前原誠司(衆議院議員)

国会議事録

国会議事録

第186回国会 衆議院財務金融委員会2014/04/23

前原委員 おはようございます。民主党の前原でございます。
 まず、委員長そして理事の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。おとついの水戸での現地視察というのは大変有意義なものでございまして、ああいう機会を設けていただきました委員長、また菅原、古本両筆頭理事初め理事の皆さん方には感謝を申し上げたいと思います。伺ったことを時々ちりばめて質問させていただきたいと思います。
 まず前半は、黒田日銀総裁、お忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございます。日銀総裁にお話を伺いたいと思います。
 去年の四月四日でございましたか、異次元の金融緩和を発表されまして、一年が経過をいたしました。その検証を総裁とともにやらせていただきたいというふうに思います。
 お配りをしている資料の一(配布資料)をごらんいただきたいと思います。
 「異次元の金融緩和の効果?」ということでありまして、これはよく使わせていただいているものでありますけれども、新規発行の約七割程度の国債を購入して、マネタリーベースは着実に積み上がっていっている、しかしながら、市中に供給される通貨の総量を示すマネーストック、そして法人向けの貸出残高というものは余りふえていない、こういう状況であります。法定準備を超えた超過準備残高がどんどん積み上がっていっているということでございます。
 このマネーストック、法人向け貸し出しが伸びていないことについて今総裁はどう総括をされているのか、まずお伺いしたいと思います。

 

黒田日銀総裁 御指摘ございましたとおり、昨年の四月四日に量的・質的金融緩和を導入いたしました。
 その後、金融資本市場の動向を見ますと、非常に緩和した金融環境というのが続いておりまして、貸出金利は既往最低水準ということでありまして、短観等を見ましても、企業から見た金融機関の貸し出し態度も改善傾向が続くということでございます。そうしたもとで、銀行貸し出しの残高は二%台前半のプラスで推移しておりまして、中小企業向けの貸出残高も前年比プラスで推移するということで、業種や企業規模にも広がりが見られているというところでございます。
 なお、委員御指摘の中小企業、大企業等の法人貸し出しの動向でございますが、企業収益の改善というもとで、設備投資はある程度の回復を見ているわけですが、手元の資金の流動性が潤沢にある大企業が多いということで、大企業向けの貸し出しはこのところ若干伸びが鈍化しております。他方、中小企業向けの貸し出しは伸びが高まってきております。
 私どもから見た金融機関の貸し出し状況というものは、経済に見合った形で伸びてきておる、今後さらに伸びていくことが期待されるというふうに思っております。

前原委員 先般の水戸での視察におきまして中小企業の団体の代表の方からお話を伺いましたけれども、総じて言われましたのは、もちろん我々が伺った茨城県の水戸というところに限定をされた話でありますけれども、特に中小企業においては、これだけ緩和した状況であるにもかかわらず、貸し出しというものがなかなかしてもらえない、こういうお話がございました。かなり厳しい話がございました。
 きょうは内部留保の推移の表は持ってきておりませんけれども、私は以前、では大企業の内部留保がどう推移しているかということもあわせて見ましたけれども、それほど大きく変わっておりませんよ。つまりは、内部留保も大きく変わっていない、そして、これだけ金融緩和を行う中で、法人向けの貸出残高が伸びていないということ。
 先ほど総裁は大企業向けは鈍化しているということでありますけれども、緩和した状況で金利を下げて、そして借りてほしいにもかかわらずなかなか借りてもらっていないということにおいては、確かに、円安によって企業業績というのは改善をしているところがあるというのは事実でありますし、私は異次元緩和を全面的に否定するものではありません。しかし、総裁が狙っておられた、この一年間でもっと貸し出しというのは伸びるんじゃないかと思っておられたと私は思うんですけれども、そこはいかがですか。

黒田日銀総裁 その点は、いわゆる量的・質的金融緩和を導入いたしました際に、その政策の効果が実体経済に及ぶ三つのチャネルを想定していたわけでございます。
 一つは、長期金利あるいはリスクプレミアムに働きかけて、それを抑制するという効果。二番目が、金融機関その他の投資家のポートフォリオが、いわゆる国債等の債券から、貸し出しあるいはその他のリスク資産にシフトしていくという効果。三つ目が、さまざまな経済主体の期待の変化、デフレ期待というものがだんだん緩和されていって、物価とか経済の動向に対する期待が変わっていく。この三つを考えていたわけでございます。
 その中で、ポートフォリオリバランスの効果というのはいろいろな形があり得るわけですが、その一つが確かに銀行貸し出しということでございまして、その点については、どのくらいの伸びということを具体的に前提にしていたわけではございませんが、全体としてはおおむね経済活動に沿った伸びになっておりますので、期待外れの伸びということはないと思いますが、先ほど申し上げたように、このところ、大企業向けの貸し出しは若干伸びが鈍化している、一方、中小企業向けの貸し出しは伸びが高まっているということは事実でございます。
 大企業向けの貸し出しの中にはさまざまなものがありまして、大企業の方は、好調な社債とか株式による資金調達という部分もありますし、それから、内部留保がどんどん積み上がっているわけではないとしても、毎期の収入、利益として入ってくるものが相当多ければ、確かに、運転資金にしても設備資金にしても、それほど銀行からの大量の借り入れを必要としないという面もあるかもしれないということでございます。
 今後の動向としては、私どもも、やはり銀行貸し出しは趨勢として伸びが高まっていくのではないかというふうに期待しております。

前原委員 法人向け貸し出しの中身について少しお話をしたいと思うのでありますが、資料の二(配布資料)をごらんいただきたいと思います。
 私は、思っていた以上に、つまりは超過準備が積み上がり、あるいはマネタリーベースが積み上がっていく割には、法人向け貸し出しが伸びていないというふうに思うわけでありますが、その中においても、実は、不動産向けの貸し出しというものがかなり多くなってきているのではないかと思うわけです。
 土地の値段が上がるということについては、これは一つのデフレ脱却になる面もあるわけでありますけれども、しかし、緩和されたマネーというものが、実体経済の改善につながるだけでなくて、要はこういう不動産投資というものにより向けられて、結果的に中心市街地などの土地の値段が上がるということで、不動産バブルを生み始めているのではないかというような見方も出てきているわけです。
 私もいろいろな都市を回っている中で、九州のある地方都市の地銀のトップと会いました。その方もおっしゃっていたのは、やはり不動産向け融資がかなり伸びています、こういう言い方をされていたわけですね。
 この図の左側を見ていただいたらわかるように、二〇一三年四月四日以降、不動産向けの融資がより伸びているということと、右を見ていただきますと、産業向け投資においては四五%が不動産業ということでございます。もちろん、もともと不動産業というのはある程度、土地を買ったりして、ディベロッパーなんかがお金を借りて行うのはあるんですけれども、しかしながら、製造業、医療・福祉、ほかの面より、不動産業の比率がかなり高いのではないかと思います。
 この不動産バブルを生み起こしているのではないかという懸念については、どう答えられますか。

黒田日銀総裁 今回の景気回復の一つの特色が、内需主導型であるということだと思います。消費、住宅投資等、内需を中心にして景気が回復をしてきているということでございます。
 その一環として、個人の住宅投資というのも趨勢的にふえてきておりまして、そういった面で、企業の側から見て、不動産業が銀行からの借り入れをふやして住宅建設あるいはさまざまな不動産への投資を行っているということだと思います。
 現時点で、私ども、当然、金融緩和の推進に当たりましてはさまざまなリスク要因を点検しておりますけれども、不動産市場あるいは金融資本市場、金融機関の行動において、過度な期待の強化など金融面の不均衡を示す動きは観察されておらないというふうに思っておりまして、我が国の金融システム全体として安定性を維持しているというふうに判断いたしております。
 ただ、委員御懸念のように、不動産業というのは、過去においても、それから欧米においても行き過ぎた投資があって、それがその後に経済あるいは金融システムに影響を与えた例もございますので、私どもとして、引き続き十分注視をしていきたいと思っております。

前原委員 消費税の引き上げ前の駆け込み需要もあるかもしれません。そういった面も含めて、これから、法人向け貸し出しが低調な中でこの不動産向け貸し出しがやはり伸びているということについては、今総裁がお答えをされましたように、過去のバブルの経験、歴史上も、あるいは世界じゅうでそういったバブル、不動産バブルだけではなくてさまざまなバブルが起きているわけでありますので、そういったものについてもしっかり目配りをしていただきたいということは申し上げておきたいと思います。
 この異次元の金融緩和によりまして円安が進み、そして企業収益は確かに改善をしました。しかし、自動車産業などを除きまして、為替効果で収益はふえましたけれども、数量ベースではふえていない企業が散見をされます。
 財務省が一昨日発表した二〇一三年度とことし三月の貿易統計の速報によりますと、一三年度は、前年度に比べて輸入が二・四%ふえたのに対して、輸出は〇・六%増にとどまっているんですね。しかも、三月は二・五%減になっているということであります。これは、言ってみれば、貿易赤字、あるいは貿易赤字の拡大、ひいては経常収支についても大きな懸念材料になってきているということであります。
 大規模な金融緩和によって円安にして、輸出を後押しして、国内の生産や雇用をふやそうとする狙いは、現在のところ、一年たってもうまくいっていないのではないですか。今の実態の数字を申し上げましたけれども、いかがですか。

黒田日銀総裁 輸出にやや勢いが欠けるという背景にはさまざまな要因があると思いますが、我が国の製造業の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が作用している可能性もありますけれども、このところの輸出に勢いが欠ける背景として、基本的には、やはり我が国経済との結びつきの強いASEAN諸国などアジアの新興国経済のもたつきの影響がかなり大きいと考えております。
 最近は、これらの要因に加えまして、消費税引き上げ前の駆け込み需要への対応から国内への出荷を優先しまして、輸出の方を抑えるという動きがどうも二、三月ごろあったようでありますし、また、御案内のように、米国における大変な寒波の影響もあったということが言われております。こういった一時的な要因も輸出を下押しする方向に作用してきたというふうに思っております。
 先行きについては、これらの一時的な要因というのは剥落するということに加えまして、海外経済が先進国を中心に成長率を高めていくということで、アジアの新興国も今後成長率を高めていく、これはIMFの世界経済見通しもそういうふうになっておりますから、そういったことから、輸出は緩やかに増加していくのではないか。
 一方で、輸入面では、駆け込みの輸入というのもあったわけですが、それも剥落していくということで、貿易収支は徐々に改善していく、黒字になるということは申し上げられませんけれども、改善していくというふうに見ております。

前原委員 私は、先月、アメリカ・ワシントンに行きまして、なぜアメリカが今のような円安を容認しているのかということをいろいろな方に伺いましたところ、一義的に皆さん方がおっしゃったのは、アメリカの経済がよくなったから円安を容認しているんだ、こういうことをおっしゃっていました。
 もちろん、異次元緩和の、バズーカ砲と言われた大きなインパクトというのはあったと思いますけれども、今総裁がおっしゃったように、この一年、これから指摘をしますけれども、いろいろな問題点があったにしろ、何とか雰囲気がよくなっていっているというのは、やはりアメリカの景気回復というのは大きかったと私は思いますよ。しかし、そのアメリカの景気回復の中でも、若干心配なことはありますね。例えば、去年の暮れぐらいから、米国の十年国債の利回りは落ちてきていますね。三%ちょっとだったのが、今、二・七%ぐらいまで金利が落ちてきているわけであります。
 それから、中国も、製造業の購買担当者指数、PMIというのが、三月は四八・〇ということで、五カ月連続で下がっている。商船三井の船舶の差し押さえの事案というものがあって、これから日中の貿易がどうなっていくのかということもあるでしょう。また、中国の減速によって、先ほどおっしゃったエマージング、新興国の経済がどうなっていくのかということで、さまざまな要因があると私は思うんですね。  その中で、円安にしているにもかかわらず輸出が伸びていない。今、幾つかのテンポラリーな要因ではないかということをおっしゃっておりましたけれども、私は、余りそこは楽観視をすべきではないということで、そこは日本の経済構造の問題も含めて考えていかなくてはいけないところではないかというふうに思っております。
 次に、物価であります。これは三ページの左上(配布資料)をごらんいただいたら結構かと思います。
 これについては、コアのCPIとおっしゃっていたと思いますけれども、二年で二%の物価上昇というものを実現するんだということで、恐らく、総裁が思い描いていた状況をたどっているのではないか、こう思っているわけであります。民間はなかなか厳しい見方をしておりますけれども、今後の見通しと、あと、この間総理とお会いになられたときに、必要ならちゅうちょなく調整するとおっしゃったと伺っておりますけれども、ちゅうちょなく調整するとおっしゃったその調整手段というのはどういうものが考えられるんですか。
 今後のCPIの見通しといわゆる調整手段について、お答えをいただきたいと思います。

黒田日銀総裁 今後の物価上昇の見通しにつきましては、現時点では、委員の示しておられます三ページの表の中にございます、日本銀行の政策審議委員の見通しの中間値というものが示されておりまして、二〇一三年度は〇・七%、そして二〇一四年度が一・三%、二〇一五年度が一・九%という見通しになっているわけです。恐らく二〇一三年度は〇・七%よりも少し高目になっているのではないかというふうに思っておりまして、物価の今後の見通しにつきましては、今月末の展望レポートで委員の方々の新たな見通しを明らかにすることになると思いますが、現時点では、こういった見通しで、順調に二%の物価安定目標に向けて道筋をたどっておるというふうに思っております。
 民間の方々の見通しというのは、それぞれ民間の見方でございますので、私どもからとやかく申し上げることはできませんが、昨年、量的・質的金融緩和が導入されたころに、民間の方が今ごろの物価上昇率はどのくらいかという見通しを立てておられましたが、多くの方は、〇・五%行くか行かないかという見通しでございました。
 それが、現時点で、足元は一・三%になっておりますし、二〇一三年度全体も〇・七%よりも少し上に行くかもしれないということでございますので、私どもとしては、民間の見通しと現時点では違っておりますけれども、物価の見通し、私どもの見通しに従って、これまでのところ、順調に道筋をたどっているというふうに見ております。
 なお、そういった物価安定の目標へ向けての道筋から外れるような懸念があるというような事態に立ち至った場合には、常に私は申し上げていますけれども、必要になればちゅうちょなく調整するというふうに申し上げております。
 今申し上げたとおり、これまでのところは順調に道筋をたどっておりますので、現時点では、あくまでも、今の量的・質的金融緩和を、二%の目標の実現を目指してこれを安定的に持続するために必要な時点まで継続するということに尽きるわけですが、何らかのリスク要因で見通しが変われば、当然、必要な調整は行いますし、その調整の手段というのはいろいろあると思いますが、それは、そのときの経済・物価情勢あるいは金融市場の動向などを踏まえて、適切に判断するということになると思います。

前原委員 後者の質問は、詰めてもお答えしにくい質問だろうと思いますので、これ以上聞くことは差し控えますけれども、ただ、今の話の中で、私はこれから総裁に、CPIはこれはいいねということなんですけれども、二つのことをそれを前提に伺いたいというふうに思うわけであります。  一つは、四ページ(配布資料)をごらんいただけますか。
 金融緩和で名目金利というものを抑えている、名目金利から予想インフレ率を引いたものが実質金利であるということであります。これがどうなっているのかということを一九九〇年からずっと見てきておりますけれども、実質金利がマイナスに至ったのは、一九九七年それから二〇〇八年という二回ぐらいなんです。これは、要は政策手段としてこうなったわけではなくて、外的要因でこうなって、戻っているわけであります。
 今回の場合は、異次元の金融緩和によって国債を大量に購入されるということを行う中で、金利も抑えて、そしてCPIを上げる、予想インフレ率を高めていく、こういうことです。そうすると、どうしても実質金利が政策的にマイナスになるということで、右を見ていただきますと、実質金利というのは、二〇一三年十月からずっとマイナスになって、このマイナスの下げ幅というのが大きくなっていますよね。
 これは実際、実質金利がマイナスということはどういうことかというと、借金をしている者にとっては楽になり、そして、資産を持っている者にとっては、要は、課税をして召し上げられるということに等しいわけじゃないですか。そういうことに今なっているという認識はお持ちですか。

黒田日銀総裁 実質金利の計算の方式は、委員の御指摘の表のとおりでありまして、名目金利から予想インフレ率を差し引いたところが実質金利ということでございます。
 名目金利は市場で成立しておりますのではっきりしているわけですが、予想インフレ率というのがなかなかはかりがたいわけでございます。
 一つの有力なはかり方が、物価連動国債を使いまして、物価連動国債の市場の関係者がインプリシットに考えているインフレ率はこのぐらいだろうというふうに、固定金利の国債と物価連動国債の金利を比較することによって計算が可能でございます。それが一つの有力な方式でございます。
 もう一つの方式は、さまざまなアンケート調査によって、エコノミスト、市場関係者、企業等の見通しを聞きまして予想インフレ率を計算して、こういった式で実質金利を計算するということになります。
 最初に申し上げた物価連動国債の金利を利用して予想インフレ率をとりまして、それを見ますと着実に上昇しておりまして、実質金利は、その計算によりますとマイナスになっているということはそのとおりでございます。
 金融緩和の局面で、どうしても、金利が実質的にはマイナスにならなくても、実質金利がどんどん下がっていきますと、当然ですけれども、借り入れている人には有利になり、貯蓄している人には不利になるという面があることは否めませんが、金融緩和は、あくまでも、そういったことを通じて経済を回復させ、そして物価の安定を目指すということでございまして、御指摘の点は十分理解しておりますけれども、こういったことを通じて、より投資、消費を刺激、促進して、経済の回復、物価安定目標の達成に向けて全力を挙げて努力しているというところでございます。

前原委員 今お認めになったように、実質金利が下がれば、特にマイナスになれば、資産を持っている人たちは実際に課税をされて取り上げられるということになる、そして、借金をしている人間はその分楽になるということ。これは国民は知りませんよ。
 消費税を上げるということについては、国会で大変な議論をする中でまとめていった。しかし、実際に金融緩和を異次元でやっていく中で、名目金利を金融緩和で押し下げて、そして予想インフレ率を上げて、だからCPIを上げるというんでしょう、二年で二%、それは順調にいっていると。マイナスじゃないですか、実質金利は。ということは、実際に国民に資産課税を課しているということについて、はっきりとおっしゃるべきじゃないですか。

黒田日銀総裁 資産課税ではないと思いますけれども。
 御指摘のように、金融緩和をする局面では、常に、実質金利が下がっていくことによって、借り入れている人にはより有利になる、あるいは借り入れることが有利になる。したがって、投資とか消費が拡大される。逆に、今度は金融を引き締めてまいりますと、実質金利が上がっていく。この場合には、借り入れている人が不利になり、貯蓄している人が有利になる。借り入れを抑制するということで、金融引き締めによって投資や消費を抑制するということでございます。
 金融政策は、あくまでも、そういった金融市場の動きを通じて、マクロ経済をいわばインフレでもデフレでもない状況にできるだけ早く近づけるということを目的にしたものでございまして、特定の層の所得とか資産についていわば国家権力によって課税をして、歳入を確保するという税とは異質なものであるというふうに考えております。

前原委員 税と異質か同質かという話をしているんじゃないんですよ。
 実質金利がマイナスになることによって、莫大な借金を抱えている国は楽になり、そして国民の一千六百兆になる個人の金融資産は目減りをしている。資産のつけかえによって、結果的に、国が楽をして国民の資産が目減りをしているということを認めますかということを言っているんですよ。

黒田日銀総裁 先ほどから申し上げているとおり、金融の緩和あるいは引き締めの局面、物価の上昇の局面、下落の局面、あるいは金利の上昇、下落の局面といろいろあるわけでございます。
 逆に申し上げますと、長らくデフレが続いておりまして、そのもとでは実質金利が非常に高どまっていたわけでございます。十五年間、九八年から二〇一三年までデフレが続いておりまして、その間、経済の実態との関連でいえば、明らかに実質金利が非常に高どまって、貯蓄者には有利で借り入れる人には不利だったということもあったわけでございます。今はそれがちょうど逆転しているということでございます。

前原委員 では、金利を引き下げて、先ほど言ったように貸し出しは余り伸びていないですね、不動産の方は伸びているけれども、余り伸びていない。そして、円安、株高は実現したけれども、十月―十二月のGDPは、アメリカの景気はいい、財政出動はした、そして駆け込み需要があったにもかかわらず、年率〇・七%じゃないですか。それが今の実体経済じゃないですか。そうしたら、経済をよくすることによって国民に果実を及ぼすんだと言ったって、余り経済が伸びていない。
 だけれども、実質金利がマイナスになることによって資産がどんどん目減りしていっているということは国民は知らないんです。そういうことを、プラス面、マイナス面をしっかり言っていなくて、トータルの話でよくしますと言ったってだめですということを申し上げているんです。
 七ページ(配布資料)をごらんください。
 出口が来るのかという話なんです。長期金利の変動要因、これは政策審議委員の佐藤さんが三月十九日にアメリカのニューヨークでジャパン・ソサエティーで講演されたときの資料です。
 名目長期金利というのは予想短期金利とプレミアム。上に書いてあるのが国債の買い入れ、これだとプレミアムが下がる。上昇要因というのは何かというと、景気、物価の見通しが改善する、あるいは米国金利の上昇、ボラティリティーの上昇、こういったものがある。
 このプレミアムをちょっと除いて考えたときに、予想短期金利の中で、CPIを上げようとしているんでしょう。CPIを上げようとしているということは、予想短期金利は上げるということにつながってくるわけです。ということは、名目金利も上がってくる。しかし、名目金利を抑えるためには国債を買い続けなきゃいけないじゃないですか。
 ですから、これは私が後で申し上げるように、日銀だけのせいだと言っているわけじゃない。一千兆もの借金がある中で苦しいやりくりをされているのはわかっているんです。わかった上で僕は質問をしているんですけれども、金利が上がったら大変なことになりますよね。
 五ページ(配布資料)をごらんください。
 公債残高がどんどん積み上がっていって、そして右肩下がりの金利で、そして今や日銀が異次元の金融緩和でイールドカーブ全体を押し下げて、そして金利を低く抑えている、政策的に抑えています。だからこの利払い費というのは抑制されているけれども、それでも、いわゆる長期債務が大きくなってきているので、金利がちょっとでも上がったら、この利払い費が大変なことになるわけですね。それを苦労されているというのはよくわかった上で私は質問しているんですよ。
 もう一度七ページに戻っていただいて、では、先ほどCPIはうまくいきますよということをおっしゃった。そうしたら、これは名目長期金利がまた上がるということを示すわけですよね。そうしたときに、実際、今度は金利が上がってきたときには、財政に対して非常に過大な負担がかかってくる。それでまた日銀のお尻をたたいて何とかしろと言われたら、これは、仮にコアCPIが二%になったとしても国債を買い続けないと、名目金利を抑えられませんよ。
 どうされますか。本当に出口はあるんですか。

黒田日銀総裁 私どもの金融政策は、あくまでも、二%の物価安定目標を達成しそれを安定的に持続させるということが目的でございまして、そういう目的から離れて、物価安定目標が達成されてしかもそれが安定的に持続しているのに、財政の国債費負担を下げるために金融政策を行うという考えは全く持っておりません。

前原委員 大変な御答弁を今されたと思うんですね。また、日本銀行からすると、そういうふうに言わなきゃいけない。
 八ページ(配布資料)をごらんください。
 これは、安倍政権になってからまとめられた共同声明ですね。これは黒田総裁のおっしゃるとおりなんですよ、日本銀行だけで何とかできる問題じゃないんです、政府にも責任を負わせて、そしてやるべきことをやってもらわなきゃいけない。成長戦略もしかりでしょう。そして同時に、この三番の第二パラグラフ、「また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」、これをやらないと、日本銀行に丸投げしたってだめなんですよ。経済をよくするということで、これは両方やらなきゃいけない、財政健全化と。
 さて、こういった状況の中で、総裁に最後の質問をしますけれども、我々民主党、自民党、公明党、この三党で社会保障・税の一体改革というものをまとめて、二段階で一〇%に上げるということでありましたけれども、しっかりと物価安定の目標をやっていくためには、財政健全化というアンカー、いかりがないとだめですよね、さっきのお話のように。となると、ある程度の経済状況のもとでは一〇%に上げるということをやらないと、私は、むしろ、それこそリスクプレミアム、金利上昇、そして財政に対して非常に大きな影響が出るということになると思いますけれども、お考えはいかがですか。

黒田日銀総裁 御指摘のとおり、持続可能な財政構造を確立するということは、財政にとっても不可欠ですし、日本経済が持続的な成長を達成する上でも必須の前提であると思っております。
 したがいまして、政府は、中期財政計画を立てて、その数値目標の達成に向けて取り組みをしておられますので、日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取り組みが着実に進んでいくことを強く期待しております。
 消費税につきましては、二%のさらなる引き上げにつきましては政府において十分検討されると思いますが、私どもの金融政策の立案、執行に当たっては、法律が通っておりますので、三%に引き続き、来年の十月に消費税が二%引き上げられることを前提に金融政策を行い、かつ、経済、物価の見通しを立てているわけでございます。

前原委員 麻生財務大臣、今の黒田総裁のお考えを聞かれて、また、先ほどの答弁で、日銀法にも書いてありますよ、日銀の大きな目的は物価の安定ですよね、その物価の安定について崩すことはしないということをおっしゃっているわけです。
 ということは、本当に、財政健全化というものは大臣の双肩にかかっている話だと思います。しかも、国際公約である二〇一五年度のPBの二〇一〇年度比半減というのは、八から一〇に上げないと達成できませんよね。それが前提ですよね。今の経済状況というのももちろん前提ですけれども、私はこれは着実に一〇%まで上げるべきだと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 今、日本銀行の総裁からもお答えがあっておりましたとおり、これは基本的に三党合意で、まあ、私に言わせれば、日本の民主主義の成熟度合いはおたくらの国とは違うんだとたんかを切った手前もありますので、これは確実にやっていかぬと、社会保障と税の一体改革におきましても、あれだけの時間と手間をかけて、あれは一〇%を前提で全体を考え出したわけですから、この一〇%ができるような状況にするためには、例の十八条の三項というのがございますので、それに合わせて、私どもとしては、景気をきちっとしたものにしておくというのを、今年度、最も大事なところ、正念場、そのように心得ております。

前原委員 黒田総裁、これで結構でございますので、ありがとうございました。

林田委員長 黒田総裁、御退席ください。御苦労さまでした。

前原委員 それでは、歳出改革の話で、一番大きなところというのは、言うまでもなく、社会保障なんですよね。一般歳出の中で五四%を今や社会保障が占めるようになりました。二〇〇〇年の段階では一般歳出の三五%程度だった社会保障が、高齢化に伴ってどんどん今膨れ上がっている。そういう意味では、この社会保障をどうやって見直していくかということは極めて大事なことであります。
 きょうは、佐藤厚生労働副大臣にお越しをいただいておりますので、持続可能な社会保障を提供するためには、やはり社会保障の中身もしっかり見直さなきゃいけないということで、幾つか具体例を挙げて、少し議論をさせていただきたいと思います。ちょっと時間が足りなくなってきましたので、具体的な話にさせていただきたいと思います。
 まず、お配りをしております資料の九(配布資料)をごらんいただきたいと思います。
 これは病床における問題点ということでありますけれども、七対一、十対一、十三対一、十五対一、厚生労働副大臣初め厚生労働省の方々にはまさに釈迦に説法なんですけれども、七人の患者に対して一人の看護師ということであります。
 私はこれは問題だと思っていますのは、副大臣、二〇〇六年がこの七対一というのはどのぐらいだったかというと、約四万四千床だったんですね。それが、二〇一〇年には三十二万八千五百十八床、そして現在では三十五万七千五百六十九床ということで、要は、診療報酬の高いものにどんどんどんどん。これは、医療機関が勝手に選べるんですよ、七対一か、十対一か、十三対一か、十五対一かということで。どんどん下の方が細って、そして診療報酬の高いものにどんどん行っている。繰り返し申し上げますよ、二〇〇六年は四万四千床だったんです。
 私は、幾らになるかというのはきょうは伺いませんが、やはりこれが結構医療費を高くする一つの要因になっていると思いますけれども、これを見直されるお考えはないですか。

佐藤副大臣 前原委員の御質問にお答えいたします。
 今委員御指摘の急性期医療を担う七対一の入院基本料の病床が、ワイングラス形というようなことでよく言われるんですけれども、非常に過剰になっていて、必ずしも急性期の患者を受け入れていない病床もある、そういう指摘もされている一方で、急性期後の受け皿となる回復期等の病床が不十分であって、病床の機能分化と連携が不十分であるという指摘はそのとおりだと、我々も問題意識として持っております。
 このために、今年度の診療報酬改定において、この七対一の入院基本料について、急性期の複雑な病態を持つ患者に対応する評価となるように、患者の重症度や医療、看護の必要性を十分踏まえた要件に厳格化する、これが膨れ上がらないようにしようということとともに、もう一つは、急性期後の受け皿となる病床の充実等を図るために、新たに地域包括ケア病棟入院料を創設したところでございます。
 これは、きょうから厚生労働委員会でも御審議いただいているんですけれども、今国会に提出しております医療介護総合確保推進法案で、今申し上げましたような病床の機能分化、連携を進めるとともに、医療法を改正いたしまして、病床機能報告制度を創設して、都道府県が地域医療構想を策定することとしているわけであります。
 ポイントとしては、診療報酬と医療法の取り組みを車の両輪といたしまして、急性期からもう少し、今の資料でいうと下の、回復期、慢性期、在宅医療まで、患者が状態に応じた適切な医療を受けられるようにしていく、そういう病床の機能分化と連携をしっかりと厚生労働省としても進めてまいりたいと考えております。

前原委員 その問題と絡んで、十ページ(「看護師紹介市場」に関する朝日新聞2014年1月6日の朝刊一面)をごらんいただくと、これはもう副大臣御承知のとおりだと思いますけれども、当然ながら、いわゆる七対一であればあるほど、あるいはその病床が多ければ多いほど、看護師の数は不足するわけですよね、必要になるわけですよ。そのことによって看護師不足と看護師紹介市場というものが生まれて、そして、診療報酬から病院が紹介業者に対してお金を払うということが行われているわけですよ。
 ですから、先ほど副大臣がワイングラス形とおっしゃった、それをうまく下げていく取り組みをされると同時に、そのことによって適正な人材配置を。そもそも、診療報酬から紹介料が払われるということについては、恐らく想定していなかったと思うんですね。そのことの是正策をどう考えておられるのか、ここで開陳していただきたいと思います。

佐藤副大臣 まず、前提といたしまして、看護職員は二〇一一年段階で百五十万人従事しておりまして、これが高齢化のピークになる二〇二五年には二百万人の看護職員が必要となる、約十五年間で五十万人さらなる確保が必要である、そういう推計が今ございます。
 看護職員確保のために、この資料に提示されたような民間の紹介会社を活用する医療機関も多いと思われるんですけれども、しかし、今御指摘のとおり、その高額な手数料負担が医業経営を圧迫しているという意見も出されておりますし、今言われましたように、そもそも診療報酬という公的なお金がそこに使われているということ自体が問題だ、我々もそのように考えております。この記事にあるような、こうした民間の職業紹介事業について、その運営の実態を把握するべく調査をしている、実態の把握に努めているというのが今の現状でございます。
 その上で、厚生労働省としては、こういう民間の紹介ではなくて、むしろやはり公的な無料職業紹介機能の強化が必要である、そのように認識しております。ハローワークとナースセンターというのがあるんですけれども、まず、このナースセンターについて、ハローワークとしっかりと連携を引き続き図っていくということとともに、ナースセンターが、看護職員の方がいろいろな理由で離職されるというときに、ナースセンターにしっかりと届け出をしていただいて、きちっと早い時期に復職が進められるようなそういう届け出をさせる制度というものも今回、制度改正案を盛り込んで、この法案の中で提出しております。
 こうした施策を通じて、公的な無料職業紹介機能というものをもっとやはり強めていかなければいけない、そういうことをやった上で、潜在看護職員の復職支援というものに努めていくという考え方を進めてまいりたいと思っております。

前原委員 先ほど副大臣がおっしゃったように、看護師は五十万人必要になる、介護士はもっと必要になりますよね。恐らく、医師と看護師、介護士を入れると、二〇二五年までに百万人以上が今よりも必要になってくるということでありまして、こういったマッチングをどうするのかということもさることながら、この不足にどう対応していくかということになれば、話はもとに戻りますけれども、やはり配置基準、こういったものももう少し柔軟にすべきではないかというふうに私は思っております。
 やはり、厚生労働省の方々と話をしていると、もちろん社会保障あるいは労働分野の専門家ではいらっしゃいますけれども、みずからお金を削ってサービスの見直しをするというインセンティブに欠けている方が多いと私は思うんですよ。
 だけれども、やはりこれは、政務三役として入られている、特に安全保障の専門家である佐藤副大臣が、財政というのは国家の安全保障なんですよ、財政が破綻したら大変なことになりますから。そういう意味においては、やはり政務三役で入られている佐藤副大臣のような方が、みずからが効率化させる中で、いわゆる社会保障の、高齢化が進む中でほっておいても上がるわけですから、これをどううまく効率化させていくかとやらないと、特に医療ですよ、医療で本当にしっかりと圧縮できないと財政破綻を起こしますから。そういう意味では、逆に、努力してもらいたいということでエールを送りたいと思います。
 その上で、ちょっと根本的な問題を、私はいろいろなお医者さんと話をしていてこのごろ伺っているのが、政府は在宅介護、在宅医療にしようというふうにしている、これはより金がかかるよと言う方がほとんどですよ。
 そして同時に、先ほど副大臣がおっしゃったように、これは人が足りなくなるわけですね。人が足りなくなるにもかかわらず、しかも、例えば限界集落というもので、独居老人がその限界集落におられて、行き帰りだけでも大変ですよ。
 我が政権のときに進めたサ高住のようなもので、集合住宅で住んでおられるならばそれは話は別ですけれども、本当に別々の家で住んでおられるような方、そこに在宅で医療、介護をやろうと思ったら、私は、よりお金がかかると思うし、マンパワーもそもそも足りないんじゃないかと思うんですけれども、今、厚生労働省が進められようとしている在宅へのシフトというのは、本当に財政的にもマンパワー的にも正しいんでしょうか。

佐藤副大臣 今、前原委員御指摘の問題も含め、前原委員が党内の調査会の会長をされて、財政改革チームでさまざまに私どもの役所に御提言いただいている御意見を踏まえながら、先ほど質問の中で出ましたが、やはり社会保障というのがほっておいても膨れ上がる、これをいかに効率化、重点化していくかということは我々としても非常に大事な観点であると考えて進めてまいりたい、そのように考えております。
 今御質問をいただきました在宅医療また在宅介護については、そもそもの観点が、多くの国民が自宅での療養生活を希望されておりまして、こうした希望を尊重して、可能な限り住みなれた生活の場において必要な医療、介護を老後において受けられるようにすると。そういう観点から進めているというのがこの在宅医療、在宅介護へのシフトということなんですね。
 厚生労働省の調査をいたしましても、アンケートをやると、やはり七割前後の方が、老後において、どこか離れた施設に入るのではなくて、できれば自分の身近な地域でそういう介護や医療も見てもらいたいと。どっちかというと、国民の希望を尊重した、そういう形で今回シフトをさせていただいているというのがこの制度の大きな背景にあるということをぜひ御理解いただければありがたいと思うわけであります。
 そういう観点からやっておりますので、この移行については、社会保障削減の観点から推進していこう、そういうものではないということが今我々の進めているシフトであるということをぜひ御理解いただければありがたいと思うんです。

前原委員 大体意見が合う佐藤さんとはこれは意見が違うんです。
 ニーズがどうかということは、それはしっかり調べてみなければわかりません。ただ、私は、現実問題として、財政とそれからマンパワーの両方から可能なのかということを伺っているわけです。
 では、仮に、佐藤副大臣がおっしゃったように、国民のニーズがあったといたしましょう。だけれども、これだけ借金が多くて、そして人口が減っていく、少子高齢化が進んでいく中でやれるのかという話ですよ。つまりは、財政のサステーナビリティーとマンパワーの問題で、本当に理想とする在宅医療、在宅介護というのができますかという話なんです。そこをやはり考えてもらわなきゃいけないということで私は申し上げているんですけれども、いかがですか。

佐藤副大臣 確かに、財源というのは限りがありますから、そこの観点というものはしっかりと我々も重視しながら、ただ、具体的には、地域医療構想というのを各市町村等ごとにつくっていただくんですね。そこで市町村の将来の在宅医療の必要量をしっかりと示すとともに、医療計画に在宅医療を担う医療機関や訪問看護等の提供体制に係る目標をしっかりと持ってもらう、さらに在宅療養患者の急変時の対応を含めた医療連携体制等をしっかりと盛り込む、こういうことになっておりまして、そういうところもチェックしながら、やはり余りにも財政面でも膨れ上がらないように我々としてもしていく、そういうことをしっかりと心がけていきたい、そのように考えております。

前原委員 麻生財務大臣、同じ質問をさせていただきたいんですけれども、麻生グループの中には医療機関もお持ちでありますし、こういった問題については大変お詳しいということでお答えをいただきたいのであります。
 どのお医者さんに伺っても、在宅というのはよりお金がかかるよということをおっしゃいますし、長寿化の中で、そして人口減少、生産年齢人口の減少の中で、それは在宅というのが理想かもしれませんよ、だけれども、よりお金が、マンパワーがかかり、お金がかからないように努力するとおっしゃいましたけれども、実際に現場で働いているお医者さんたちは、絶対にその方がお金がかかるとおっしゃるわけですよ。また、そういうふうに診療報酬も変えているわけでしょう。
 私は、そういう観点からすると、やはり財政を担われる大臣、責任を持たれる大臣として、本当にこういった在宅医療、在宅介護というものが財政的にも正しいのか、マンパワーとしても正しいのか。特に副総理でいらっしゃいますので、全体を見渡した場合、本当にこれは可能だと思われますか。

麻生国務大臣 死ぬときは病院より自宅で死にたいな、これはほとんどの方が、みんなそう思っておられると思いますよ。余り考えたこともない若い方もいらっしゃいますけれども、こっちも七十を過ぎてくれば先が短いわけですから、それはいろいろ考えるようになります。
 在宅の話が出ましたけれども、これは前原さんの指摘が正しいんですよ、現実問題として。だって物理的に考えて、医者が一人であっちこっちの地方の田舎に車で全部、救急車でも何でもいいですよ、移動する、その移動距離を計算したって、隣の病室から隣の病室に行くのとどっちが時間、距離が短いか、単純計算で出ますから。それははるかに病院の方が安いということははっきりしておる、私もそう思っております。
 したがって、それに対抗するために、今ここに大分県の人はいませんかね、ちょっとどこかのときに行かれるといいと思いますけれども、大分県の駅前に、小さなところなんですけれども、そこにずっと病院を建てて、周りは、あの辺は過疎地になるところがあるんですが、全部そういうところに、面倒を見切れません、したがって、駅前に建てるから病院に来てくれというような形で、コンパクトシティーなんという言葉が最近、どこから持ってきたんだか知りませんけれども、そういう言葉も今使われて、はやりつつあるようですけれども、いろいろな形で今、各行政体で努力をしておられるのは、私らも、あっちこっち行きますので、その現場現場でよく見せていただくので、いろいろみんな努力をしておられるんです。
 確かに、言われるように、これは金の話と本人の希望の話との間にいろいろギャップが起きるということは十分配慮した上でやらないといかぬのであって、今、社会保障が毎年一兆円伸びていきますなんというようなことはとてもじゃないけれどももつ話じゃありませんので、そういったところは、私どもとしては、ジェネリックだ何だかんだ、今いろいろやっておりますので、そういったものをもっと積極的にやっていかねばならぬ、在宅医療もその問題の一つだと考えております。

前原委員 特に社会保障が本当に大宗を占めて、今大臣がおっしゃったように毎年毎年一兆円ふえていくなんということはもう耐えられませんので、そういう意味においては、佐藤副大臣のような政務三役の方がしっかりと厚生労働省の方々と話をされながら、どうしたら、サービスが落ちなくて、しかしコストを効率化できるのかといったところをしっかりやっていただくという発想も、財務省に要は切られるという意識じゃなくて、やはり厚生労働省の社会保障あるいは労働問題に一番詳しい人たちが、どうしたらそれが効率化できるのかという観点の中でぜひ努力をしていただきたいということも申し上げて、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

(国立国会図書館ウェブサイトより)
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