私は、そういう意味で、安倍総理が何で稲田さんを枢要なポストである防衛大臣に指名をされたのか、よくわからない。こういう過去の発言というものについてしっかりと認識をされた上で、本当にこの人は防衛政策に当たるのに適切な人なのかということを判断しておっしゃったんですか。そのことについて御答弁ください。
○安倍内閣総理大臣 日米同盟については、例えば、稲田さんと随分時間をかけて話をしたことも以前あります。それにおいては、今まさに稲田大臣も答弁をしておりましたが、日米同盟は、日本を守るため、いわば日本だけが利益を享受しているのではなくて、まさに日本に基地を置いていることによって米国は前方展開戦略を行い、アジアにおけるプレゼンスを確保し、それはアメリカの利益になっているという話を稲田さんもしておられました。
そして、かつ、旧安保条約は日本に対する防衛義務がなかった時代の話もしていて、それはまさに、米国が占領して、それがそのままいて、それを条約にしたものだという話もしておられました。それは事実でありまして、それが、新しい安保条約になって、米軍に日本に対する防衛義務ができて対処するようになったという認識を示しておられましたから、これは間違いなく認識を持っておられるんだろう、私はこのように思うわけでございます。
また、稲田大臣は、常日ごろ、前原委員のいろいろな御発言についても結構評価をしておられたこともあるわけでございます。
そしてまた同時に、尖閣についてはまさにしっかりと、尖閣については日本が主体的に守っていかなければいけないという強い意思を示しておられた。
特に野党議員のときには少し、ある程度、野党議員のときに強く言うということについては、これはまさに政府の交渉力を高めていくことにもつながっていくという考え方もあるわけでございます。つまり、これは、野党が政府よりも甘いことを言っていれば、相手側から、野党がこんなことを言っているんだったらあなたたちは譲歩しろ、こう言われるわけでございまして、これはその立場立場でいろいろ意見がある。
ただ、基本的には稲田大臣は考え方は全く変えておられず、尖閣についてもしっかりと守っていかなければいけないということと、日米同盟は重要である、こういうことではないか、このように考えます。
○前原委員 今くしくも、稲田大臣の考え方は変わっておられると明言をされました。つまり……(発言する者あり)いや、変わっておられるということ、後で議事録を見ていただいたら結構でありますが、つまりは、甘いんですよ、稲田さんに対して。甘いし、私は、外交、安全保障について、あるいは歴史観について、例えばそれは靖国の問題でも、トータルの外交を考えたときに、靖国に行かれたこと、総理も行かれましたね。で、今回、八月十五日に行かなかった、わざわざジブチに行かせた。それは稲田さんを行かせないためじゃないですか、結局は。
こういう問題が、野党とか与党とか関係ないんですよ、トータルでどういう影響を及ぼすかということをわかった上でしっかりやっていかないとマネジメントできないということ。しかし、そのことについては、野党のときであろうが、この勇ましい発言をやっておられて、全部撤回をされている。こんな能力のない、あるいは全体のバランス感覚のない、私の評価をされたというのは、私はうれしくもあり寂しいところでもあるんですけ れども、こういうことについて、こういう人を防衛大臣に据えたということについては大いに問題ありということを申し上げて、私の質問を終わります。
日銀総裁、済みません。来ていただいたのに申しわけありませんでした。