○前原委員 おはようございます。民主党の前原です。
まず、金融政策について質問させていただきたいと思います。
まず、私のスタンスを少しお話ししたいと思います。
野田政権の最後でありましたけれども、約三カ月間、経済財政担当大臣をさせていただきました。毎回、日銀の政策決定会合に出席をし、強力な金融緩和を求めてまいりました。白川さんの五年間の中で唯一、二カ月連続の金融緩和というものが行われましたし、また、政府と日銀の間で初めて共同文書の取りまとめを行わせていただきました。
そういう意味で、強力な金融緩和を行う、そしてデフレの脱却、結果としての円高是正、そして輸出の回復というものの中で日本の経済をよくしていくという方向性については、安倍総理が今行われている政策と私は一致をしていると思っておりますけれども、ただ、先ほどからお話がございますように、二年間で二%ということについて、これを絶対的なものとするんだ、今もそういう議論になっておりますけれども、これについては危うさを感じているということを申し上げた上で、まず一つ目の資料(配布資料)をごらんいただきたいと思います。
三枚目の資料でございます、皆さん方のお手元にお配りをしているのは。これは、前回安倍総理と議論させていただいたときに使った資料でありますし、黒田総裁と財務金融委員会で議論したときにも使わせていただいたものであります。
上がマネタリーベース、日本とアメリカとヨーロッパで申し上げると、対GDP比でかなり金融緩和を行っているということ、それから、下の図をごらんいただきますと、ベースマネー、つまりは中央銀行である日銀が供給をしてきたお金というのはかなり大きなものがあるけれども、金融緩和をしてきたけれども、CPI、消費者物価指数というものは変わっていないということの中で、お二人に私が質問させていただいたのは、つまりは、今までも金融緩和をしてきたけれどもなかなか物価の上昇には至っていないということの中で、どういうメカニズムで二年間で二%上げるのかというお話を伺いました。
もう繰り返し伺うことはいたしません。お二人とも同じ答えでありました。期待に働きかけるということが基本であったかと思います。
この議論をしても神学論争になってしまう面もありますので、違う観点から少しお話をさせていただきたいと思います。
先ほど、山本幸三委員の質問の中でもありましたけれども、二年で二%を実現したときの失業率はどれぐらいになるのか。先ほど、いろいろな前提条件を田村大臣はおっしゃっておりましたけれども、大体二・五%という数字をおっしゃったと思います。失業率、過去の状況ですね、二・五%という数字をおっしゃったと思います。
それでは、違う形で質問いたします。実質GDP成長率、これは平均でどのぐらいパーセンテージがあれば、この二年間で二%が実現できるのか。そして、その場合の二年後の失業率は一体幾らになると予想されるのか。政府と日銀にお伺いをしたいと思います。
○山本委員長 ちょっと済みません、お待ちください。(前原委員「ちょっととめていただけますか、時間、時計をとめてください」と呼ぶ)
○山本委員長 答弁まで速記をとめてください。
〔速記中止〕
○山本委員長 速記を起こしてください。
甘利大臣。
○山本委員長 済みません、試算については、まだ出しておりません。それは、いろいろな要素が入ってくるからということであります。
○前原委員 日銀もお願いします。
○黒田参考人 御指摘のように、物価上昇率とマクロ的な需給ギャップの間には、やや長い目で見ますと、正の相関関係があるということは言われているわけでございます。ただ、二〇〇〇年代に入りますと、需給ギャップに対する物価の感応度がやや低下しているような傾向がございます。
こうした傾きが緩やかなフィリップス・カーブに基づきますと、二%の消費者物価の上昇率を実現するためには、需給ギャップを相応のプラスとする、つまり、〇・五%前後と言われる潜在成長率を上回る高い成長、実質成長率を実現する必要があるというふうに言われるわけでございます。その際には、当然ですけれども、労働需給の引き締まりを反映して、失業率も相応に下がっていくというふうに考えられます。
ただ、これも委員御承知のとおり、物価上昇率は、需給ギャップのほかに企業や家計の予想物価上昇率にも影響を受けますので、仮に、企業や家計の先行き、経済が持続的に回復していく、改善していくという見通しが醸成されて予想物価上昇率が上がりますと、物価安定の目標達成に必要とされる需給ギャップのプラス幅というのはやや縮小するということになると思います。
いずれにせよ、実体経済がバランスよく改善していく中で物価上昇率が二%に高まっていくという状況を実現するためには、通常の金利引き下げを通じた需給ギャップの改善だけでなくて、予想物価上昇率への働きかけという期待を通じた金融緩和のメカニズムというものもしっかり起動させる必要があるというふうに思っております。
そのためには、やはり強いコミットメントと市場とのコミュニケーション、さらには、それを裏打ちする適切な量的、質的な大胆な金融緩和というのが必要だと思っております。
○前原委員 黒田総裁、時間を浪費するような答弁はやめていただけますか。
私が聞いているのは、二年で二%の物価上昇を実現するために実質GDP成長率はどれぐらい毎年必要なのかということと、二年後には失業率が幾らになったかということを申し上げているんですよ。それについて答えがあるのかないのか、そういうことを端的にお答えください。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、長期的に二%の物価上昇率を実現するために必要な実質成長率というのは、一定の計算はできますけれども、それは何度も申し上げますが、期待物価上昇率その他の要因と組み合わさりますので、今の時点で、二%の物価上昇を実現するために何%の実質成長率というふうに特定することはできないと思います。
○前原委員 これは、甘利大臣、そして黒田総裁がお答えされたように、いろいろな変数はあります。いろいろな変数がありますので、当然ながら、ある数値を置かなくてはいけないということであります。そうしないと予想が立ちませんから。
しかし、いろいろな前提の中で期待に働きかけるということで、そして二年に二%だということを繰り返し言われても、その道行きというものは具体的じゃないんですよ、今までの総理のお答えも、黒田総裁のお答えも。
したがって、総理、私は甘利大臣の立場でありましたので、総理が二年で二%の物価上昇というものを、これは民間のシンクタンクでやっているんですよ、日本経済研究センターというところによりますと、二年で二%を実現しようと思ったら、四%の成長が必要なんですよ。毎年四%の成長が必要だということです。いろいろな数字を置いていると思います。実質です。
したがって、そういう意味において、いろいろな数値をもちろん仮定で置いていただいて、どういう形で、例えば失業率も、先ほど田村大臣が、過去二%の物価上昇のときに二・五%の失業率だったとおっしゃいました。仮に、条件が違ったとしても、それがなる場合においてはどれぐらいの雇用がふえなきゃいけないかというと、今、失業率四・三%ですから、二百七十七万人が完全失業者ですよ。ということは、単純に計算しますと、二年間で約百六十一万人が雇用されなきゃいけないんですよ。つまりは、そういう具体的な数字の中で、しっかりと失業率が下がり、そして実質のGDP成長率というものが確保され、そして二年で二%というものが本当に達成できるのかどうなのか。
二%の、後でまた別の質問をいたしますけれども、例えばコストプッシュインフレなんかもあるわけですよ。したがって、円の相場がどのぐらいかということにもこれはまたかかわってくる問題もありますし、そういう数値を置いていただいて幾つかの試算をしていただけませんか。そうしないと、期待に働きかけると言われるだけでは、二年で二%の物価上昇をやるという気合いだけの話にしか聞こえないんですよ。いかがですか、総理。
○安倍内閣総理大臣 先ほど山本幸三委員が図を使って御説明したように、物価上昇率というのは、貨幣供給の増加率と貨幣流通速度の上昇率から実質経済成長率を引いたもので決まってくるわけでございまして、その中において、やはりそういう意味において貨幣供給の増加率というのが極めて大きいということを、先ほど、私と山本幸三議員の間での議論においてそういうお話をさせていただいたわけでございます。
だからこそ、しっかりと日本銀行がそういう意味において政策手段をとって、そして、基本的に大体二年間ぐらいにおいてしっかりとした緩和措置をとっていくことで、それを目標に達成をしていくという約束をしている、強いコミットを示しているわけでありまして、この強いコミットこそ、まずは最初にいわば為替に、そして株式市場にその働きかけは影響として出てくるわけでありまして、現に今、出てきているわけですよね。なぜ出てきているかといえば、つまり、強いコミットと市場とのコミュニケーションがうまくいっているということなんだろう、このように思います。
その中において、株価が上昇していくことにおいて、資産効果も出てくるわけでありますし、行き過ぎた為替が是正されていくことにおいて、輸出産業は競争力を回復していくわけでございますし、国内において、いわば輸入物と対応する産業にとっても、農業もそうなんですが、競争力が出てくるわけでございまして、そしてそれは最終的には雇用にも影響していくでしょうし、もちろんその前提として、企業の収益率が改善をしていく中において、雇用にも、さらには賃金にも、そしてそれは消費にも戻ってくる。
こういういい循環に早く入れていくということにおいて、一番最初のもととなる、的確に強いコミットメントを示し、正しい市場とのコミュニケーションによってまずは変化を起こしていく中において、いわばインフレ期待が確実に上がっていくことによって、最終的にはそれが現実に二%という結果となっていくんだろう、こう期待をしているところであります。
○前原委員 多くの金融関係者の方々あるいは専門家の方々とお話をしておりましても、今の方向性について、先ほど私も申し上げたとおり、金融緩和をして、そして行き過ぎた円高が是正をされ、株価が上がっているということについては、皆さん評価されていますよ、それについては。ただ、本当に二年で二%ができるのかということについては、極めて懐疑的な意見が私の耳には多い。そして、さっきの山本先生がおっしゃったような、それを無理にやることによって、後でお話ししますけれども、さまざまなひずみ、問題点が出てくるんじゃないかという懸念も多いわけですね。
その中で、私は本当に、今総理がおっしゃったような、いいメカニズムの中で日本の経済がよくなるということであれば、モデルを示して、こういうような社会像になりますよ、二%、二年間、成長率はどのぐらい、そして為替水準、まあ、為替水準は言えないかもしれないけれども、そういうことを、民間のシンクタンクではそういう計算ができているわけですから、ぜひこれは、委員長、お願いをいたしますけれども、我々もその前提というものを提案いたしますので、政府にも、そういった二年で二%の物価上昇がちゃんとできるんだということの試算、これを出していただくようにお願いを申し上げたいと思います。
○山本委員長 後刻、理事会で検討いたします。
○前原委員 先般のこの予算委員会で麻生財務大臣にはお聞きいたしましたが、黒田総裁に同じ質問をさせていただきたいと思います。
これだけ莫大な財政赤字を抱えているのに、なぜ国債の金利がこんなに低いのかということであります。なぜ低いと思われますか。理由を幾つか、幾つでも結構です、挙げてください。
○黒田参考人 幾つか、原因というか理由として考えられるものを挙げさせていただきますと、一つは、まだ物価が下落している状況があるということもあると思いますし、また、よく言われますけれども、日本の国債は大半が、九割以上が居住者によって保有されているということもよく言われるわけでございます。さらに言いますと、やはり政府が一定の財政再建に向けて努力をするというコミットをしておられるということも影響していると思います。その他にもいろいろな要素があろうと思います。
○前原委員 私なりにその理由を申し上げますと、まず、日本の中に約一千五百兆と言われる個人の金融資産というのがある。それから、経常収支の黒字が続いている。つまりは、日本にお金が入るような状況というのが今まで続いてきた。それから、今総裁がおっしゃったように、国債の国内消化率は去年の末時点で九一・三%ということで、国内で消化をされているということであります。
ただ、それ以上に、私は、やはり公的セクターで日本の国債をかなり引き受けているということに、この金利の低さというものが大きな要因を示しているのではないかと思います。ゆうちょ、どれぐらいの国債を引き受けているか、百三十五・七兆円。かんぽ、五十六・九兆円。年金、六十七・九兆円。今、日銀がどれぐらいの国債を買っているかということにいたしますと、百二十二兆円であります。
つまりは、普通国債、今、発行残高が七百八兆円でありますけれども、三百八十兆円余りが公的セクターで買われているということ。逆に言うと、お金が本当に生き金のところに回っていないわけですね。国債の引き受けというものに公的セクターのお金がこれだけ使われているということが、いわゆる金利が低い大きな原因だと私は思っております。
これについて、日銀総裁、同意されますか。
○黒田参考人 今御指摘のありましたさまざまな公的機関の国債保有につきましては、それぞれ、資金運用であるとか年金資金の運用であるとかいろいろなことがあると思いますが、日本銀行の国債保有につきましては、これまでとられてきました金融緩和政策という中で、短期の国債あるいは長期の国債というものを保有してきたわけでございまして、これはあくまでも金融政策の一環として、日本銀行が自主的に金融緩和を進めるために購入してきたものであるというふうに理解しております。
○前原委員 これから異次元の金融緩和をする、そして量と質の拡大をしていくということをおっしゃっている。その中心は、恐らく、残存期間の長い国債をこれから買われるということになるでしょう。そうすると、結果として財政ファイナンスと見られるのではないか、見られた時点で、日本の国債の信認が下がり、長期金利が上がり、国債が下落をするということになりはしないかということを私は指摘してまいりました。
そこの大きなポイントとして、先般も財務金融委員会で質疑をいたしましたけれども、それをやらないというコミットメント、意思表示をする何らかの歯どめが必要じゃないかということで、今まで、日銀券ルールというのがあったわけですね。この日銀券ルールというものについては、この間、黒田総裁がこう答えられているんですね。輪番オペの部分と資産買い入れ基金で買っている国債を足しますと、日銀券発行残高は多分超えているんですね、こうおっしゃいました。
私、調べました。確かにもう超えています。今は、日本銀行券が八十三兆円に対して、基金保有分を含めると長期国債保有額は九十三兆円になっているんですね。だから、日銀券ルールはもう超えている、こういうことであります。
ただ、この間の質疑の中で、財政ファイナンスと結果として見られないために、今、黒田総裁は、これは金融緩和の手段として日本銀行の独自の判断でやっているんだということをおっしゃいました。これは大事です。財政法第五条の観点からしても、財政ファイナンスはしないということは極めて大事でありますけれども、先ほど申し上げたように、公的部分でいうと、かなり国債を買っている、そしてこれからも無制限の金融緩和を、長い国債を買っていくということになれば、結果としてそう見られないかという懸念は当然あるわけですよね、総裁。
具体的な日銀券ルールにかわる、そのいわゆる歯どめと見られる、ちゃんとマーケットがそういうものとして信認をされるということについて、具体的なやはり議論をしてもらいたいと思いますし、どういったものが考えられるのか、具体的にお答えください。(発言する者あり)
○黒田参考人 まさに、委員御指摘の点は重要な点だと……(前原委員「何と言いました、今。君たちが何。君たちが何ですか」と呼ぶ)
○山本委員長 どうぞ答弁を続けてください。(前原委員「総理、不規則発言をしたら、とめますよ、委員会。ちょっとおごりが過ぎるんじゃない」と呼ぶ)
どうぞ、日銀総裁、答弁してください。
○黒田参考人 委員御指摘のとおり、この点は極めて重要なポイントであると思っております。
世界の中央銀行を見ましても、国債の引き受けは原則として禁止するというのが通例でございまして、我が国におきましてもそういう形になっております。一方で、各国の中央銀行は、長期国債も含めて、さまざまな資産の買い入れを通じて金融の緩和をしているということでございます。
委員の意見はよくわかるわけでございますが、他方で、日銀券ルールはもはや超えた形になっておりますので、どういった形の歯どめが適切なのか、やはり政策委員会で十分議論してまいりたいというふうに思っております。
○前原委員 総理、先ほど、私の質問に対して、そんなことを言っているからだめなんだよ、君たちとおっしゃいましたね。日銀券ルールみたいなものは要らないということですか、そういうことは。お答えください。
○安倍内閣総理大臣 基本的には、物価目標を定めていく、つまり、この物価目標に向かって大胆な金融緩和をしっかりとやっていくということが大切なことであって、しかし、それは物価目標ですから、この物価目標は、先ほど山本委員が説明したように、この上下でトレランスとして一%の範囲におさまるように管理をしていくことこそが、これは中央銀行の腕の見せどころなわけですね。だからこそ、中央銀行がしっかりとした能力を持ってこれに対応していく、それこそが、まさに、ある意味においては歯どめになっていくんだろう、このように思います。
○前原委員 財政ファイナンスと見られないことは、極めて私は重要だと思います。一千兆円の長期債務が国、地方で合わせてある、これがほかの国との大きな違いですから。その中にあって、白川前総裁に対するいろいろな批判はありましたけれども、我々が対話している中で、やはり非常に心配をされていたポイントは長期金利でありました。長期金利の動向で、この一千兆円の借金、後でちょっと財政の話をいたしますけれども、これがどう動いていくかということについての大変懸念を持っておられたということ。
その中で、バランスを持って、だから、我々はこれだけは申しておきます。二年で二%の物価目標にコミットメントをされるということは、もうそれはしっかりとエッジを立てられたわけですから、しかし、これも、私は、一%から三%ぐらいの幅の中でフレキシブルなものにしないと、二%、二年間、絶対なんだというときに、それを無制限に金融緩和をやっていった場合に、金利の上昇とかあるいはさまざまな問題点が起きてくるという懸念をしているということを改めて申し上げておきたいというふうに思います。
さて、黒田総裁、就任会見でこうおっしゃっていますよね、金融政策が為替に影響するのは事実だと。その考え方にお変わりありませんか。
○黒田参考人 変わりございません。
○前原委員 ということは、二%の物価上昇を二年で達成するために質、量とも次元の違う金融緩和を行っていけば、さらに円安が進むという理解でよろしいですか。
○黒田参考人 一般論として、他の状況にして等しければ、通常、金融緩和を行った場合にその国の為替レートが下落する傾向があるということは、一般的に知られていることでございます。
ただ、先ほど申し上げたように、他の事情にして一定であればということが、実際は一定でなくて、いろいろな状況があると思いますけれども、大胆な、あるいは大幅な金融緩和をした場合に円安になる傾向があるということはそのとおりだと思います。
○前原委員 内閣官房参与の浜田教授が、エール大学の教授が、一ドル百円なら大丈夫だけれども百十円なら問題だといった趣旨の話をされております。
内閣官房参与のお立場の方がこういう発言をされているわけですが、そういう相場観というものは共有されますか。
○黒田参考人 私は、為替レートの相場について申し上げることは適切でないと思いますので、先ほど申し上げた一般論としての傾向ということを申し上げたわけでございます。
○前原委員 私が聞きたいのは相場観ではないんですよ。何を聞きたいかというと、総裁御自身が就任の記者会見で、金融政策が為替に影響するのは事実だということをおっしゃって、今でも、それについてはそのとおりだとおっしゃった。そして、一般論としても、金融緩和を進めていけば為替に影響があるということをまたおっしゃったわけです。
今、二年で二%というその物価安定目標を実施するために、次元の違う、総理から言わせると、そんなことを言っているから、君たち、だめなんだよというような、我々は慎重だったのかもしれないけれども、次元の違うことをやっていくわけでしょう。そうなると、さらなる円安が進む可能性がありますよね。
今の日本の状況はどうか。もちろん、Jカーブがきいてきて、そして輸出が回復するということになるかもしれない。しかし、他方で、三月十一日の、二年前の東日本大震災、原発の事故によりまして、原発が今ほとんどとまっている状況ですね。エネルギーの輸入価格というのは極めて大きな状況になってきている。ちょっと二枚目の、貿易収支は赤字、経常収支も三カ月続けて赤字、こういう状況になってきているわけですね。
先ほど、二年で二%の物価上昇をやるといった場合、円安傾向に振れるということについては認められた。それで、これから次元の違うことをやっていくと言われた場合に、相場観は言えないにしても、浜田教授は、百円ならいいけれども百十円なら問題だということをおっしゃっているわけです。
行き過ぎた円安になった場合でも、それでも、いろいろな問題が起きた場合でも、二年で二%というコミットメントはされ続けるわけですか。そういう判断をしてもされ続けるわけですか。
○黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、金融政策が為替レートに影響するということはそのとおりでございます。特に、他の事情にして一定であれば、金融緩和をすれば円安になる傾向があるということはそのとおりでございますが、どの程度の円安になるかとか、それがどのような具体的な問題を引き起こすかということは、さまざまな経済状況によりますし、それから、為替の安定、為替介入等は基本的に政府の責任においてやっておられるわけでして、日本銀行は、あくまでも物価安定目標の達成のために全力を尽くすということに尽きると思います。
○前原委員 今、おもしろい答弁をされました。
我々は、二年で二%、こだわりますけれども、これをしゃにむにやってきた場合の長期金利の問題、そして為替の問題、これがさまざまな形になってきた場合に、それがマイナスの要因になっても本当にしゃにむに進むのかということをやってきたわけですね。
その場合、先ほど黒田総裁から、いわゆる為替介入の話がありました。でも、二年で二%は自分たちの責任でやるということ、だから、責任問題も副総裁はおっしゃっているし、先ほど山本委員の質問に答えて黒田総裁も、二年で二%をやりますとおっしゃった。
麻生財務大臣、こういう行き過ぎた円安が生じてきた場合、先ほど日銀は為替介入権はないということをおっしゃいました。政府の協力の中で二年で二%をやるために為替介入もあり得る、それを期待した発言だと私は思いましたけれども、どうですか。
○麻生国務大臣 財務大臣も日銀と同じで、為替に関する発言は一切ありませんので、それを御存じの上で聞いておられるということなんでしょうか。それ以上、ちょっと答えようがないんですけれども。
○前原委員 繰り返し申し上げますよ、私の立場を。
デフレ脱却は必要なんですよ。だから、金融緩和をやり、結果的に為替が、円が安くなり、円高が是正されて、そして株価が上がる、輸出が回復する、いいことですよ。だけれども、懸念は、二年で二%というものを必ずやるということを言った場合、さまざまなひずみが生ずるのではないか。長期金利であり為替であり、そういうものにマイナスの影響が出てきても本当にやりますか。日銀の責任でやらせますというのが安倍総理の趣旨でしょう。だから、そういう意味で……(安倍内閣総理大臣「違います」と呼ぶ)違いますか。どうぞお答えください。
○安倍内閣総理大臣 つまり、二%の物価目標を立てて、そしてそれに向かって日本銀行が、手段をしっかりと独立性を持って行っていくということであります。その中においては、今までとは次元の違う大胆な金融緩和をやっていただきたいという期待はしていますよ。その中で適切に判断して二%に向かっていく。そして、期限についても、おおむね二年というお話をされているわけであります。
ただ、私たちが求めているのは、しゃにむにやれということではないんです。まずデフレから脱却して、二%という緩やかなインフレ目標をちゃんと持って、それに到達してくださいよということであって、しかし、経済は生き物ですから、世界で何があるかわからないし、それにおいてさまざまな作用が出てくるのは、これは前原委員の御指摘のとおりだろうと思います。
大切なことは、しっかりと目標に向かってちゃんとやっていくということであって、その中において、できない場合だって、それはもちろんあります。そのときには、こういう理由で、これ以上のことをやればこうなりましたという説明責任が生じるんです。その説明責任において、我々政府に対して、そして国会に対して、彼らがその説明責任を果たせば、それはそのとおりですねということになるんですよ。
ですから、何が何でもという意味ではなくて、しかし同時に、これは、市場に対して彼らがコミットして、決意と責任感を持ってそれを示していかなければ市場は反応しないというのも事実でありますから、そこはなかなか難しいところであって、どちらを強調するかというのは、まあ、バランスの問題なんだろう、このように思います。
○前原委員 答弁が変わりましたよ。今までおっしゃっていたことと変わった。(発言する者あり)いや、デフレは貨幣現象であるということをおっしゃり、そして二年で二%というのは日銀にやらせますということをおっしゃっていましたよ。それをやらせますということをおっしゃっていた。日本の全体にとっては、今の答弁というのは、ほっとされる方はたくさんおられたと思いますよ。だけれども、私は、変わられたということはしっかりと認識をしていただきたいということを思います。(安倍内閣総理大臣「変わっていない、変わっていない。最初から言っている」と呼ぶ)いや、それは今までの答弁を比較したらわかりますよ、そんなのは。
さて、三本の矢という話がありました。これから我々は政治で何をやっていかなくてはいけないのか。もちろん、三本目の矢の成長戦略も大事でありますけれども、同時に大事なのは、歳出の見直し、これを徹底的にやっていかなくてはいけない、私はそう思っています。
このグラフ(配布資料)をごらんいただきたいと思います。総理にお配りをしている二枚目のグラフでありますけれども、これは、上のグラフを見ると、本当に背筋がぞっとするんですよね。
上のグラフというのは、明治二十三年以降の政府の債務残高の名目GDPに対する比率の推移ということで、一九四五年度の第二次世界大戦終戦のときに極めて大きな赤字を持っているわけでありますが、今、それをはるかに超えるものになってきているということであります。
これだけの大きな赤字を抱えるようになってきているということであります。したがって、財政再建というものは極めて大事、そして歳出の見直しというのは極めて大事だということであります。
総理に伺います。
公明党さんの意向に沿って、こういう答弁をされていますよね。消費税については、軽減税率の導入について前向きな答弁をされています。
どういう規模になるかわかりません、軽減税率。そして品目がどういうものに拡大されるかわかりませんけれども、軽減税率を導入すると、いわゆるプライマリーバランスの議論、二〇一五年度、二〇一〇年度の半減、そして二〇二〇年度の達成というものは変わってきますよね。これは、軽減税率を入れた場合に、何らか新たなことを導入するんですか。
○安倍内閣総理大臣 消費税を八%、一〇%に上げていく際に低所得者に対してどういう対応をしていくかということは、これは我が党だけではなくて公明党、そして民主党も入れた社会保障と税の一体改革において議論をしていることであって、一定の対応をしていこうということは、我が党、公明党だけではなくて民主党の中からも出ている意見でございますので、その点を踏まえて議論を進めていかなければならない問題だろう、このように考えております。
○前原委員 軽減税率を導入したら、その規模によりますけれども、いわゆるプライマリーバランス、国際公約というものの前提が変わるということも踏まえた上で議論をしていかなくてはいけないということは申し上げておきたいと思います。
それと同時に、総理もおわかりになっていると思いますが、下のグラフです。
これは、二〇二〇年度のPB、プライマリーバランスの黒字化、基礎的財政収支の黒字化というものについては、今のままでいっても達成できないんですね。つまりは、成長率を上げるか、歳出をカットさせるか、あるいは増税をするか、それのミックスもあるわけでありますけれども、いろいろやっていかなくてはいけないわけであります。
次のグラフ(配布資料)を見ていただきたいと思います。
これは一枚目のグラフでありますけれども、左側が歳出自然体。これは、社会保障の自然増、年間一兆円というものについて、それを、言ってみれば削らないということで、一・五%という低目の成長にした場合に、今後、国債費の償還とか税収とかはどう移行していくのか。これは、八%、一〇%と上げたという前提でごらんをいただきたいわけであります。
皆さん方に、総理にも見ていただきたいのは、二十四年度の一番下の差額、それから二十八年度の差額なんですよ。五%上げて十二・五兆円と言われていますよね。十二・五兆円と言われていますけれども、歳出自然体、経済成長一・五%だったら五年でもとに戻っちゃうんですよ。一・五%、歳出自然体であればもとに戻っちゃう。
右側の歳出据え置き型。これは、一兆円の社会保障の自然増というものは何らかの形でカットしていく、のみ込んでいく、そして成長率も三%として高くするということで考えたとしても、一番下を見ていただくと、四十四・二から四十・二ということで、若干は、十二・五兆円というものについて、このふえた分について、五年では低くなっているわけでありますけれども、右左両方見ていただいておわかりのように、消費税を上げても、時間を稼げるのは、やはり相当歳出面のカットをしなければ五%もすぐに食い潰してしまう、こういうことなんですね。
時間が来ましたのでこれで終わりにしたいと思いますけれども、総論として、また予算委員会で引き続きやらせていただきたいと思いますけれども、この歳出のカットというものについて、経済財政諮問会議において成長戦略もやられるとおっしゃっていますね。小泉さんのときの骨太の方針も含めて、この歳出の見直しということは徹底的にやられたと思うんです。それは私は一定の評価というものはあると思います。
これについてしっかりと、これを四本目の矢というのか何というのかわかりませんが、少なくともこれをやらなければ財政というのは持続可能ではない、幾ら日銀に吹かせてもだめなんだという認識の中で、これについてしっかり取り組まれるおつもりはありますか。
○安倍内閣総理大臣 民主党政権の中において随分それは御努力されていた、私たちもそれは思っております。当然、我々も、これからしっかりと無駄をなくしていく、そして、歳出をできる限り抑制していくということにおいて、行政の改革、不断の改革を行っていきたい、このように考えております。
○前原委員 次回は具体的な歳出の見直しの点を議論させていただきたいと思います。
終わります。
(国立国会図書館ウェブサイトより)