前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第190回国会 衆議院財務金融委員会2016/02/24

前原委員 おはようございます。きょうは、総理大臣また日本銀行総裁にもお越しをいただいておりますので、主にお二人に質問をさせていただきたいと思います。
 まずは日本経済の現状について、税あるいは復興財源を議論する前提としてお聞きをし、また各論にも移っていきたいというふうに思います。
 まず安倍総理、総理になられた直後の平成二十五年の二月七日の衆議院予算委員会において私と討論した際にこうお答えになっておられますけれども、この考え方が変わっていないかどうか、まずお伺いいたします。こう答えられたんですね。
 「人口の減少とデフレを結びつけて考える人がいますが、私はその考え方はとりません。デフレは貨幣現象ですから。つまり、金融政策においてそれは変えていくことができるわけであって、世界じゅうに人口が減少している国はたくさんありますけれども、その中でデフレに陥っている国はほとんどないんですから。」
 こう答えられております。この認識は今でも変わっておられませんか。

 

安倍内閣総理大臣 安倍政権としては、デフレ脱却を大きな目標として掲げたわけでありまして、三本の矢の政策でそれに挑んだわけであります。
 もちろん、デフレ脱却に向けて、金融政策だけではなくて、機動的な財政政策ということも含んでいるわけでありますし、その後の持続的な成長において成長戦略も進めていくわけでありますが、デフレ脱却においては金融政策が大きな手段である、このような考え方は変わっていないということでございます。

前原委員 こうも答弁されているんですね。
 「世界史的にも先例のないデフレ脱却に取り組まなければならないという中において、思い切ったマインドの転換が必要なんですね。その中において、例えばスティグリッツもクルーグマンも、三%、四%という、例示として出していました。私も何人かのエコノミストと話をした中において、つまりショックを与える意味においても三%、四%という数字を出すべきであろう、つまり一%、二%という」「出だしの数字だけでは意思そのものが、国家としての意思そのものが疑われるんだろう、こういう話でありましたから、むしろ私としては、その中において、選挙等を通じては強目の数字を申し上げたわけであります。 しかし、政治は最終的に多くの人たちの同意を得なければいけません。また、日本銀行の了解を得なければいけないわけでありまして、言うだけになってはいけないわけであって、結果を出すのが我々政治家の仕事ですから、そこは、結果を出すということにおいては二%という数字だろう。」
 つまり、選挙のときに物価上昇を三、四%ということをおっしゃっていて、そして、結果を出さなきゃいけないから二%にしたという答弁をこの二月七日にされているわけです。
 つまりは一貫して、先ほどは財政政策とか成長戦略とかおっしゃいましたけれども、総理になられた直後のこの答弁においては、少なくとも、貨幣現象ですからということで、金融政策でデフレは脱却できるということを強調されているように思いますけれども。いいか悪いかを言っているわけじゃありません。このときの考え方と、今は、先ほど答弁されたように、さまざまな考え方をあわせてやらなければいけないんだということで、デフレ脱却は金融政策だけではだめなんだということについて、そういう認識でいいのかどうか。御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 私がいわゆるアベノミクスと言われる政策を進めるに当たって、いわば三本の矢でデフレ脱却をしていくということは一貫して申し上げているわけでございますが、その中におきまして金融政策が大きな影響を与えるということは一貫して申し上げているわけでございます。
 そして、金融政策によって大きくデフレマインドが変わってきたのは事実でございますし、もはやデフレではないという状況をつくり出すことができた、このように考えております。

前原委員 黒田総裁にお伺いをしたいというふうに思いますけれども、私がなぜこの話を冒頭伺ったかといいますと、総理と黒田総裁にお話をしますけれども、金融政策に重きを置いておられる。ある方、専門家に言わせると、金融政策の一歩足打法と言う方もおられますけれども、かなり金融政策に重きを置かれているということであります。
 先ほど総理が答弁されたように、やはり金融政策というのは、ある意味でカンフル剤であって、そして、その時間稼ぎをしている間に日本の構造問題、後で議論しますけれども、潜在成長率を上げていくということを考えたときには、時間稼ぎをしている間にこの構造問題を変えなきゃいけないということで、金融政策よりはむしろ日本の構造問題改革に軸足を置くべきだ、私はそう思っているわけであります。
 黒田総裁、金融政策はあくまでも時間稼ぎ、カンフル剤であって、日本の構造問題、財政の健全化とか、あるいは潜在成長率を高めるための成長戦略、これが大事なんだと私は思うわけでありますが、黒田総裁の見解を聞かせてください。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、持続的な成長、実質GDPの成長、あるいは一人当たりのGDPの成長といった面では、当然のことながら、成長戦略その他が最も重要であることは御指摘のとおりでありますけれども、デフレからの脱却あるいは二%の物価安定目標の実現、そういった面ではやはり金融政策が最も重要であり、我々の量的・質的金融緩和というものも、二%の物価安定目標を達成するために行ってきたということでございます。

前原委員 先般、予算委員会で黒田総裁とはかなり突っ込んだ議論をさせていただきましたけれども、二年で二%という物価目標について四回先送りをされている、こういうことであります。先ほどの総理の言葉をかりれば、政治は結果を出さなきゃいけないということで、かた目の数字二%ですら実現をしていない、こういうことであります。したがって、今は出口ではないんだろうというふうに思います。
 総裁に改めて伺います。今、出口ではないということでありますが、仮に今、金融緩和をやめたり、あるいは店じまい、テーパリングというものに仮に入ったとすれば、為替、株価にはどう影響を与えるとお考えですか。

黒田参考人 現時点で消費者物価の上昇率は、生鮮食品を除く指数で見ますとゼロ%程度で推移しております。これは基本的に、原油価格が七〇%以上この一年半で下落したということが大きく影響しているわけでございます。
 一方で、生鮮食品とエネルギー品目を除きますと、二十数カ月プラスでありますし、足元では一・三%程度に来ております。
 ただ、やはりまだ、二%の物価安定目標との関係でいいますと道半ばというところでございますので、今、具体的に出口の話あるいは仮定の話で、もし今テーパリングあるいは金利を引き上げるということをやったらどういうことになるかということを議論するのは、日本銀行としては適切でないというふうに思っております。

前原委員 おかしなことをおっしゃいますね。どういうメカニズムで今の金融政策に働きかけるかということの議論をしているわけですよ。つまりは金利を下げるわけでしょう。イールドカーブ全体を押し下げる。そして、それを補完する形として、この間マイナス金利を一部導入をされた。つまりは理論を聞いているわけですよ。
 どういう政策目標なのか、どういう政策目標であれば、もしそれがなかった場合にどういう影響が及ぶのかという話を聞いているわけであって、別に、具体的にやりますねということを聞いているのではなくて、今、テーパリングとか、やっておられる金融緩和をやめれば、為替と株価にはどういう影響が及びますかということを聞いているわけですから、その前提でお答えください。

黒田参考人 この量的・質的金融緩和、あるいは、最近マイナス金利を導入いたしましたので、マイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、デフレマインドを抜本的に転換するために行っているわけでございまして、具体的には、二%の物価安定の目標の早期実現に対して強くコミットメントを行うとともに、それを裏打ちする大規模な金融緩和を推進するものでございます。
 こうした政策によって、主として実質金利を低下させることを通じて、企業や家計の経済活動を刺激し、企業収益の改善、あるいは、雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという経済の好循環をつくり出すことを目的としております。
 今申し上げたようなメカニズムでこのマイナス金利つき量的・質的金融機関が、経済の好循環を通じて物価安定目標の達成に資するというふうに考えております。

前原委員 私が黒田総裁の今の御説明を分析すれば、量的・質的金融緩和によって実質金利を下げる、こういう政策目標を達成するためにやっているんだと。ということは、それをやめれば実質金利が上がるということですね。
 実質金利が上がるということになれば、その場合、為替、株はどうなるかということを聞いているんです。

黒田参考人 今申し上げたとおり、現在のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というのは、委員が要約してもうおっしゃったように、実質金利を下げて、それによって企業収益の改善、あるいは、雇用、所得の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという好循環を実現するということを目的としておりますので、まだ道半ばでございますので、それを今反対のことをすれば、実質金利が上がってしまって、経済にマイナスの状況が出てきてしまうということでありまして、まだ出口のことを議論するのは時期尚早であろうと思っております。

前原委員 かなりお答えになられ始めたというふうに思うわけでありますが、実質金利が上がる、こういうことですね。
 他国との金利差というものを考えたときに、実質金利が下がれば金利差は広がりますね。そうすると総裁、お金を持っている人は金利の高いところで運用しますか、安いところで運用しますか。

黒田参考人 それは委員が御指摘になっているとおり、金利格差というものが資産運用の場所あるいは通貨について影響を与えるということは、そのとおりだと思います。

前原委員 お答えになられ始めたんですけれども。金利を下げる目的だったから、テーパリングとか、あるいは金融緩和をやめれば、実質金利は上がる。そして金利差については、縮小するわけですから、為替にも影響を与える。縮小というか、金融緩和をしたときには金率が拡大をするので、いわゆる為替にも影響がある。こういうことをおっしゃったわけですね。
 つまりは、黒田総裁がお答えをされているように、私も甘利さんの前の担当大臣をやっておりましたので、さまざまな施策というものは為替操作を目的としたものではない、まさに実体経済をよくするということが主目的であって、為替について何らかの予見を持ってやるものではない、それはそのとおり言い続けなきゃいけないことだというふうに思います。
 そこで総裁、ちょっとお伺いしたいんですけれども、QE1、QE2、つまりは、三年前の四月四日、それから一年半前の十月三十一日にこれをやられたときには、バズーカ砲1、2ということで、言ってみれば、金利がぐっと下がって、そして為替が円安に振れて、そして株価は上がりました。今回のマイナス金利においては、同じように実質金利も下がったわけです。しかしながら、幾つかの話の中で、講演をされたり、あるいは委員会の答弁の中で、別に為替に影響を与えるということでやっているわけじゃないんだ、実質金利を下げて実体経済をよくする、そのために政策をやっているんだ。私はそのとおりだと思うんです。
 ただし、QE1、QE2のときは、為替が円安に振れて、株価も上がった。今回は同じように金利が下がったわけです。にもかかわらず、三日もたたないうちに円は高くなり、そして株は下がり続けている。これはどう分析されますか。

黒田参考人 そこは御承知のとおり、年初来の国際金融市場の変動があったわけでございまして、マイナス金利を導入した以降も、御指摘のように国際金融市場は変動が続いておりまして、主要国の株価は軟調に推移するし、ドル安傾向も続いております。
 その背景としては、原油価格の下落が続いていたということと中国経済の先行きの不透明感に加えまして、欧州の銀行セクターに関する懸念、あるいは米国の金融政策の先行きに対する不透明感が強まる中で、世界的に投資家のリスク回避姿勢がやや過度に広まっているということがあるのではないかというふうに認識しております。

前原委員 つまり、QE1、QE2のときは、世界環境というものが、経済環境というものがある意味で静かであった。しかし、今は相場が荒れている。中国の経済の減速、原油価格の下落、そういったものによって外部環境が荒れている状況であるので、別に為替を狙ったものではない、株価を狙ったものではないけれども、QE1、QE2のときとは違って、金利は下がっているけれども、為替は下がらず、逆に上がって、円は上がって、そして株価は下がっている。
 こういうことで今お答えになったということでよろしいですね。

黒田参考人 基本的にそういうことだと思います。
 ただ、株価は、御承知のように世界的に軟調に推移しております。それから、為替につきましても、マイナス金利導入後の動きは基本的にドル安でありまして、円だけ上がっているのではなくて、世界の主要通貨のほとんどが上がっているという状況だと思います。

前原委員 この週末に、麻生財務大臣と黒田日銀総裁は北京で行われるG20に行かれますね。それを前にどういう議論をするか、きょうだけじゃなくて、私は金曜日にも質疑時間をいただいておりますので、あわせて質問をしたいというふうに思います。
 一部報道によりますと、アメリカが通貨安競争に懸念を表明する、そして財政出動というものの必要性にも言及をする、こういった報道がなされた。それでまた円が上がっているわけです。
 アメリカが一番堅調だと思っていた。中国が減速しても、あるいは原油価格が下がっても、世界のナンバーワンのGDPを誇るアメリカが堅調であれば世界経済は大丈夫だろう。しかし、今総裁がおっしゃったように、言ってみればドル高を許容していたアメリカですらこういうような懸念、これは報道ベースですから実際はどうかわかりませんけれども、通貨安競争に懸念、そして財政出動の必要性もあるんじゃないかということをG20 の議題にしたい。
 また、今大統領選挙が行われています。共和党のトランプという候補が善戦をしているわけでありますが、彼がどう言っているかというと、通貨安を、日本を批判して、日本は通貨の価値を下げている、コマツ製を買わせ、キャタピラー製を買えないようにしている。これもむちゃくちゃな話だと思うんです。コマツはイリノイにもう現地工場もつくっていますから、現地でつくっているわけですので、別にコマツ製かキャタピラー製かというと、現地でつくったものについては、それはどちらがすぐれているかということをアメリカの方々は選ぶわけですから、僕はトランプの言っていることはおかしいと思いますよ。おかしいと言っているけれども、演説ごとにこれを言っているわけですよ。
 こういうことを考えたときに、まず総理にお伺いしますけれども、G20に麻生財務大臣が出かけられます。今の世界経済の前提でアメリカなんかもこういう通貨安競争とか財政出動の懸念なんかも言っているということの中で、まさに先ほど、一番初めにきょう議論したかったポイントである、金融政策に過度に頼らずに、もちろん機動的な財政出動が必要なときもあるかもしれませんが、それぞれの国が構造改革に取り組むということ、そういうことをむしろ確認することの方が建設的で、いい会合になるのではないかと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 一番最初の前原委員との議論の中で私が申し上げたのは、またこれは政権発足当初の私の発言でございますが、基本的には、デフレを脱却していく、そのための政策と、持続的に日本の経済を成長させていくための政策と、これは両方ともリンクをするわけでありますが、この二つを考えていただきたいと思うんですが、デフレから脱却する上においては金融政策が大きな役割を担っていくということを申し上げたわけであります。
 それには、もちろん適時適切な財政出動も必要でありますが、しかし、持続的な経済成長を進めていくという観点からまさに三本の矢であって、成長戦略も必要でしょうし、さまざまな構造改革に挑んでいくことも必要である。
 これは、金融政策に依存するということではなくて、この三本の矢、特に三本目の矢が極めて重要であるということは言をまたないわけでございます。
 私の考え方はそういうことでございまして、デフレ脱却ということについては、これは金融政策が大きな役割を担うということであります。(前原委員「G20」と呼ぶ)
 そこで、G20においては、これは今前原委員がおっしゃったとおりでございまして、私どもが申し上げたいことは、アメリカ側の発言に一々コメントすることは差し控えたいと思いますが、現下の世界経済の不透明感がある、先行き不透明になっているという状況に際して、G20において、しっかりと世界経済を安定させ、持続的な成長のために何をすべきかという観点から話をすべきだろうと。
 例えば中国の経済の減速懸念に対しては、例えば、その中にあっても、しっかりと中国側にも過剰設備等の構造改革に取り組んでもらいたい、それぞれの国々がそういう努力をしていこうという建設的な議論をすべきだろうと、このように考えております。

前原委員 黒田総裁にも質問をさせていただきたいんですが、先ほど、QE1、QE2とQE3、違いを述べられました。つまりは、世界経済の状況が違う中において、日銀としての当初の政策目標はしっかり達成しているんだけれども、為替、株価については違う結果が生まれている、こういうことであります。
 アメリカの懸念なんかもお話をしたわけでありますが、三月の政策決定会合で、また追加緩和をすべきだ、これだけ円高になって、そして株価が下がっている、こういう議論も市場にはあるわけですよ。
 これはもちろん日銀総裁がお決めになることでありますけれども、マイナス金利についてもいろいろな議論があります。金融株が下落をし、そして混乱も広がっている。私の知り合いで銀行に勤めている人間がおりますから、もう少しフォワードガイダンスをしてくれればよかった、時間を欲しかった、なぜなら、機械のシステムがマイナスになることを想定していなかったので混乱している、こういう話もしておりました。
 大事なことは、私が今総裁に伺いたいことは、このマイナス金利導入の結果の推移を見るということをおっしゃっているわけです。そして、世界が荒れている状況の中においては、一国の中央銀行がいかに頑張っても、できないことがあると思うんですよ。黒田総裁については、サプライズで今まで市場に働きかけてこられた部分はあると思いますけれども、できることとできないことがあって、期待をサプライズで高め過ぎることが、むしろ黒田総裁の選択肢を狭めることになると思うんです。
 つまりは、この円高そして株安の状況の中にあって、追加緩和を求めるような話がありますけれども、私は、そこは慎重になるべきだ、むしろそこでやってしまったときに、またきかなかった場合においては、逆に日本銀行の政策の選択肢というものを狭めることになると思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 ただいまの前原委員の御意見、大変参考になる御意見だと思いました。
 もちろん、日本銀行といたしましても、従来から申し上げているとおり、為替や株価をターゲットにして金融政策を運営するということはありません。あくまでも、そういった金融市場の動きが企業のコンフィデンスの改善とかデフレマインドからの脱却をおくらせてしまう、それにマイナスの影響を与えてしまって、結局二%の物価安定目標の早期実現が難しくなるといったリスクがある際に、一昨年の量的・質的金融緩和の拡大であれ、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入であれ、決定したわけでございまして、今後ともこういった市場の状況はしっかりと注視して、それが日本の経済や物価の動向に悪影響が来ないかどうか、もしそういう悪影響があるということであれば、ちゅうちょなく対応策を検討するということになろうと思います。

前原委員 安倍総理にお伺いしたいんですけれども、構造改革、いろいろな面があると思いますけれども、潜在成長率をどうやって上げるかということが大事、これは同じ認識でおられると思います。労働力、労働生産性、イノベーション、こういったところが非常に大事だというふうに思います。
 そこで、二つちょっと、次の質問の本題に入る前にまずお伺いしたいんです。
 安倍政権の間は、例えば、労働力ということを考えたら移民ということが浮かぶわけです。しかし、安倍政権では移民は考えないということをおっしゃっています。それからもう一つ、一〇%までは自分が責任を持ってやるけれども、それから先については安倍政権は考えていない。潜在成長率は消費税の話と違いますので、同じような質問なのでちょっと対にお伺いしたいんですけれども、移民も安倍政権では考えていない、そして一〇% を超えるものについても考えていない。
 しかし、ポスト安倍政権、つまりは、日本の今の状況を考えたときに、自分の後の政権、何政権になるのかわかりませんが、ポスト安倍政権においては、移民とか、あるいは消費税を、一〇%を超えるものについて考えるべきだと思われますか。それとも、自分が今おっしゃっているように、考えなくていいというふうに思われますか。

安倍内閣総理大臣 まず、安倍政権においては、外国人人材は活用していきたいと考えておりますが、いわゆる移民政策をとる考えはないわけであります。
 しかし、労働人口は減っていくではないか、それに対抗するために、今まで生かされていなかった女性の力を活用していきたいと思っておりますし、そしてまた、きのうも一億総活躍社会に向けての会議においての議論も終わったのでございますが、定年延長等も進めながら、高齢者の力を生かしていきたい、経験を生かしていきたい。人材として活躍していただくことによって、生産人口の減少をカバーする。あるいはまた、前原委員が先ほど例として挙げられたように、IoT等の活用において生産性を上げていくということもしっかりと取り組んでいきたい、こう考えております。
 その中において潜在成長力を上げていくことは十分に可能ではないか、こう思っております。
 そしてまた、現在、プライマリーバランスをGDP比半減するという目標は達成することができました。二〇二〇年の目標に向けて何としてもこれは達成していきたい、こう考えております。
 その際、あるいは消費税を引き上げる必要があるかどうか。まずは無駄削減等、そしてまた経済をしっかりと成長させていくことによって税収増を図っていきたい、こう考えております。
 そこで、ポスト安倍政権、この中にそれを担う方がおられるんだろうとこう思うわけでございますが、このポスト安倍政権について私が今それを縛るようなことを申し上げるべきではないと思いますが、しかし、世界状況、あるいはそのときの国内の国民的な思いの中において、どういう政策を形成していくか。しかし基本的には、移民政策においては、果たして日本でなじんでいくかどうかということはあるんだろうと思うわけであります。
 消費税については、まさに、そのときにそれぞれ財政を健全化させていくにはどういう手段をとるかという手段のもちろん有力な一つであろう、このようには思います。

前原委員 それでは、今、二つ目のことをおっしゃった消費税とプライマリーバランス二〇二〇年のことについて少しお話をしたいというふうに思いますが、お配りをしている資料の左の上に六と書いてあるもの、「短期経済予測の概要」というものをごらんをいただきたいと思います(配布資料)。
 先般、二〇一五年の十月―十二月の四半期の速報値が出たわけでございます。マイナス〇・四ということでありまして、二〇一四年は、これは確定値ですね、〇・〇%でございます。右側を見ていただくと、そして、二〇一五年が〇・七%、まだ確定値ではありませんけれども。そして、二〇一六年が一・〇%。これは消費税の駆け込み需要が入っています。一〇%に上がるであろうという駆け込み需要。そして、二〇一七年はこの反動減が入っている。こういうことで、〇・七、一・〇、〇・一。そして、ちょっと下に移っていただきますと、名目については二・一、一・六、〇・五、こういうことになっているわけであります。
 そこで、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化は何としてもやらなきゃいけないということを今安倍総理もおっしゃったわけであります。それはやはり、円の信認、そして日本の信認、国債の信認ということからすると極めて大事なことでありますけれども、ただ、経済成長シナリオだと名目が三%、これは次のページの左上に七と書いてあるものをごらんいただきますと(配布資料)、現在、大体十六・四兆円の赤字がある。そして、この折れ線グラフになっているのは、実質二%、名目三%で伸びていったときでも九・四兆円足りない、こういうことになっているわけです。
 名目三%、実質二%というのはなかなか大変だと思います。先ほど議論させてもらったように、潜在成長率が〇・四ということを考えると、それはいろいろな取り組みをしていかなきゃいけない。そして日本の底力を高めていかなきゃいけない。そういうことについては認識は共有すると思っておりますけれども、この名目三、実質二というのは、我が政権のときにもこれはやっていたわけですよ。
 先ほど総理が、必ず二〇二〇年にプライマリーバランスの黒字化を達成しなくてはいけない、私も同じ思いなんですね。そうすると、余り楽観論に立ってやると、それでも九・四兆円足りないわけですよ。楽観論に立つと、先ほどの六に戻っていただくと(配布資料)、なかなかこれから先行き、名目三、実質二というのは難しいですよね。
 そうなると、やはり九・四兆円以上のものを財源として当てはめなきゃいけないというところで、それは歳出歳入改革をやらなきゃいけないと思うんですが、総理いかがですか。

安倍内閣総理大臣 確かに、前原委員がおっしゃったように、この目標はなかなか難しい、困難が伴う目標ではありますが、我々がこの目標に向かってしっかりと政策を進めていかなければならないという決意においては変わりがないわけであります。
 果たしてどうやってその赤字をこれは埋めていくんだ、いわば、私どもが描いているシナリオにおいても六・五兆円の赤字が出るではないかという御指摘があるのは事実であります。
 経済・財政再生計画では、安倍内閣のこれまでの三年間での実質的な増加が一・六兆円程度となっていることや、経済、物価動向を踏まえるという一般歳出の水準等の目安が設定をされていますが、平成二十八年度予算においては、これに沿って社会保障を初めとする一般歳出の伸びを抑制することができたと考えておりまして、今後の予算編成においても、引き続きこれらを十分に踏まえて進めていきたい、このように考えております。

前原委員 総理、私が伺っているのは、財政健全化というのはしっかりやらなきゃいけないと思うんです。成長戦略も大事であります。そして、今おっしゃったように、歳出歳入改革も必要。ただ、この間の予算委員会で最後に私申し上げたように、それから、先ほど日銀総裁と議論させていただいたように、金融政策で上げ底になっている部分があるわけですよ。
 つまり、金利を下げて、そして円安にして株を上げる。株を上げることによって、結果的には企業の言ってみれば分配、そして株を持っている方の所得が上がる、そのことによって所得税が上がっている、そして為替効果で法人税も上がっている部分はあるわけですよ。それだけとは申しません。
 つまりは、金融政策というのは未来永劫続けられるものじゃないんですね。上げ底の部分があるわけです。ですから、現在の状況の中でこのままいったらどうのこうのということについては、それは今まで三年間政権を運営されてきた総理としては、その自負はお持ちだというふうに思います。それはわかりますけれども、私が申し上げたいのは、世界の情勢が、先ほど、黒田総裁の言葉をかりても、ある程度なぎの状況でも、だからQE1、QE2を聞いたんですけれども、それでも、この六を見ていただくと、きょうはその中身についてさらに議論する時間はもうありませんけれども、実質成長率は二〇一五年で〇・七、二〇一六で一、二〇一七だと〇・一ぐらいしかない。三と二で名目、実質、これで計算するんじゃなくて、もう少し慎重なシナリオの中でどうやって二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化というものを考えるということの発想に立たないと、まさに経済が金融緩和もあって今よくなっている部分を前提にしてやると、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化というものが達成できなくなるんではないかという心配をしているわけです。
 したがって、そのかた目の数字の中でしっかりやる、歳出歳入改革、もちろん経済成長、そういうことが必要じゃないかということを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 委員がおっしゃったように、かた目の数字、我々はベースラインと申し上げているわけでありますが、このベースラインの数字にも立ちながらかた目に見ていく、それは当然そういう考え方もあるんだろうと思います。 しかし、同時に、潜在成長率を上げていく、その力を上げていく努力は常にしなければいけませんし、その目標はしっかりと我々はお示しをしているような形で達成を目指していきたい、こう考えております。
 しかし、同時に、歳出の削減につきましては、社会保障分野も聖域とせずに効率化、重点化を徹底していく、もっともっと徹底していくことはできるだろうと思っておりますし、社会保障費の削減に成功している自治体の取り組みの横展開を徹底的に図っていくということもやりながら、さらなる削減を目指していきたい、この効率化を図っていきたい、こう考えております。
 同時に、成長する力も維持をしていく必要があるわけであります。これはもう前原委員重々御承知のことだと思うわけでありますが、GDPの成長率を失速させないようにしながら、歳出の削減できるところはしっかりと削減しながら目標を達成していきたい、こう考えております。

前原委員 今、総理が御答弁されたように、ベースラインというものをしっかりと頭に入れながら、これから二〇二〇年までの基礎的財政収支黒字化をどう果たすかということを考えることの方が、むしろそれを達成できる蓋然性が高まると私は思っておりますので、しっかりそのベースラインというもの、つまりは、経済がいいときの前提じゃなくて、ベースラインをベースにしっかりと考えていただきたいということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

(議事速記録より)
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