○前原委員 民主党の前原でございます。
締めくくり総括質疑に当たりまして、まず金融政策について質問したいと思います。
きょうは黒田総裁にもお越しをいただいております。まず黒田総裁にお伺いをいたしますけれども、四月四日の金融政策決定会合におきまして、こういう文書が発出をされております。「上記の長期国債の買入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない。また、政府は、一月の「共同声明」において、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」としている。これらを踏まえ、いわゆる「銀行券ルール」を、「量的・質的金融緩和」の実施に際し、一時停止する。」こういうことを発表されているわけであります。
四月の十日のマスコミ各社のインタビューに総裁はお答えになられて、現在の緩和策が続くわけではない、物価目標が達成されれば出口ということになる、銀行券ルールはいずれ復活してくるとお答えになっておりますが、この銀行券ルールはいずれ復活をさせるということでいいのか、この国会の場でもお答えをいただきたいと思います。
○黒田参考人 そのとおりでございます。
○前原委員 あわせて、物価目標が達成されれば出口ということになるということですね。あと二年でうまくいけばということでありますけれども、うまくいったとしたら、もうあと二年で出口になるということであれば、今から考えておかなくてはいけません。
過去の出口戦略として考えられることを私なりに整理いたしました。一つは、金利の引き上げですね。それから二つ目は、保有国債を、今は短いものから長いものにかえていかれるということをやられているわけでありますが、それを逆のオペレーションをやっていくということ。それから三つ目は、当座預金の付利の引き上げ。これを、三つを出口の基本と考えていいのかどうなのか、総裁のお答えをいただきたいと思います。
○黒田参考人 そのとおりだと思います。
ただ、現時点では、御承知のように、消費者物価の上昇率はゼロないし若干マイナスでございますので、今、具体的に出口戦略の内容について議論するのはやや時期尚早だと思いますが、中央銀行として、そういったことも常に頭に置いていることは事実でございます。
○前原委員 確かに、これから金融緩和をやっていこうということで、二年間の工程表、目標を示された。その中において出口戦略を具体的に示すということは、相矛盾というか相殺することにもなるということで、理解をいたします。ただ、二年というのは早いですから、ここはどのようなオペレーションをしていくのかということについて、今の三点がそのとおりだとおっしゃっているのであれば、その点についてしっかりとやはり準備をしていただくということが大事なわけでありますので、要望しておきたいと思います。
さて、ここからが主に聞きたいポイントでありますけれども、この四月十日のマスコミ各社のインタビューで、総裁はこうもお答えをされているんですね。政府の財政状況をどう見ているかという問いに対して、こう答えられています。持続可能性が大いに疑われ、恐らく持続できないと思う。つまり、持続できないと思うとまで日銀総裁はおっしゃっている。それで、財政赤字の縮小が必要だと答えられているわけであります。
先般、香港で、著名な投資家、投機家というのかもしれませんが、ジョージ・ソロス氏が主宰をする経済フォーラムにおいて、イギリスの元FSA、日本でいうと金融庁の長官に当たる立場にあったロード・ターナーという人がこう言っています。日本の国家負債は通常の方法では返済されない、日本政府が税収等から借金を返済する可能性はゼロ、この負債はマネタイズドされるか、つまりは財政ファイナンスで日銀がそれを引き受けるか、リストラクチャー、これはいろいろな訳語があるのかもしれませんが、債務再編、簡単に言うと債務不履行、棒引きされるほかない。高インフレによってオフセット、つまり相殺、つまりは国民の資産というものをいわゆる高インフレによって減価させて、そして借金を薄める、こういう可能性があると言っているわけですね。
今、日本の市場に入ってきている多くのお金、半分以上のお金は外国のお金だと思います。今はとにかくもうけ時期だといって、たくさん入ってきて、それが資産価値を上げているということにもなっているわけでありますが、そういう方々が、しかし、日本の財政についてはこういう見方をしている。もうけるだけもうけて、そして、もう返せないだろうということの中で、今とにかくもうけようということでやっているわけであります。
そこで、まず総裁にお伺いをします。
きょうお配りをしている資料の一枚目(配布資料)、政府と日本銀行の共同声明というものでありますけれども、先ほど少しお話をしましたように、これは右側の三の第二パラグラフ、「また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」と書いてある。
総裁のおっしゃる赤字解消の政府の取り組みには、消費税率の着実な引き上げというのは入っているのか、また、現在の経済状況で消費税率を引き上げないという選択肢はあると思われるのか。この共同声明をまとめた一方の当事者としてお答えをいただきたいと思います。
○黒田参考人 私も、現在のままの財政状況は持続可能ではないだろう、したがって、持続可能なものにするための歳出歳入両面のさまざまな努力が必要であろうというふうに思っております。
したがいまして、この共同声明にありますように、政府は、日本銀行との連携強化に当たり、財政運営に対する信認を確保する……(前原委員「それは読まなくていいです、時間が余りないので」と呼ぶ)そういう観点から取り組みを着実に推進すると言っていますので、当然、その中には歳入歳出両面があると思いますし、なかんずく、三党合意で決められました消費税の段階的引き上げというのも入っていると思います。
ただ、中央銀行の立場で、財政政策の中身についてこうすべきだと言うのはやや行き過ぎだと思いますけれども、私としては、当然そこに入っていると思っております。
○前原委員 後段の質問に答えておられないですね。踏み込んで言うのはいかがなものかとおっしゃいながら、今の日本の財政は持続可能ではないと言うのは、踏み込んだ発言だと思いますよ。
それで、先ほど申し上げたのは、今の経済状況あるいはさまざまな施策というものが取り上げられている中で、消費税を今引き上げないという選択肢はあると思うかということを二番目に聞いているわけです。お答えください。
○黒田参考人 たしか、消費税の引き上げにつきましては、法律の附則で一定のことが定められておるというふうに伺っておりまして、経済の動向を踏まえて具体的な導入についてのゴーサインが出るということだと思いますが、何度も申し上げますが、今のままでは財政は持続可能でないだろう、それは政府も認めておられて、したがって、持続可能なものにするための取り組みを着実に推進するというふうにおっしゃっているわけでして、経済動向を踏まえてそういったことが行われるというふうに思っております。
○前原委員 直接お答えをされないので、総理もしくは財務大臣、どちらでも結構ですので、お答えをいただきたいと思います。
昨年末に景気が腰折れしそうになった、そのときに、何が問題だったかというと、アメリカの景気の減速、ヨーロッパのさまざまな財政問題、それが、金融不安、そして景気全体に対するマイナスの影響、中国の経済の調整過程というものがあった。
ただ、今は、アメリカは経済がある程度持ち直してきた、フィスカルクリフも一定の、その危機的な状況は現段階では乗り越えた、ヨーロッパも、ECBの無制限の緩和により小康状態にある、中国は思っていた以上の経済成長じゃなかったということで、ニューヨークはかなり株が下がり、きょう、円高が若干進んでいるようであります。
ただ、外的環境というのは、去年の秋口から比べるとかなりよくなっていますね。同時に、安倍政権になってから十兆円の補正予算というものを真水でやられている。そして同時に、日銀があれだけの金融緩和をやっている。こういう状況ですね。
いろいろな方々に言わせると、吹かせるだけ吹かした状況になっている。しかし、ここで上げないということは、いつ上げるんだという議論も、裏返しであるわけですね。後でお話を伺いますけれども、この財政再建というものに対するしっかりとした取り組みをやらなければ、日銀は、この間の政策決定会合で財政ファイナンスじゃないんだということをみずから強調しなきゃいけないほど国債を買うんですよ。七割買うんでしょう。新規発行の七割。財政ファイナンスと見られても仕方のないぐらい買っている日銀がもっとはっきりおっしゃったらいいと私は思うけれども、この状況において、もちろん、上げるかどうかの最終判断は十月に決めるということでありますけれども、十月までにどんな状況が起きるのかわかりませんが、現時点においては、私は、トータルで考えたら、上げないという選択肢はないと思いますが、総理、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣 既に、昨年の三党合意を経て、我々、野党ではありますが、もともと我が党の政策として、伸びていく社会保障費に対応するために消費税を上げていくということは、前回の参議院選挙でもそういうお約束をしているとおりでございます。その前、麻生総理のもとで行われた総選挙においても私どもそういう話をしておりますから、民主党の法律に対して我々は賛成をしたわけであります。ですから、基本的には、来年の四月から消費税を上げていくということには変わりはもちろんないわけであります、既に法律が通っているわけでありますから。
しかし同時に、附則十八条において、経済は生き物でありますから、大きな変化があったり、あるいはまた経済の足元の状況が非常に厳しい、つまり、消費税を上げることによって逆に景気に大きな悪影響を与えて税収が伸びていかないということであれば、それでも税率を上げるというのはまさに本末転倒でありますから、税収をふやしていくために税率を上げていくという観点から、これはもちろん、上げないということはありますが、基本的には上げていくということで、もう既に準備を我々は始めているということであります。
○前原委員 お配りをしている資料の二ページ目(配布資料)の上をごらんいただきたいと思います。これは、一八九〇年度以降の政府の債務残高、対GDP比で推移したものでありますけれども、第二次世界大戦の戦時状況よりも今ひどい状況になっているということであります。
三枚目の図表(配布資料)をごらんいただきたいと思います。左側は歳出自然体、これは社会保障の年間約一兆円ある自然増というものをそのままにして、経済成長率は一・五%という低い見積もりをしたわけです。いろいろな数字がありますけれども、平成二十四年度というところの一番下を見ていただきたいんですね。いわゆる歳出と歳入の差が四十四・二兆円あるということなんですね、二十四年度。
先ほど総理がお答えされたとおりなんです。つまり、経済が悪くなって、消費税を上げたら余計税収が減るということであればそれは見直すということ、あるいは上げないということもあるかもしれませんけれども、歳出は放漫体制のまま、経済成長は一・五%のまま五年間推移をしたとすると、二十八年度の一番下を見ていただきたいんです、四十三・九兆円になっていますね。つまりは、五%上がったという前提で、十三・五兆円の税収増があるということであったとしても、五年間で食い潰してしまうということなんですね。
なぜ食い潰すかというと、国債の元利償還が毎年毎年ふえていく、そして社会保障の自然増がどんどん毎年一兆円ふえていけば、五年間で、五%上げたものがチャラになってしまう、こういうことであります。
右は成長ケースであります。成長ケースでも、言ってみれば、四十四・二から四十・二ですから、四兆円しか残りがない、こういうことになっています。
それだけ日本は今、財政的には極めて厳しい状況にあるということで、もしこういうものを放置しておけば、みずから、財政ファイナンスではありませんよと言わなきゃいけないぐらい国債を買っている日銀も含めて、私は、大変な反動が来るということを指摘したいと思います。
そこで、では具体的に、歳出カットをどうしていくのかということであります。成長戦略も大事ですけれども、歳出カットは物すごく大事ですね。
一つ目、まず伺いたいのは、小泉政権で社会保障の毎年二千二百億円の削減、五年間で一兆五千億円というのをやりました。これによってさまざまな問題が起きたのも事実でありますけれども、先ほどの左側のシナリオは、一兆円の自然増はそのままというものなんですね。一兆円毎年削るというのは相当大変なことですけれども、ただ、社会保障が、今、一般歳出の五四%ですから、ここにメスを入れていかなければ、財政再建、歳出の見直しというのはできないわけですね。
さて、そこでお伺いをいたしますけれども、社会保障の総額抑制、見直しが財政再建の中核のテーマであるべきだと私は思いますが、総理、これはいかがですか。
総理にお答えいただきたいと思います、総括ですから。
○安倍内閣総理大臣 小泉政権のときに、今おっしゃったように、二千二百億円、五年間。しかし、実際は五年間できなかったんですけれども、なぜできなかったかといえば、この改革に踏み込んだんですが、副作用として非常にさまざまな問題が顕在化をしたということであります。
そこで、社会保障費の伸びをキャップをかけて抑制するのが果たして本当にいいのかどうかということが、ずっとその後、議論がなされたわけであります。
我々としては、まず、キャップをかけて抑制するという手段は現在のところ考えていないわけでございますが、年の半ばまでに骨太の方針を定めていくわけでございまして、その中において、この社会保障費をどう抑制していくかということについての議論がなされていく。例えば、キャップをかけても今提供しているサービスが果たして維持できるかどうかという、サービスの質ですね、サービスの質を維持しながらいかに効率化を図っていくかということが課題なんだろうと思いますが、キャップをかけることの是非も含めて議論をしていきたいと思っております。
○前原委員 私、キャップがいいとは思わないんですね。ただ、政策テーマにおいて、やはり絞り込むべき点というのがあると思うんです。
例えば、三つ質問いたします。これは総理がお答えください、そんな難しい話じゃありませんので。
七十歳から七十四歳の医療費においての窓口負担、これは本則二割ですよね。それが今一割になっている。これを本則に直すだけで約二千億円の増収が図られる。
二つ目、介護保険。これは見直しの時期がやってまいりますけれども、これについてのいわゆるサービスの範囲、それから負担、こういったものが当初予定されたものと比べて果たして妥当なのかどうなのかという議論はかなりあるわけですね。こういう範囲といわゆる負担、一割負担というものを見直すべきかどうなのかということのポイント。
三点目は、お金の観点から考えるということは私は厳に慎まなきゃいけないと思いますけれども、高齢者の方々あるいは末期の患者の方々が最終的に受けられる終末期医療の問題です。これは人間の死生観にかかわる、尊厳にかかわる問題でありますので、お金の観点から議論するということはいかがなものかと思いますけれども、ただ、不可逆的なんですね。なかなか元気にならない。本人確認をした上で、こういったいわゆる終末期医療というもののあり方を議論するということ。
この三つについての総理の御意見を聞かせていただきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 まず、七十歳から七十四歳までについて、この負担については、いわば三割、二割、一割ということを既に決めているわけであります。そこで、今回、二割にしていくことについて延期をしているわけでございますが、これは、いわば高齢者の方々も含めて、まず十分に周知を徹底していく必要があるというふうに考えたわけでございまして、この国会の場等においても相当議論が進んできたわけでございまして、基本的には、原則がそうですから、我々もその方向に向けて実施をしていきたい、このように思っております。
次に、介護保険の範囲の問題でありますが、ちょうど介護保険を実施する際、当時は社会部会長と言っておりましたが、私は、社会部会長、党の責任者でございました。ここで実施する、いわば高齢者の皆さんの年金から自動的に引き落としをするというのは初めてのことでありました。その際、果たして理解していただけるかどうかというものがあって、当時の亀井政調会長が、半年間、徴収を延期したということがありました。
あのときの、なぜ延期をしたかということについては、では、サービスの中身についてもう一回議論をしようということでありました。例えば家事介護についても、それはサービスの中に入っている、これは本当にそれでやっていけるかどうかということであります。
ちょうどことしから団塊の世代が六十五歳に入っていく。つまり、二百七十万人という非常に大きな人口の固まりがいよいよこの介護保険の対象になっていって、これでもつのかどうかということがあります。サービスとしてそれを提供しようということになれば、これは結構、当初の予測よりもみんな使うんですね。最初は、厚生省の予測ではそれほど利用しないだろうと思われていたものを、サービスとして存在すれば、せっかく保険を払っているんだから使おうということになるわけでありますので、そういう整理もしっかりと議論をしていく必要が私はあるんだろうと思います。
もう一点、ターミナルケア、終末期医療の問題でありますが、尊厳とともに死を迎えたいと多くの方々は思っておられるんだろうと思います。
そこで、尊厳死の問題については、病状によって、例えば、十六歳でそういう状況になっていてそういう判断ができるかどうかというのは別途ありますが、この終末期の医療の問題は、さまざまな観点から、いわば財政状況の必要性においてというよりも、果たして本当にどう最期を迎えるべきかという観点から議論をしていくべきではないか、このように思っております。
○前原委員 介護保険の範囲そして負担というものについては、導入したときと比べて環境が大きく変わっています。例えば、今総理がおっしゃった、団塊の世代がそれをもらう時期に差しかかってくるとか、あるいは、平均寿命が大分延びてきておりますね。そういったさまざまのことを考え、また、今までの負担とそしてサービスの兼ね合いも含めてここを見直していかないと、それこそ存続は私は不可能だというふうに思います。
終末期医療も、まさにおっしゃるとおりのところをぜひ、お金の面からだけではなくて、尊厳ある生き方、死に方という観点から、しかししっかりと議論をする中で制度化するということが大事だと思います。
最後に、一つだけ提案をさせていただきたいと思いますが、私が野田政権の末期に国家戦略担当大臣だったときに、二つのことをやりたいという思いを持って、一つは、総理に私はお電話をいたしました、日本版NSCの話、野党でも協力をするよということをおっしゃっていただきました。これはぜひやっていただきたい。我々も協力をさせていただきたいと思います。
もう一つは少子化なんです。私は、今の日本の最大の問題点、人口減少、皆さん方にお配りをしている四枚目(配布資料)のものですけれども、今の出生率を放置していたら、二〇五〇年には九千五百万人、二一〇〇年には四千四百万人、三五〇〇年には一人になるということなんですね。つまりは、少子化対策というものをしっかりやらないといけない。まさにこの少子化対策こそが私は国家戦略のかなめに来なきゃいけないと思うわけです。
そういう意味においては、少子化担当大臣こそが、森さんが悪いと言っているわけじゃないんですよ、じゃなくて、やはり副総理級の方が少子化担当大臣をやって、これは社会のあり方にかかわる問題ですので、内閣全体の問題として取り組むぐらいの姿勢が私は必要だと思いますが、この少子化対策というものを国家戦略の柱に据えられるおつもりはありませんか。
○山本委員長 もう時間ですから、短目に。
○安倍内閣総理大臣 まさに我が党のエースである森まさこさんにお願いをしているわけでございますが、この少子化、極めて重要な問題である、このように我々は考えているわけでございまして、まさに内閣を挙げてこれは取り組む問題である、そのように思います。
その上において、今、女性や若者からさまざまな意見を聞くという会議も持っておりますし、そうしたものも我々は吸収しながら、話を伺いながら、これをやればきくというものはなかなかないんですが、さまざまな政策を総動員しながらこの少子化の傾向を変えていきたい、このように考えております。
○前原委員 終わります。
(国立国会図書館ウェブサイトより)