前原誠司(衆議院議員)

日々是好日

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毎日新聞・政治プレミア・前原誠司の直球曲球⑬「年金でも生活できるように~医療・介護の自己負担に上限」2019/07/02

毎日新聞「政治プレミア・前原誠司の直球曲球」(201972日)より

 

「年金でも生活できるように~医療・介護の自己負担に上限」 

 

⽼後資⾦「2000万円」の問題でこれだけ反響が⼤きいのは、多くの⼈が年⾦だけでは⾷べていけないのではないか、⽣活していけないのではないか、と⼼配しているためだ。

私は衆院予算委員会などで何度もこの問題をとりあげ「現在の公的年⾦だけでは難しい」ということを⾔ってきた。だから⿇⽣太郎副総理兼財務相は⾦融審議会の報告書を受け取るべきだった。

受け取ったうえで国⺠の不安に答えるためにどういう対応をとるかが政府の責任だ。

 

■⾃⼰負担に上限「総合合算⽅式」

私の考え⽅は現在の年⾦制度をベースに、総合合算⽅式(医療・介護・保育・障害に関する⾃⼰負担の合計額に上限を設定する)を導⼊して⾃⼰負担額を抑え、年⾦でもなんとか⽣活できるような仕組みに変えていくということだ。

国⺠年⾦では40年間分の保険料を全額⽀払っても1カ⽉で約65000円だ。⽣活保護の給付額より低いことを考えれば、現物給付も含めて少なくとも⽣活保護⽔準までは必要になる。

 

■消費税は⼦育てと社会保障の⽬的税に

実現するためには負担についても逃げないで議論する必要がある。

消費税率の引き上げに国⺠の抵抗が⼤きいのは、何に使われるかわからないという不信感のためだ。であれば⼦育てと社会保障の⽬的税にし、他のことには⼀切使わない。同時に年⾦財源が不⾜した場合は、不⾜した分だけ消費税率を引き上げることも理解してもらう。

そのうえでマイナンバーを徹底し、所得(フロー)だけではなく資産(ストック)もしっかり把握して、年⾦をもらっている⼈であっても負担すべき⼈には負担してもらう。

また総合合算⽅式はあくまで⼀定の所得以下の⼈を対象としたものだ。

⾼所得者に対しては所得に応じて負担をしてもらう。

こうした「嫌なこと」も説明しながらトータルで⽼後の安⼼を保障するパッケージを⽰す。

 

■最低賃⾦引き上げと内部留保活⽤

アベノミクスで円安によって輸出企業を中⼼に株価が上がり、資産価値は上がった。しかし株を持っている⼈は2割ぐらいだ。8割の⼀般国⺠には恩恵がない。物価が上がって実質賃⾦が下がり、格差が拡⼤する構造はそのままだ。

そこで国⺠⺠主党の参院選公約では最低賃⾦を1000円に引き上げることを掲げた。1000円でもまだ低いが、段階的に引き上げる。

また、企業の内部留保は440兆円以上(2017年度)になっているのに賃⾦に回っていない。内部留保になんらかの課税措置をとるか、あるいは賃⾦に回せば恩恵があるようにして、内部留保を動かさなければいけない。

賃⾦が上がり、⽣産性が⾼くて⾼い賃⾦を払える企業が⽣き残り、かつ⾼い賃⾦が消費に回るという好循環を作らなければならない。本来は与党と野党が最低賃⾦を上げる競争をしてもいいぐらいだ。

中⼩企業には難しいという意⾒があるが、急に上げるのではなく段階的に上げる。そして企業努⼒を促し、中⼩企業が⽣き残れるような⽀援をしていく。

賃⾦が上がるということは、ひいては年⾦制度にもプラスに働く。そうした好循環を作る制度設計が必要だ。

 

■後ろ向きだった30年を変える

平成21990)年度当初予算と平成312019)年度予算を⽐較すると興味深いことがわかる。

税収は約60兆円でほぼ同じ。ところが歳出は平成2年度は66兆円なのに平成31年度は99兆円で、ほぼ1.5倍になっている。

しかも⼤きく伸びている⽀出は社会保障と国債費(借⾦)だけだ。平成の30年で公共事業費も地⽅交付税もほとんど増えていない。防衛費も1兆円ぐらいしか増えていない。つまり⽇本は前向きの新たな投資ができていない。

⽶中は⼈⼯知能などの先端技術や⼈材育成、スタートアップ⽀援などに資⾦を⼤量投⼊して国家間競争をしている。⽇本は明らかに乗り遅れている。

この30年というのは本当に「失われた30年」だ。政治が機能せず、政治家が税収を上げる努⼒をせず、少⼦⾼齢化という⾃然に流されてきた結果、借⾦だけが増えた。

国⺠には負担をお願いする。⼀⽅で最低賃⾦を上げ、企業の内部留保を活⽤して税収増をはかる。結婚を希望してもできない若者には住宅⽀援などで思い切った⼿を打つ。メリハリのきいた政策を打ち出して、後ろ向きだった平成の流れを変えることが⼤事だ。

 

<出典:毎日新聞「政治プレミア」http://mainichi.jp/premier/politics/

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