毎日新聞「政治プレミア・前原誠司の直球曲球」(2018年11月27日)より
「『ユニコーン』乏しい日本 教育・研究に投資必要」
日本が人材育成にカネをかけてこなかったツケがたまってきている。
設立10年未満、評価額が10億ドル以上、未上場の企業を「ユニコーン」という。2018年10月現在で世界に278社、米国に132社、中国に79社あるが、日本は1社しかない。
■10年先はノーベル賞は出なくなる
ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京大特別教授は以前、私の選挙区に住んでおられた。現在は毎年のようにノーベル賞の受賞者が日本から出るが、このままいけば10年、20年先は非常に厳しくなると話されていた。
日本の研究開発投資の額はずっと横ばいで米国や中国にはるかに劣っている。もはや周回遅れ、あるいは2周遅れかもしれないが、今からでも教育と研究開発に大胆に投資する必要がある。
人口が減少したうえに国際競争力も失っては日本は二流、三流の国になってしまう。政治家として放置できない。
スタートアップ、起業する人材が大事だというが、先端的、創造的な人材は一朝一夕にできるものではない。まず教育環境から整えていかなければならない。10年、20年かかっても今からやっていかなければならない。
まずは裾野を広げるために教育の無償化を進める。そのうえで優秀な人材を選抜するエリート教育のあり方を考える。そして基礎研究に継続的に予算を配分する。
そうしたことをしないと日本の国としてのステータス、尊厳が保てなくなる。
■米中印に人材が流出
日本の研究開発投資額が伸び悩んでいる結果として、優秀な人材が米国や中国、インドに流出している。本来は日本が優秀な人材をひきつける磁力をもたなければならないはずだ。逆に言えば、米国や中国、インドは世界中の人材をひきつける力を持っているから発展する。
良いか悪いかは別として、中国はイノベーションを目指して国家戦略がすべて同じ方向に進んでいる。軍事、製造業、科学技術、経済圏構想の「一帯一路」、アジアインフラ投資銀行(AIIB)。さまざまなものが一つの戦略上にあり、全体を押し上げている。
日本にも一定の戦略が必要だ。教育と研究開発の分野に予算を重点配分しなければならない。
教育への支出は言い換えれば子どもと若者への支出だ。子どもへの支出を増やすことは最終的には少子化対策にもつながる。
消費税率の引き上げなどによる一定の負担増を前提に財源を確保し、高齢者には安心できる医療・介護の水準を保証したうえで、若者には教育を中心に戦略的に投資していくことが必要だ。
<出典:毎日新聞「政治プレミア」http://mainichi.jp/premier/politics/>