○前原委員 民主党の前原でございます。
三十分という時間をいただいておりますので、主に安倍総理にお話を伺いたいと思います。
まず、安倍総理は、所信表明演説の中で、経済の取り組みにはこの道しかないということをおっしゃいました。
確かに、デフレ脱却は重要であります。デフレというのは、ほっておけば物の値段がどんどん下がっていく、物を買わない方が得であるということでありますから、デフレ脱却は重要です。そして、総理みずからが旗を振られて、そして国民や市場関係者のマインドを変えたということについては私は評価をしたいというふうに思いますけれども、経済指標でよくなっているものもあることを踏まえてこの道しかないという考え方には我々はくみをいたしません。
しょせん、財政出動それから量的緩和というのは時間稼ぎであって、時間を稼いでいる間に、日本が抱えている構造問題、後で議論させていただきますけれども人口減少とか、あるいは歳出の改革、三本の矢に入っていませんよね、歳出改革。それから、これは取り組んでおられますけれども、成長戦略の着実な実行、こういったものに移れるかどうかが私は大切なことだというふうに思っています。
経済指標がよくなっている主な点は、私、四つだと思っています。
一つは、平成二十四年度の補正予算をやられました。真水で十兆円余り、そして事業費で二十兆円。これだけの、一般会計とは別の予算をさらにつぎ込めば、それはある程度景気はよくなるでしょう。しかしながら、それは借金によって賄われているものもあるということで、またこれは将来へのツケ回しをふやしたということであります。
二つ目には、日銀による異次元の緩和、これがかなりきいていると私は思いますよ。ただ、これは黒田総裁も認めておられるように、量的緩和というのは通貨安を生み出す傾向がある。これで円安になって、そして輸出関連企業なんかの株が買われるということの中で、また、ETFも日銀が買う、買い続けるということの中で、株式市場に外資などが入ってきて株価が上がっている。国債も、新規発行の七割ぐらいを買っているということでありますので、それは、金利も押し下げられて国債価格が上がっているということについて言えば、これは官製のいわゆる資産バブルを生んでいることになるのではないかということであります。
それから三つ目には、落ちついた外的要因。アメリカは出口を模索し始める。小康状態のヨーロッパもあります。しかし、これはいつまた噴き出してくるかわかりません。中国も、何だかんだといっても七%台後半の成長率を維持しているということの中で、外的要因は非常にいい。
また、最後のポイントとしては、消費増税の駆け込み需要というものが起きているということであって、これだけ条件がそろえば、それは指標はよくなるだろうということであります。
これを全て否定しているわけじゃありません。今から幾つかの問題点について議論をさせていただきたいと思いますので、総理、お答えをいただきたいと思います。
一枚目の資料をごらんいただきたいと思います。
総理や根本復興大臣、覚えておられるかどうかわかりませんが、私、二月のこの予算委員会で質問をさせていただいたときに、被災三県、岩手それから宮城、福島、そして仙台市、政令都市、この四自治体の入札不調の話をさせていただきました。入札不調率が非常に高いということの中で、これでまたさらに補正予算をやれば、半分が公共事業ですから、これをやったらより復旧復興はおくれるんじゃないかという質問をいたしましたときに、根本大臣は、その可能性もある、懸念もあるという答弁を率直にされました。
太田国土交通大臣、ここにおられますけれども、国土交通省の方でいろいろと知恵は絞られています。例えばロットを大きくするとか、あるいは、これは我々が政権の末期のときでありますけれども、例えば、労務単価、昔は年に一回だったのを短くしていく中で、今、三カ月に一回ですか、三カ月に一回労務単価を見直しておられるということで、労務単価は二一%上がったという報告を受けております。それから、資材価格については一カ月に一回の見直しをするということで、努力をされていると私は思っています、国土交通省としては。
では、この一番上の表(配布資料)を見ていただきたいんですけれども、また入札不調がふえているんですよ。これは明らかですよね。件数も、それから割合もふえている。これはまさに、先ほど申し上げた、補正予算というものを行う中で、結果的には入札不調というものがふえて、そして復興の足を引っ張っているんじゃないかと思いますが、認識はいかがですか。
○太田国務大臣 表を見ていただければ、むしろ入札不調はことしに入ってから減ってきているという状況にあります。八月で上がっているということがグラフにもあると思いますが、八月上がって、そして、これは毎月かなり変動があります。
しかし、全体的には、昨年の現在の地点ということからいきますと、例えば、具体的に申し上げますと、岩手県は、今年度に入りまして、昨年一年間一四%の不調であったんですが、ことし一四%、宮城県は三七から二二、福島県は二五から二四、そして、仙台市は多かったんですが、五〇から三四と、現在減っています。これは注目していかなくちゃいけない、細かく手を打っていかなくちゃいけないんですが、それは決して、昨年度に比べて高くなっているのではないというのが現状の事実でございます。
○前原委員 これは、太田大臣、国土交通省にヒアリングをした上で質問しているんです。国土交通省の役人そのものが私にレクチャーをしてくれたのは、これから年度の後半ですよね、年度の後半の方が発注がふえますと。したがって、今までは今答弁のとおりかもしれないけれども、これからは、説明に来られた方々も含めて、また入札不調がふえる可能性があると言っているんですよ。そのことも踏まえて言っているんです。
我々は、ためにする議論をしているんじゃないんです。復興が一番大事だということであれば、この入札不調がこれからまた多くなるかもしれないということ。しかも、努力をされているんですよ、国土交通省はいろいろな取り組みをして。だけれども、ボリュームがふえている中で入札不調がふえているということで、結局、それが復興の妨げになっているんじゃないかということを申し上げているんですよ。その認識は、総理、いかがですか。総理に聞いているんです、総理に。総理に聞いているんです。
○太田国務大臣 これからふえる可能性があるという認識をしています。
それゆえに、資材の不足ということについては、資材として、例えば生コンなら生コン、それを九ブロックに、岩手県からずっと分けて、プラントが足りないというところにはプラントを設置する、そしてまた、砂が足りないというところなら砂をどこに持ってくるか。細かくそれぞれの県で、ここは大事な問題ですから、注視しながらやっていくということでございます。
○前原委員 今、自民党席の方から、民主党が公共事業を減らした中で建設業を潰したという話がありましたね、不規則発言が。これは、事実関係を申し上げましょうか。
我々は、公共事業は、必要なものはやらなきゃいけないと思っているんです。これだけ莫大な借金がふえてくる中で、公共事業を含めて歳出を見直さなきゃいけないのは事実でしょうが。それを、それでまた初めにやり出したのは、小泉政権からですよ。
これは、国全体とする中で、しかも、今、一般歳出に占める社会保障の割合は五四%ですよ。二〇〇〇年には三五%だったものが、今五四%になっている。そういうことの中で、借金は一千兆になった。そして、歳出の中で四分の一を借金の返済に充てなきゃいけない。しかも、四分の一の借金を返すのに倍の借金をしているじゃないですか。税収見込みと借金による収入が一緒という異常な状況じゃないですか。そうなれば、当然ながら、公共事業費も含めて見直していかなきゃいけないというのは当たり前のことじゃないですか。
次のパネル(配布資料)を見ていただきたいのでありますが、この左上を見ていただきたいと思います。
左上を見ていただくと、この上のところが何かというと、建設躯体工事の職業の有効求人倍率、これは九ぐらいですよ、九。東日本大震災からどんどん上がっていく中で、九まで上がっている。そして建築・土木・測量技術者というのは、今、有効求人倍率が五超ですよ、五超。
その下を見てください。ここが一つの大きなポイントなんです。先ほど、資材の価格は、太田大臣がお答えをされたように、被災三県における資材の価格というのが上がっているというのはありますけれども、実は、建設技能労働者の不足率というのは、東北地方よりも関東の方が多いんです。つまり、今、全国的に、建設労働者の人手が足りない、技術者が足りないということの中で、仕事ができない状況になってきている、こういうことなんですね。
さて、これを見て、景気対策のために、機動的な財政出動の中心として公共事業をやってこられましたよね、安倍総理。こういう労働市場の逼迫ということがある中で、先ほどの入札不落の問題も含めて、これから公共事業を例えばカンフル剤として景気対策に使うんだということの中で、この労働市場が制約要因になると思われませんか。
○太田国務大臣 技能労働者、特に若手の人、鉄筋工とか型枠工、ここに入ってこないという状況がありまして、高齢者が多くなったということもありまして、技能者の不足というのは、これは東北の復興ということ以上に、全国的な傾向でございます。それゆえに、ことしの三月終わりに労務単価を十数年ぶりに大幅に上げさせていただいて、全国一五%、そして被災地では二一%上げさせていただいた。
若者が入れるように、そして、公共事業というものが何か悪いものであるというのではない、これから必要な公共事業はやらなくてはいけないし、防災、減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化、こういうことをしっかりやらなくてはいけないという誇りを若い人にも持っていただけるような、そうしたところに持っていけるようにということで、今私は努力しているところであります。(拍手)
○前原委員 全くもって拍手するところじゃないですよ。公共事業は、必要なものはやらなきゃいけないのは当たり前じゃないですか。選択と集中の中で本当に必要な公共事業をやっていくということで我々は公共事業の見直しをやってきたんです。
例えば、我々が河川の見直しをやった中で、今でも太田大臣のもとで河川の有識者会議をまだやっていただいているでしょう。(発言する者あり)あの中で、八十三の本体工事をとめて、そして、確かに、話があったように、八ツ場ダムはとまりませんでしたよ。しかし、とめたダムの中で、今の基準に見合って不必要なものは三分の一出てきている。その三分の一を、これは今の自公政権の中でもとめてもらっているんですよ、我々がつくった有識者会議の中で。
こういうふうに、時代に合った公共事業があるかないかということを含めて選択と集中をやるのは当たり前で、その中で総量を減らしていくのは、今の財政状況から考えたら当たり前じゃないですか。それを、何も我々が公共事業が悪だと言って公共事業を減らしたわけじゃない。
では、この右の図を見てください。建設事業者の少子高齢化。この図を見ていただいたら、全産業に占める五十五歳以上の方々、全産業に占める二十九歳以下の方々、これと建設業を比べると、いかに建設業が高齢化が進んでいて、この建設業、二十九歳以下、太田大臣、先ほど若者が誇りを持ってというふうにおっしゃいましたよね。この図はどこから減り始めているかというと、一九九七年からですよ。
九七年から二十九歳以下の方々は減り始めているじゃないですか。このころは何政権ですか。自公政権じゃないですか。自公政権の中で、そして建設業界の中に若い人たちが入ってきたかという話ですよ。それは努力をしてもらいたいですよ。そういうふうに、政権交代の中での考え方の違いの中で相手を誹謗中傷するようなことではなくて、今の建設業というものが、高齢化が進んで、若い人が入ってきていない。
私が申し上げたいのは、財政出動というものをこれからやったとしても、公共事業を例えば国土強靱化でふやそうとしても、人的な制約があるでしょう、それを認めますかということを言っているんじゃないですか。総理、お答えください。総理、総理の三本の矢の話を聞いているんじゃないですか。
○甘利国務大臣 成長戦略にかかわることですので、一言お話をいたします。
成長戦略の捉え方は、日本が直面している社会課題にどう対処していくか。その中では、一斉に、過去、高度成長期のインフラが耐用年数を迎えてきております。そこにやはり事業のニーズが起きるわけであります。これはほっておくわけにはいきません。
そこで、委員おっしゃるように、財政的な制約があります。そこで、それを工夫するために、民間資金をどう本来使っていない公的な事業に導入するかという、PFIの手法で財政的な問題をクリアしようと思います。
もう一つ残るのが、御指摘の人的なことであります。これは国交省にいろいろと発注の仕方や効率的な仕事の仕方を研究していただきますが、その上でも足りなくなるかもしれません。いろいろTPPでも、政府の発注する仕事に対して内外無差別という議論もあります。場合によっては外からの人手をかりて、その事業を外にも開放して、そういう中で人的な処理をしていくという手法も考えなければいけないかとも思っております。
○前原委員 ちょっと、総理に答えてもらってください。
私は、総理がおっしゃっている三本の矢の中で、機動的な財政出動というのは人的制約要因が出てきている、それを認めますか、どうですかということを聞いているんですよ。
○安倍内閣総理大臣 この人的な制約要因においては、なるべくそれに対応するよう先ほど国交大臣からも答弁したところでありますが、そもそも、先ほど前原委員が、金融政策と財政政策については、たかがこの二つの政策によって長続きしないという話をされましたが、しかし、十五年間ずっとデフレだったんですよ。そのたかがとおっしゃった大胆な金融政策と財政政策をやらなかったから十五年間ずっとデフレだったんですよ。このこびりついたデフレマインドを変えるというのはそう簡単なことではなかった。民主党政権時代の三年間もできなかったじゃないですか。
だからこそ、私たちは、今までとは違う、第一次安倍政権のときとも違いますよ、あのときもできなかった。その反省の上に立って、今回は、大胆な金融政策と、そして機動的な財政政策、マクロ的な観点から、この思い切った財政政策もとったんですよ。そうしなければ国民のこのデフレマインドは変わらないと判断したからであります。その結果、変わったわけですよ。今おっしゃったように、最初は、それでも為替市場も変わらないし、恐らく証券市場も変わらないというふうに私は非難されました。でも、それは変わったじゃありませんか。
それによって、資産効果というのはあるんですよ。株価が上昇していくことによっての資産効果によって、消費を押し上げているのは間違いありません。そして、デフレから脱却をしなければ名目GDPは、当たり前なんですが、これはふえていかないわけでありまして、それによって初めて税収は安定的にふえていくわけでありまして、そうならなければ財政再建はできないんですよ。
デフレから脱却をして名目GDPを引き上げていかなければ、デフレからは脱却できない、そして財政再建もできないわけでありますから、我々はこの道をとっているということでありまして、今回も、マクロ政策的に、消費税を引き上げる上において、これぐらいの対応が必要だという判断をしたところでございます。
○前原委員 まず、平成八年から平成二十年、これは自民党政権ですよ、ずっと。この自民党政権で、国民所得はどれだけ上がったと思われますか。マイナス八・四ですよ。ずっと下がってきたんだ。自公政権で上がらなかった。まずそれを一つ申し上げる。
民主党政権で何もできなかったとおっしゃるけれども、これは申し上げておきたい。数字はうそをつきませんから。需給ギャップは三十五兆円から十五兆に縮小しましたよ。そして、GDPはふえましたよ、実質GDPは。名目GDPは減らなかった。つまりは、需給ギャップが縮小するようなことを我々はやったんですよ。そして、失業率は五・四から四・二に減りましたよ。有効求人倍率は〇・四三から〇・八二に上がった。
我々の三年三カ月で、いろいろな批判はあるけれども、民主党でできなかったという一言で切って捨てるのはやめてもらいたい。我々がやったときでも需給ギャップは縮まったし、経済は成長した。失業率は減って、税収もふえた。これは、数字はうそをつきませんから、後で十分調べてください。
その上で、安倍さんに今聞いたのは何かというと、この財政出動によって、公共事業にかかわる方々の人的要因で制約がある、太田大臣がおっしゃったようなことでできるというふうにおっしゃったけれども、本当にできるのか。私は、それはできないということを申し上げているんです。
ですから、これからは、我々はやはり、このデフレから脱却、それは先ほど申し上げたように必要でありますよ。公共事業にできるだけ依存しない、公共事業は選択と集中。そして、建設業界の方々から言わせると、コンスタントに発注されることが一番いいんですよ。補正予算でぼんと出して、ほら、使え、これが一番困るんですよ。だから入札不調も出てくるんだ。そういうようなことを踏まえて我々は建設的な議論をしているのに、そういった答弁をされるのは、私は非常に、狭量というか、視野が狭いという気がいたしますよ。
では、順番を変えて、日銀の話にいたしましょう。
黒田総裁、二年で二%の物価上昇という目標は変わりませんか。それと、実現は可能ですか。この二点について簡潔にお答えください。
○黒田参考人 二%を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に達成するという目標、それからその可能性についての私どもの見方は、全く変わっておりません。
○前原委員 では、市場はどう見ているか。
ブルームバーグが日銀ウオッチャーに対して今月の初めに行った調査を幾つか紹介したいと思います。
ある外資系証券チーフエコノミスト。日銀の一四年度実質GDP成長率見通しは高い。日銀は、消費税率引き上げ直後の展望リポートで、つまりは来年の四月ですね、一四年度実質GDPの見通しを引き下げ、追加緩和に打って出るだろう。
別の外資系証券チーフエコノミスト。日銀は、一四年度のCPI見通しを高目に設定しているため、来年中に、彼らの設定パスと実際のCPI、つまりは物価上昇率との乖離が広がり出したところで追加緩和を余儀なくされる可能性が高い。
さらに、別の国内証券会社チーフ金利ストラテジスト。日銀の次の一手は、来年秋ごろ、量的・質的緩和の一年延長。このころになると、日銀の物価見通しと現実の乖離が大きくなっていると見られる。
こういう見方をしている人たちもいるということであります。
では、このパネル(配布資料)をごらんください。最後のページ。総理、日銀総裁もごらんいただきたいと思います。
消費者物価指数の推移であります。この左上を見ていただきたいわけでありますが、確かに、総合指数、CPI、それから、生鮮食品を除く総合指数、コアCPI、ともに二〇一三年六月に前年比プラスに転じています。これをもって今答弁をされたんだと思いますけれども。
ただ、量的金融緩和が円安を、今九十七円台ですか、九十八円近く、これを引き起こして輸入物価が上がっている。食料品それからエネルギー、こういったものが上がっている。そのことによって、今原発がとまっていますので、電気料金も上がっている。このような、食料品とか電気代やガソリン等のエネルギー価格、こういうものを除いたもののコアコアCPIは、確かにマイナス幅は減じていますけれども、まだマイナスですよね。
つまり、今の物価上昇というのは、需給が逼迫をする、本当にいい形のいわゆるディマンドプル型の物価上昇ではなくて、輸入物価が上がることによるコストプッシュ型のインフレになっているんじゃないですか。
総裁、いかがですか。
○黒田参考人 御指摘のように、エネルギー価格の上昇、特に為替の変化を反映したエネルギー価格の上昇が消費者物価を押し上げていることは事実でございます。
ただ、委員も御指摘になりましたように、ほかの要因のものも次第にマイナス幅を縮めてきている。その結果、いわゆるコアコア、食品とエネルギーを除く部分でもほとんどゼロに近くなってきておりまして、私どもの見方では、今後、消費者物価は全体として上方にシフトしていく、その中で、いわゆるエネルギー、食料品だけでなく、ほかのものも全体として上がっていく。
それはなぜかと申しますと、現に、現在のいわゆる潜在成長率を上回る成長が続いている中で、GDPギャップが縮んできております。労働市場もタイトになってきております。一部、賃金も上がってきているわけでございます。
そういう中で、全体として物価上昇率が二%に向けて緩やかに上昇していくというふうに予想しております。
○前原委員 私が指摘をしたのは、確かに下げ幅は縮まっている。だけれども、コアコアで見た場合はまだマイナスじゃないですか。つまり、総合CPIで見られるということでありますけれども、それで二%、二年ということになると、コストプッシュ型のインフレになりますよということを申し上げているわけです。そうではなくて、やはりトータルで見ないといけない。
特に、賃金が上がらない、そして年金がむしろ今物価スライドの中で下がり始めている、おくれて来ますから。そういう状況の中で、輸入物価が上がる、電気料金が上がる、二割ぐらい上がっていますね、ガソリン代が上がるということになると、それは資産を持っている人はいいですよ、先ほど総理が言われたけれども。資産を持っている人はいいけれども、そうでない方々はむしろ生活が苦しくなっているということの中で、無理くりこの量的緩和の中で二年で二%の物価上昇を目指すということは、我々は反対であります。
デフレ脱却は必要。でも、我々は、二%以下のプラスの領域、当面一%めどというものをやっておりましたけれども、それが穏当な金融政策ではないかと私は思います。
先ほど、総理、マインドを変えたことについては評価すると僕は一番初めに申し上げました。でも、先ほどおっしゃったことについて言えば、今変わった、今の指標がいいからということについて言えば、借金は先送りして今の景気刺激をする、異次元の金融緩和で日銀が大量の資産を買う、それは、それぞれの資産は上がりますよ。いいように見えますよ。だけれども、それが出口になるときにどういう財政コストを伴うのか伴わないのか。アメリカだって今苦労しているじゃないですか、出口を、QE3。
こういうようなことを全て、今やっている中でいい数字が出ているからこれはうまくいっているんだで果たしていいんでしょうか。これが先に行ったときに、金利の問題、出口の財政コストの問題、そういうものをトータルで示して、そしてそれを評価するというのが正当な評価の仕方じゃないですか。
黒田総裁、日本という体を診ているお医者さんなんですよ。ドクターはインフォームド・コンセントというのをやらなきゃいけない。今こういう治療をしています、こういう治療をして、今はこういうふうに体がよくなっています、でも副作用もあります。副作用は、先ほど円安の物価上昇と言いましたけれども、そのほかに、出口のときに財政コストが生じるおそれもありますよね。
ずっと今まで、黒田総裁は、出口について考えていないとおっしゃっていた。だけれども……(発言する者あり)いや、今から。総理、それは本音ですよ。それは本音ですよ、総理の。今から出口を考えるべきではない。
ずっとやり続けるんですか、金融緩和をずっとやり続けるんですか。そして、トータルの財政コストというものを考えずに、全部示さないで、今はいい、行きはよいよい帰りは怖いということをやり続けるんですか。どうぞ、お答えください。
○安倍内閣総理大臣 十五年間続いたデフレマインドを変えるのは、そう簡単なことではないんですよ。だからこそ、二%の物価安定目標なんですね。民主党政権時代、一%目途とやりましたよね。ところが、それはきかなかったんですよ、ほとんど。そういう結果が出ているんですよ、申しわけないですけれども。
そして、出口、出口というふうにおっしゃっているんですが、まず、我々はデフレ脱却の道半ばなんですね、デフレ脱却の道半ば。まだ完全に入り口からどんと入っていっているわけではないんですよ。
ですから、これは去年も申し上げていたことなんですが、これはエール大学の浜田先生がおっしゃっていたんですが、ゴルフでいえば、今バンカーに入ってしまったんですよ。バンカーから出て、グリーンに乗らなきゃいけないわけでありますが、そのグリーンの先に崖があるんじゃないかと心配して、ずっとパットでもって打ったって出ないんですね。バンカーから出るためにはサンドウエッジなんですよ。我々はサンドウエッジを持ったんですよ。そして、ボールはグリーンにまさに乗ろうとしているわけでありますから、まずはこの道をしっかりと進めていくしか我々は道はない、このように思っています。
昨年、なぜ我々が政権をとれたか。四―六、七―九、二期連続マイナス成長だったじゃないですか。七―九はマイナス三・六%だったんですよ。私たちの政策によって、一―三はプラス四・一%になったわけですよ。次は三・八%ですよ。(発言する者あり)
それを私たちが、今外的要因だというふうにおっしゃったけれども、そうならないと皆さんおっしゃっていたじゃないですか。うまくいったら外的要因、うまくいかなかったら君たちが悪いというのは通らないんですよ。要は、正しい政策をとることができるかどうか、それにかかっているんだろう、このように思います。
○前原委員 グリーンに乗るかどうかわからないですよ。一緒に崖に連れていかれたらたまらない。だから我々はこうやって議論しているんじゃないですか。だから我々野党の存在があるんじゃないですか。
それと同時に、民主党のときのことばかりおっしゃいますけれども、繰り返し申し上げますよ。民主党政権では、需給ギャップが三十五兆円から十五兆円に縮小したんだ。失業率が五・四から四・二に減ったんだ。有効求人倍率も伸びて、実質GDPもふえたんですよ。そのことはしっかり申し上げておきたい。
それで、黒田総裁、出口のことは今言わないとおっしゃるけれども、出口も示して、つまりは、患者の体全体を今どういうふうに治していて、どういう副作用があるのか、どういう問題があるのかということも示すことがあなたの今の責任でしょう。出口戦略はどういうものがあって、どういう副作用があるのかということをこの国会に示していただきたい。答弁いただきたい。
○黒田参考人 御案内のとおり、現在は、二%という物価安定の目標をできるだけ早期に実現するよう最大限の努力を行っている最中でございます。出口戦略を議論するのはまだ時期尚早であるというふうに思っております。
また、御承知のように、量的・質的金融緩和の出口に向けた対応というものについては、やはりその時々の経済物価情勢あるいは市場の状況などによって変わり得るものですので、今、現時点で具体的にお話しすることは適当ではないと考えております。
○前原委員 これで終わりますけれども、今の答弁は逃げているんですよ。つまりは、将来のことはわからないから出口戦略は語らないということは、おかしいんですよ。出口戦略というリスクも含めて今の金融政策があるんだ、今だけいいということだけで、その結果オーライでやられたらたまらないということを申し上げて、私の質問を終わります。